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980:6thナイトメアバトル-4

≪お手元の戦闘開始ボタンをこの場に居る全員が押すか、60秒経過する事で6戦目『暗号の機械呪』エニアロゴ・キイクメカイとの戦闘を開始します≫

「さて、当然だけれども姿は見えないわね」

『でチュねぇ』

 周囲が白一色の風景に変わっていく。

 だがそれは何もないと言う意味ではなく、無数の罠が隠されており、こちらを虎視眈々と狙っている状態である。


『で、たるうぃは相手がどんなボスかは分かっているんでチュよね?』

「ええ、概要は分かっているわね」

 そして次の敵であるエニアロゴの姿は私の視界内には存在していない。

 これはエニアロゴの戦術が周囲の風景に擬態して姿を隠しつつ、アイムさんのように罠を設置して攻撃するのをメインの戦術にしているからだろう。

 また、アイムさんと違って接近されてもある程度は戦えるらしい。

 正しい順番で攻撃しなければ破壊できなかったり、反撃を受けたり、逃げられたりするような特殊な盾の展開。

 高い吹き飛ばし能力を有する物理攻撃を利用した罠への叩き込みなども確認されているとのことである。

 うん、アイムさんが検証班である事もあって、エニアロゴの情報についてはかなり詳しく調べられている。


「だから、速攻で叩き潰しに行くわよ。『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』」

 そう、とても詳しく調べられていて、未知なんて無いように思える。


『その心はなんでチュか?』

「検証班の検証内容には穴があるのよ。圧倒的な暴力による速攻に対して、エニアロゴがどうやって対処をするのかが分からないと言う穴がね」

 が、全ての罠を踏み砕き、圧倒的な暴力による蹂躙と言う行為は検証班では出来なかったのだろう。

 そう言う状況下でエニアロゴがどうするかは分かっていない。

 なので、私が検証するのである。

 うん、何もなくても速攻で次に挑めるわけだし、自画自賛ではあるが、とても良い判断ではないだろうか。


≪『暗号の機械呪』エニアロゴ・キイクメカイとの戦闘を開始します≫

「ヒャッハアアアアァァァァッ! 呪界ごと爆散させるつもりで行くわよおおぉぉ!!」

『チュアッハアアァァッ! 検証班は泣いていいと思うでチュおおおぉぉ!!』

 と言う訳で戦闘開始。

 『熱波の呪い(ドロクセルブ)』によって攻撃能力を与えた呪詛の剣を雨のように降らし、それによって戦闘領域として指定された場所全域に攻撃し、隠されていた罠を次々に起動させていく。

 合わせて、周囲の呪詛を支配し、支配への抵抗があった場所を感知する事によって、エニアロゴ本体が隠れている場所を割り出す。


「見つけたああぁぁ!」

「!?」

 と言うわけでエニアロゴを発見。

 一歩目でそちらの方向へと動き始め、二歩目で加速をしつつ拳を握り締め、三歩目で更なる加速をしつつ拳を竜のそれに変化させると共に大量の呪詛を装填。

 なお、この移動の最中にも大量の矢やら鉄球やら火球やらが飛んできているが、それらはいずれも私が通り過ぎた後の場所に放たれているので無視でいい。


「せいはぁ!!」

「!!!?」

 そして、四歩目で隠れていたエニアロゴ……巨大で全身白色のゴーレムの腹へと、全身の力を余すことなく伝えた拳を突き入れようとした。


「ちっ、流石にこの程度は対策済みね」

 が、腹に突き刺さる直前に多層の障壁が私の拳とエニアロゴの間に展開され、その障壁の9割ぐらいは紙切れのように吹き飛んだが、残りの1割によって僅かに減速、軽減。

 エニアロゴの身体は全身にヒビが入るような衝撃を受けて吹き飛ばされたが、まだ身動きが取れるようだった。


「ーーー……ーーー!」

「うーん、流石に一撃とはいかなかったわね」

『本当でチュねぇ。ルナアポを使えば一撃だったかもでチュが』

「それは今この状況のような未知が楽しめないから駄目よ」

『でっチュよねー』

 エニアロゴの反撃が行われる。

 私の周囲の空間が煌めき、無数の鎖によって私の身体が覆われ、幾つもの箱と檻が覆いかぶさり、何かしらの札が貼り付けられていく。

 なるほど、先ほどの障壁はこちらの罠の起動条件でもあったらしい。

 別にノータイムで破り捨てて脱出可能なのだが、この後に待ち構えているであろうものも含めて、ちゃんと受けてみよう。

 きっとエニアロゴにとっては最大級の大技のはずだし。


「ーーー!!」

 そして放たれたのは?

 火炎、電撃、氷結、呪詛、浄化、物理、それに属性も呪いも伴わない純粋なエネルギーによる攻撃。

 それらが私を封じている空間の内側で、連続炸裂していく。


「なるほどなるほど。閉鎖空間内で発生する無数の爆破系攻撃。何処かに強化解除の類も混ざっていたでしょうし、悪くは無いわね」

「……」

『今頃、検証班は泣いているでチュかねぇ……』

 逃げ場がない、身動きが取れない、そんな状況下であらゆる属性による攻撃が連続かつ相応の威力で放たれる。

 うん、有用性で言えば相当のものだろうし、『竜活の呪い』を使っていない状態であれば、普通に死にそうだ。

 が、今の私は『竜活の呪い』使用中である。

 と言う訳でだ。


「まあ、今の私には効かないわね」

 全身に竜鱗を生やし、ジタツニを巻き付け、呪詛の防壁を張り、と言った対策を施す事で難なく凌ぐ事に成功。

 脆くなった封印を尾の薙ぎ払いで吹き飛ばすと、エニアロゴの前に姿を現す。


「でもいいものは見れたわ。ありがとう、エニアロゴ・キイクメカイ」

「……」

 エニアロゴの姿が掻き消える。

 転移系の罠を利用した緊急脱出だ。


「お礼に私も相応の攻撃で返すわね」

「!?」

 が、たかが十数メートルの移動で私を振り切れるはずもない。

 数枚の壁をぶち抜いて、転移した直後のエニアロゴの背後へと回る。


citpyts(シトピィトス)出血の邪眼(タルウィブリド)・3(マスタード)』」

 そして伏呪付きの『出血の邪眼・3』を撃ち込んだ上で、背中から胸へと貫通するように腕を突き入れ、本体である小さな白い箱ごと爆散させた。


≪『暗号の機械呪』エニアロゴ・キイクメカイに勝利しました。次の戦闘に移行します≫

「うん、楽しめたわね」

『みたいでチュねぇ』

 うん、巨大な白いゴーレム部分は鎧のようなもので、本体は小さな箱であり、ゴーレム部分だけを倒しても終わらないと言う仕組みは検証班によって既知なのでスルーさせてもらった。

 これにてエニアロゴ討伐完了である。

 さて次は『陪審の鮫呪』リツロバン・シャウコウ。

 クカタチの呪限無、『死沸(しふつ)焼徳(しょうとく)の呪界』のボスだ。

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