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983:6thナイトメアバトル-7

≪お手元の戦闘開始ボタンをこの場に居る全員が押すか、60秒経過する事で8戦目『要塞の蟹呪』セイメサイド・カトウシムとの戦闘を開始します≫

『で、実際どうやって逃がさないようにするでチュか?』

「『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』」

 周囲の風景が海に囲まれた島々というものに変わっていく。

 と言う訳で、私は早速『竜活の呪い』を発動。

 私が何をするのか察したのか、ザリチュは帽子の先をゆっくりと揺らす。


「まあ、アレよね。流石に海底まで追いかけるのは無理。と言う訳で『熱波の呪い(ドロクセルブ)』」

『ま、そうでチュよねぇ。この辺りの海は相当深いと聞いているでチュし、海の中なんてもはや湿度どうこうではないでチュよ』

 さて、セイメサイドは聞くところによれば、自分が不利になれば直ぐに逃げだすカースであると聞いている。

 であるならば、ソロで挑む私が勝利するためには、如何にしてセイメサイドの逃亡を防ぐか、あるいは逃亡と言う行為そのものを無意味にするかがカギになるだろう。

 では、戦闘を開始しよう。


≪『要塞の蟹呪』セイメサイド・カトウシムとの戦闘を開始します≫

「ーーー……」

 セイメサイドが近くの砂浜から姿を現す。

 私を見る。

 数秒停止。


「ーーーーー!」

『逃げたでチュ! 賢いでチュよ!』

「うん、そんな気はしていたわ」

 そしてすぐさま私から遠ざかるように、海へ向かって全力疾走を開始した。

 勿論ただ逃げるのではなく、機銃やミサイルと言った逃げつつ行える攻撃をこちらに向かって放てるだけ放ちつつだ。


「だから、逃がさないように手は打てるのよ。etoditna(エトディトナ)界毒の邪眼(タルウィベーノ)・3(プレイグ)』」

「!?」

 当然逃がすつもりはない。

 と言う訳で、セイメサイドの身体に呪詛の鎖を巻き付けて行動を阻害しつつ、その進路上に呪詛の鎖を編んで作った壁を展開して進路を妨害する。

 その上で伏呪付きの『界毒の邪眼・3』を撃ち込んで、逃走してもダメージを与えられるようにする。


「さて、セイメサイド。実のところ貴方には感謝しているの。だって、今の私があるのは貴方のおかげと言っても過言ではないのだから」

 さて、セイメサイドと私の間にはちょっとした縁がある。

 内容としては第二回イベントの予選で期せずして呼び出してしまったと言う物だが、あの一件で呪限無への門を開いた経験があったからこそ、今の私があると言うのは過言でもなんでもないだろう。


「だからこそ選ばせてあげるわ。苦しまずに茹で蟹になるか。苦しんで茹で蟹になるか。あるいは……私を打ち倒して、一度だけとは言え、生き残るかをね」

「ーーーーー!」

 だからこそ私は問いかけ、セイメサイドは果敢にも私に向けて鋏を構え……ビームを放った。

 よろしい、抗戦を選ぶのであれば、私も相応の力を見せるとしよう。


「ふんっ!」

「!?」

 と言う訳で、ルナアポを生やしたネツミテでビームを弾き飛ばすと、ルナアポをドゴストに収納し、接近。

 セイメサイドの胴体に手を当て、ドゴストも口を当てる。


「『竜息の呪い(クニルドセルブ)』、ezeerf(エゼールフ)灼熱の邪眼・3(タルウィスコド)』」

「!!?」

 ドゴストの口からルナアポが放たれ、それに合わせて『灼熱の邪眼・3』が発動。

 セイメサイドは芯から加熱され、焼かれ、全身が茹で上がって真っ赤になり、火薬に引火して爆発。


≪『要塞の蟹呪』セイメサイド・カトウシムに勝利しました。次の戦闘に移行します≫

 見事に爆発四散したのだった。


≪お手元の戦闘開始ボタンをこの場に居る全員が押すか、60秒経過する事で9戦目『琥珀化の蜂蜜呪』トオーハク・ムミネウシンムとの戦闘を開始します≫

「さて次はムミネウシンムね」

『でチュねぇ。速攻でチュか?』

「速攻ね。あの戦争でムミネウシンムは全力を出し切っているでしょうし」

 周囲の風景が変わっていく。

 四方全てが琥珀色の蜂蜜に囲まれた空間になっていく。

 どうやら戦争イベントの時と同じ状況にするようだ。

 うーん、私ならば問題なく勝てると思うのだが、他のプレイヤーがこのムミネウシンムに勝てる可能性があるのだろうか?

 いや、もしかしていい感じの勝負になるように、と言う奴には、ある程度は敵の弱体化も含むのか?

 後でズワムの件ともども確認しておくとしよう。


≪『琥珀化の蜂蜜呪』トオーハク・ムミネウシンムとの戦闘を開始します≫

『……』

 まあ、それはそれとして、ムミネウシンムを倒すとしよう。

 私は諸々の準備を済ませた上で、戦闘を開始する。

 そうして私が初撃を放とうとした瞬間だった。


『降参する』

「は?」

『えっ、アリなんでチュか。それ』

 ムミネウシンムが何処からともなく取り出した白旗を振る。


≪『琥珀化の蜂蜜呪』トオーハク・ムミネウシンムに勝利しました≫

「はああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

『アリなんでチュかぁ……』

『タル。貴様には悪いが、当時に全力を振り絞ってもなお勝てなかった相手に挑むほど妾は愚かではないぞ。降参できるならするに決まっているだろう』

 そして、それは受け入れられてしまった。


「ぐっ、消化不良にも程が……ぐぬぬぬぬっ」

『一矢報いた気分だな。では妾は消えるとしよう』

 まさかの形で一矢報いられてしまった。

 しかし、表向きのラインナップに並んでいる中で最後の相手が降参だなんて、それでいいのか運営は。

 いや、確かにムミネウシンムの知性と私との実力差、討伐された時の状況を考えれば、妥当な判断ではあるけども!

 ぐぬぬぬぬ……おのれ、運営。


≪サプライズ! 事前通達になかった強敵が確認されました! ……。状況を確認。準備が整うまで観覧席でお待ちください≫

 しかも次の相手は例の奴であり、諸々の都合から暫くは待つしかない、と。


『どうするでチュか。たるうぃ』

「はぁ。こうなれば仕方が無いわね。観覧席ってどうせ聖女ハルワたちが居るあそこでしょう? だったらあそこで実況の真似事でもして、ストレス解消でもしてましょうか。幾つか気になる事もあるわけだしね」

『まあ、そうなるでチュよねぇ』

 と言う訳で、私は観覧席に移動する事になった。

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