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993:6thナイトメア・タル・エウルト-8

『すぅ……謹聴! 第三形態についての重要情報を言うぞ!! 恐らくだが、タル・エウルト第三形態は第一形態、第二形態の間も含めて、この戦闘中に一度でも見せた攻撃は通用しない! よって、火力役の一部はあの場面まで切り札を温存しておく必要がある! 以上!!』

『『『!?』』』

 さてインターバル中には情報のやり取りが行われる。

 普段なら身近な者同士であれこれ細かくやり取りをし、全体の方針は掲示板を利用しているのだが、今回はブラクロがまずバカでかい声で以って、全員に情報を伝えたようだ。

 そして、その情報を得た上で、どうするかをそれぞれに考えていく。


『一度見せた攻撃はアウトってマジかよ……』

『正に未知狂い……』

『うんまあ、そもそも単純に第三形態がヤバくて、そこまで生き残れないんすけどね』

『言われてみればそうか。じゃあ、俺は変わらず第二形態ぶっぱでいいか』

 一部のプレイヤーは先程と同じで第二形態で最大火力を叩き込もうと考える。

 第三形態で生き残れない、第二形態が超えられなければ意味がない、第二形態の戦いを短くしたい、禁忌の性質上第二形態の方が向いている、それぞれ理由はあるだろうが、どれも正しい判断と言えるだろう。


『第三形態の連打はマップ全域攻撃、あんなものどうすればいいんだろうな?』

『いっそ、ラストの攻撃までデスってて、直前にリスポするか?』

『あ、それなんですけど、魅了が飛んできた時点で5分過ぎていてもリスポ出来なくなるみたいでしたよ』

『対策済みだったかぁ……』

『いや待て、魅了、石化、重量増大? だったか。この三つだけ凌げって言うなら、十分可能じゃないか?』

 一部のプレイヤーは今回のイベントの特性……力尽きたプレイヤーは5分後に復活する事が出来るようになると言う性質を利用するつもりのようだ。

 タル・エウルト第三形態の攻撃は一度しか見えていないが、その一度でも規則性の存在がはっきりと分かるようなものだったので、死んでいる状態で危険な攻撃をやり過ごすと言うのは、これもまた正しい判断と言えるだろう。


『順番を決めましょうか』

『そうですね。見てからが間に合わない以上、初見での対応は難しいですが、二度目以降ならどうとでもなります』

『大縄跳びにしても、かなりシンプルな部類。ま、行けるか行けないかで言えば行けるだろうさ』

『……。任せた』

『……。任された』

 そして所謂最前線組は正面突破を狙うつもりのようだ。

 うん、実際何が来るか分かっているならば、彼らなら防ぐのは難しくないだろう。

 と言うより、彼らすら防げなかったら、ゲームとして成立しないと思う。


「ところでアンノウン」

「何かしら?」

「仮にアンノウンがあの場に居たなら、どうやって攻略するのかしら?」

「んー、真っすぐ行ってぶっ飛ばすわね。第一形態は無視。『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』と『虹霓鏡宮の未知理(アンノウンロウ)』をフル活用すれば、足場外に広がる即死エリアはどうにかなる。既知バリアについてもルナアポで無理矢理ぶっ飛ばせば行けるはず。うん、やっぱり真っすぐ行ってぶっ飛ばすわね」

「いっそ清々しいほどに力技ね……後、協力する気はないの?」

「え? 私モチーフとか言う既知しかない相手にこれ以上の時間なんてかけたくないわ」

「実に楼主様ですネ……」

「まったくね……」

 初心者組、中級者組、生産組もそれぞれに自分が出来る事を考え、動いているようだ。

 うーん、この分だと次の戦闘でタル・エウルトとの戦闘は終わりそうだ。

 なお、ブラクロがうっかりをしないと言う但し書きは付けさせてもらう。

 『禁忌・陽呑(ヒノミ)』が連射可能な禁忌であることには驚かされたが、ノリで偽トテロリに使ってしまうような男なので、どうしても信用しきれないのだ。

 いやでも、あそこで使ったからこそ、既知バリアの存在が露見した?

 うーん、悩ましい……。


≪『虹霓境窮の偽天呪』タル・エウルトとの戦闘を開始します≫

 それでは六戦目開始。

 第一段階については問題なし。

 ただ、一部プレイヤーが既知バリア対策なのか、動きを少し変えたくらいか。


 第二段階についてもそこまで大きく流れは変わらない。

 だが、当然ながら五戦目の禁忌連打よりも攻撃の威力は下がっているため、その分だけ生産職の作り出した固定ダメージアイテムを初心者たちが必死に投げつけると言う動きが多くなっている。

 後は……倒した偽ザリチュや偽ドロシヒが、時間経過で復活した光景に、プレイヤーたちが一瞬唖然としていたのが見どころだっただろうか?

 うん、私の装備品にはそう言う能力も付いているのである。

 あまりお披露目した事は無いが。

 それでも唖然としていたのは一瞬で、直ぐに立て直しは終わり、第三形態に突入した。


 で、第三段階だが……。


『『『タアアアアァァァァァル!!』』』

『お前、最後のチャージまでダメージは食らわないってふざけんなアアアァァァ!!』

『性格悪いぞ運営!!』

『普通に耐性抜かれたんですがアアアァァァ!?』

『ペッ』

『知っていてもツライって、それ一番言われてるからー!』

 うんまあ、酷い事になっている。

 対策が上手くハマったプレイヤーは良いのだが、ハマらなかったプレイヤーは綺麗に吹き飛ばされていく。

 でもまあ、やはり今回で終わりそうだ。

 主要メンバーはきっちり生き残って、邪眼にも物理攻撃にも対処できている。


『ぃちms! ぃちms! ぞよmsfpぃちms!!』

『さあ、クライマックスだ!』

『言われなくても!』

『全力で叩き込む!』

『いっくよー!』

 そうして十分な数のプレイヤーが残ったままにタル・エウルトは全身の目を虹色に輝かせ始め……。


『ぞよhs、sじtryr……』

 直後に殺到した攻撃によって、呆気なく崩れ落ちた。


『で、まさかとは思うけど、この後に第四段階とかないよな?』

『『『止めろブラクロ。縁起でもない』』』

『念のためにバフ解除撃っておいたから安心せーやー』

 なお、第四形態は存在していないが、自動復活アイテムモチーフの食いしばりはあったらしい。

 魂がゼンゼっぽいプレイヤーがこっそり解除していたので、効果は発揮されなかったが。


≪『虹霓境窮の偽天呪』タル・エウルトに勝利しました≫

 そうして勝利アナウンスが無事に流れて、戦闘は終了となった。

倒し方が分かれば、対処は出来るのですよ。

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