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982:6thナイトメアバトル-6

≪『磁積の蟷螂呪』セジノギ・ムトムロとの戦闘を開始します≫

「む……」

 セジノギとの戦闘が始まった。

 そして、始まった直後に私はネツミテとルナアポが重くなったのを感じた。

 状態異常の表示はない事とセジノギの種族から鑑みるに……磁力か。


「これは厄か……いびゅ!?」

「ー!」

 で、磁力に対応するべく、私が動き出そうとした瞬間。

 セジノギは既に動いていた。

 磁石の同じ極を近づけようとして反発したかのような速さで飛び出し、こちらにタックルを仕掛けてきたのだ。

 しかも、私が構えていたネツミテも磁力によって刃が立たないように阻みつつだ。


「むう……」

 結果、私は壁に叩きつけられたが……ダメージはそこまででもないか。

 とりあえずルナアポはドゴストに収納し、ネツミテは指輪形態に戻す事で、磁力の影響を抑える。

 そんな行動を私は素早く行った。


「ーーー!」

「速いわね」

 が、既にセジノギは私の正面に居た。

 それもただ居るのではなく、よく見れば両刃になっている腕の鎌を折り畳んだまま振り上げ、斧のように振り下ろそうとしている状態でだ。


「ーーー!」

 セジノギの鎌が振り下ろされ、私の身体は左半身が叩き潰される。

 うん、磁力によって金属製装備に制限を与えつつ、素早い挙動と強烈な攻撃、なるほどこれはマントデアのような素の身体能力と呪術によってタンク役を務めるタイプでないと、相当厳しそうな相手である。


「まあ、私ならどうとでもなるわね。etoditna(エトディトナ)界毒の邪眼(タルウィベーノ)・3(プレイグ)』」

「ー!?」

 が、その程度で死ぬ私ではないので、乗せられる呪法を乗せ、体を素早く再生させ、伏呪付きの『界毒の邪眼・3』を撃ち込み、セジノギに強烈な毒を与える。

 そして、思わぬ攻撃を受けたためだろう。

 セジノギは磁力を利用して、素早く私から距離を取る。


「ーーー!」

 いや、距離を取るだけではないか。

 セジノギの周囲に黒い砂や鉄製の武器が集まっていき、その一部がこちらに向かって射出される。

 レールガン……と言うほどではないようだが、中々の速さだ。


「『熱波の呪い(ドロクセルブ)』」

 まあ、弾くだけならば、そう難しい事ではない。

 それよりもだ。


「ーーー……」

「なるほどなるほど。磁力を利用した攻撃、移動だけでなく、自己バフと言う積み重ねもある。だからこそ、『磁積の蟷螂呪』と言う種属名なのね」

 セジノギは射出しなかった金属を自分の身体に張り付けて、鎧のようにしていく。

 鎌は重みと厚みを増してハンマーのようになり、それ以外の部位は隙間のなく金属で覆われてフルプレートアーマーのようになっている。

 単純な防御力の上昇……だけでなく、緊急時には張り付けた金属を弾丸のように放つことも可能そうだ。

 そして、移動が磁力を利用したものである以上、スピードがそこまで落ちるわけでもないのだろう、たぶん。


「じゃあ、raelc(ラエルク)淀縛の邪眼・3(タルウィボンド)』」

「!?」

 ではここで『淀縛の邪眼・3』を撃ち込み、干渉力を下げる事によって、自重が厄介なものにしてしまうとしよう。

 これで重厚な鎧は檻に早変わり。

 毒も入っているので、後は放置していれば、そう遠くない内に戦いは終わるかもしれない。


「ーーー!」

「おっと雷」

 それではまとめに入ってしまおうかと思っていたら、セジノギから電撃が飛んできた。

 私は素早くルナアポをドゴストから取り出して盾代わりとする事で、その攻撃を防ぐ。

 さて、これで悪あがきは終了だろうか?


『さて、たるうぃ的にはどういう評価になる相手でチュか?』

「んー、弱くは無いわね。でもやっぱりズワムやエニアロゴ、リツロバンなんかと同格止まりって感じかしら。個人的にはむしろ、これを倒したことによって強化されたであろうマントデアがどういう力を得ているかの方が気になるところね。あ、thgil(スィジル)恒星の邪眼・3(タルウィヘビィ)』」

「!?」

 まあ、弱い相手ではない。

 金属装備メタでもあるし、結構な数のプレイヤーが此処で何度か全滅してリトライすると言う、引っ掛かりになりそうな予感もある。

 が、私は金属装備には殆ど縁が無いと言っていいし、他の部分の相性も悪くない。

 雷を模した強烈な電撃への対処法もアジ・ダハーカとの戦いで分かっている。

 だから苦戦しない、そう言う事である。


『追撃のせいで、もうなんだか哀れな感じになっているでチュね……』

「こうなったら完封に近い形で勝ちたい。そうは思わないかしら?」

『最初に二回も攻撃を受けているでちゅああああぁぁぁぁぁぁっ!?』

 私は重量の増加と干渉力の低下によって、もはや立つことも叶わなくなっているセジノギの事を観察しつつ、ザリチュを抓る。


「さて、適当にデバフを重ねていきましょうか。そうすれば、その内死ぬでしょ」

『そうでチュねー……』

「ーーー……」

 その後、私はCTが明ける度に『界毒の邪眼・3』をセジノギへと撃ち込み、毒のスタック値を増やしていく。

 そうしてしばらく放置していると、セジノギのHPは尽きて、死亡した。


≪『磁積の蟷螂呪』セジノギ・ムトムロに勝利しました。次の戦闘に移行します≫

「さて要塞蟹は……逃がさないようにするのが大変そうなのよね……」

『でチュねぇ』

 さて次は 『要塞の蟹呪』セイメサイド・カトウシム。

 ある意味では懐かしい相手でもある。

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