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963:ダイヴプリペア-4

「しかしこうなると、このままだとあいつとの戦いでザリチュが出来る事が物足りなくなってくるわね」

『あー、それは確かにそうでチュねぇ。長期戦想定なら、この前のようにルナアポ製化身ゴーレムを早々に作るわけにもいかないでチュし』

 部屋に戻ってきた私は少し考える。

 アジ・ダハーカとの戦闘はほぼ間違いなく超長期戦になる。

 なので、『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』の使用は、最後の最後に使うか否かになる。

 だから、先ほどの実験結果から考えて、干渉力が強化されたゴーレムたちを持ち込むことは出来ないと考えていい。


「ルナアポの有用性を考えると、化身ゴーレムだけに回すわけにはいかないものね」

『でチュね』

 また、ザリチュの言う通りにルナアポ製化身ゴーレムは使えない。

 化身ゴーレムにルナアポを回してしまうと、他の事にルナアポを使えなくなってしまう。

 それはつまり、『竜息の呪い(クニルドセルブ)』の弾にしたり、ネツミテの先端に生やして槍にしたり、そのままぶん投げたりが出来なくなってしまうと言う事であり、デメリットが少々どころでなく大きい。


「ザリチュ。新しいゴーレムの構想とかはないの? 機動力に優れ、そこそこの攻撃力はある。ぐらいのものとか」

『割と具体的な要望を出してくるでチュね。たるうぃ』

 しかし、今のザリチュの手持ちだと化身ゴーレムはともかく、他はアジ・ダハーカのような大物を相手にするのに向いているとは言い難い。

 と言うか、鼠ゴーレムと腕ゴーレムはほぼ何も出来ず、機動力が死んでいる『噴毒の華塔呪』と『瘴弦の奏基呪』も何かをする暇もなく壊されそうで、火力増強手段としての眼球ゴーレムが一応使えるかなぐらいである。

 そして、眼球ゴーレムについては、こういう話し合いをしている間にちまちまと作って、ストックを増やしているので、戦闘中に改めて作るようなものではない。


『まあ、一応構想はあるでチュよ。上手くいくかは分からないでチュが』

「なるほど。じゃあ、作ってみましょうか」

 そんなわけで私は新しいザリチュのゴーレムを作る事にした。

 なお、使用木材は『虹霓鏡宮の呪界』奥地の毒々しい色合いの木々であるが、今の私にとっては大した木材ではない。

 そして、木材以外にも色々と組み込んだわけだが……さてどうなるだろうか?


『完成でチュね』

「そうみたいね」

 まあ、なんにせよ、そんなに手間暇をかけることなく、『取り込みの砂(ザリチュメモリ)』で取り込めるサイズ限界ギリギリの立方体が出来上がった。

 それを呪怨台に乗せてザリチュが念を込め、一つのアイテムとして確定。

 で、それを続けて砂の上に乗せる。


「はい、『取り込みの砂(ザリチュメモリ)』」

 『取り込みの砂』発動。

 型の取り込みが始まる。


『チュー……チュー……データを取り込み中ー……チュー……チュー……可動域の設定中ー……チュー……チュー……能力の設定中ー……チュー……チュー……進行度1%でチュー……』

「さて、取り込みが終わるまで……」

『チュー……チュー……データを取り込み中ー……チュー……チュー……可動域の設定中ー……チュー……チュー……能力の設定中ー……チュー……チュー……進行度10%でチュー……』

「早いわね」

 進行度の進みが早い。

 取り込もうとしている型が単純だからと言うより、ザリチュ自身のスペックが大きく上がっているので、取り込みが効率よく行えるようになっている感じだろうか。


『チュー……チュー……問題を確認中ー……チュー……チュー……問題を確認中ー……チュー……チュー……名称登録中ー……チュー……チュー……登録完了でチュ』

「随分と早かったわね」

『それだけざりちゅの処理能力が上がったと言う事でチュよ。たるうぃ』

 そしてあっさり終わった。

 では、性能確認と行こう。



△△△△△

『模倣の棺船呪』

レベル:着用者のレベルと同じ

干渉力:着用者の使用時の干渉力と同じ

CT:180s-120s

トリガー:[詠唱キー]

効果:周囲の砂を操ってカース『模倣の棺船呪』を一体作成する。


カース化したゴーレム『模倣の棺船呪』を作成する。

ゴーレムの性能の一部は着用者のステータスに依存する。

内部に収納された素材に応じた姿と能力、追加ステータスを得る。


注意:CTはザリチュが処理するが、トリガーは着用者が引く必要がある。

注意:使用する度に着用者に最大HP低下(100)、最大満腹度低下(10)、干渉力低下(1)が付与される。

注意:このゴーレムは『祖憑きの外喋帽呪』ザリチュの命令しか聞きません。

注意:このゴーレムは14体以上同時に存在できない。

注意:このゴーレムは呪詛濃度19以下の空間には存在できない。

注意:このゴーレムに収納した素材は取り出せず、ゴーレムが破壊されると同時に消滅する。

▽▽▽▽▽



『想定通りの出来でチュ』

「ふむふむ。『模倣の(カースゴレム・)棺船呪(ザリチュコフィ)』」

 うん、ザリチュ自身には分かっているが、私視点だと使ってみないとよく分からないタイプだ。

 と言う訳で、私は『模倣の棺船呪』を発動。

 足元の砂が集まって、一辺が1メートルの立方体を作り出す。

 立方体は上部が蓋になっていて、外すと突起物や筒が幾つも生えている内部が見える。

 この中に素材を入れればいいらしい。


「ほいっと」

 と言う訳で、とりあえず鼠毒の竜呪の余っている素材を投入し、蓋を閉める。

 すると『模倣の棺船呪』の姿が変形していき……。


「ヂュアッ」

「おおっ、これは便利そうね」

『上手くいって何よりでチュ』

 眼宮個体のものよりも更に一回り小さく、砂を固めただけの見た目ではあるが、鼠毒の竜呪そっくりのゴーレムが現れた。

 なるほど、素材と引き換えに、素材の元となったカースやモンスターの劣化版として働けるゴーレムのようだ。

 なお、ザリチュ曰く、元になったカース次第では空も飛べるし、ブレスを吐く事も可能、呪術の類も一応は使用可能であるらしい。

 これならば何を模倣するか次第ではあるが、戦力としては悪くなさそうだ。


「さて、今日のところはこんなところかしらね」

『でチュね』

 まあ、今はスペースを大量にとると言う事で、噴水に消えてもらったが。

 そして私はログアウトした。

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