945:ドロシヒ-1
「それじゃあ続けてドロシヒの強化ね。まずはドロシヒを外してっと」
「当たり前のように自分の首を刎ねるでチュねぇ……」
私はドロシヒの強化を行うべく、ドロシヒを外していく。
その中には当然ながら、私の首に填まっているドロシヒもあるが、そちらはいつも通りに首を刎ねて外す。
しかし、私の成長に『遍在する内臓』の強化もあって、首を刎ねたぐらいでは特に影響はないようだ。
「じゃ、作業していくわよ」
「でチュねー」
では、ドロシヒの強化をしていくとしよう。
メインで使うのは竜呪たちの目玉である。
尤も、卵雲の竜呪のように目玉が存在しない竜呪も居るので、そう言う竜呪については別の素材で代用する。
「で、目玉をどうやって使うんでチュ?」
「そうねぇ……とりあえず溶かそうかしら」
使い方については……ミキサーなどを用いて素材を粉々に砕いた後、ヤノミトミウノハの普通の液体によって溶かしていく。
続けて私の血も投入、よくかき混ぜる。
これによって、濃密な呪いが込められた虹色の液体を作成する。
「で、これに錘を投入。これもオパールだから、液体の置き換えをしていくわ」
「ふむふむでチュ」
で、その液体にドロシヒの13個の錘と5個の輪を漬けて、呪詛支配も利用して、ドロシヒに含まれていく液体を入れ替えていく。
結果、ドロシヒの錘は煌々とした虹色の輝きを帯びるようになり、5個の輪に付いている宝石は……なんとなくだが視線を感じるような気がする。
まあいい、呪怨台に乗せて、これまで通りに呪おう。
「ドロシヒ。『虹霓境究の外天呪』である私の蓄え。星を宿し、我が血を宿すもの。新たなる姿を私の前に見せなさい」
現れた新たなドロシヒの姿は……まあ、見た目はほとんど変わらない。
それ以外の点についても先述通り。
13個の錘が虹色の輝きを宿し、5個の輪に付いている13個の宝石から視線を感じるような覚えがあるぐらいだ。
では、鑑定。
△△△△△
『星憑きの外玉輪呪』ドロシヒ
レベル:着用者のレベルと同じ
耐久度:100/100
干渉力:着用者の干渉力と同じ
浸食率:100/100
異形度:25
竜、そして外天呪に由来する呪いを含む、数多の呪詛を利用して制作された、五輪十三錘十三玉で一組となる装飾品。
積極的に自己意思を示すような事は無いが、正当所有者の眷属として扱うべきではあるだろう。
この世ならざる者に通じる気配を漂わせており、正当な所有者以外が着用すれば、恐ろしい呪いに襲われる事だろう。
沈黙無効化(装備者のレベル)、沈黙に対して高い耐性、沈黙に対して中程度の抵抗性を有する。
干渉力低下無効化(装備者のレベル)、干渉力低下に対して高い耐性、干渉力低下に対して中程度の抵抗性を有する。
恐怖完全無効化。
着けている輪の数に応じて、装備者の周囲に存在する呪詛の支配を助ける(1個:0.25km、2個:0.5km、3個:1km、4個:2km、5個:5km)。
装備者の周囲の呪詛を吸収して拠点に送り、拠点から所有者の周囲へと呪詛を送り出す。
呪詛出納ツール-『ダマーヴァンド』とリンクしている。
周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する。
周囲の呪詛、エネルギーの一部を吸収する事で耐久度が回復する。
耐久度が0になっても、一定時間経過後に復活する。
呪いの塊であるその身は幾つかの呪術を習得しており、装備者がトリガーを引くことで使用が可能。
『
注意:この装備をタル以外が装備した場合、1分ごとに着用者の最大HPと同値の恐怖が付与される。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1秒ごとに乾燥(1)、小人(1)、毒(1)の状態異常を受ける。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1時間ごとにランダムな呪いを恒常的に得て、異形度が1上昇する。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1秒ごとに最大HPの1%のダメージを受ける。この効果は一度発動すると、対象者が一度死ぬまで解除されない。
注意:着用中、光を利用した状態異常の視覚障害はあらゆる手段を用いても防御できない。
注意:この装備の周囲の呪詛濃度が10以下の場合、着用者の受けるダメージが増える(極大)。
注意:装備者は異形度の高い相手に認識されやすくなる。
注意:この装備を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(極大)。
▽▽▽▽▽
「新たな呪術が一個追加されたわね」
「でチュね。読みは『援助の祝福』の反対でチュか」
強化は……順当に行われた感じか。
ちなみに新規呪術である『徴収の呪い』以外の呪術も、レベルと干渉力が私依存になっている。
では、肝心の呪術の性能についてみてみよう。
△△△△△
『
レベル:着用者のレベルと同じ
干渉力:着用者の使用時の干渉力と同じ
CT:10s-10s
トリガー:[詠唱キー]
効果:発動すると、使用者の呪詛支配圏に存在する生物から、2秒につき1のHPを吸収する。この効果を5分間維持する。
吸収したHPは、使用者のHPが最大値以下であれば使用者のHPになり、使用者のHPが最大値であれば『
使用者のHPが最大値かつ『貯蓄の呪い』のストックが最大値である場合、光球に変化して発動者の周囲を漂い、接触者に対して吸収したHPと同値のダメージを与える。
星は命を吸い込んでいく。
世界を照らし出さんがために、命を吸い込んでいく。
注意:使用する度に使用者のHPを最大HPの0.1%消費する。
注意:使用するためには『
注意:使用するためには『
注意:一度使用すると、ゲーム内時間で5分間経過するまで『徴収の呪い』は再使用出来ません。
▽▽▽▽▽
「あ、強い。吸収出来るのは一人につき150しかないけれど、私の呪詛支配の範囲内全体からだから、相手の数次第では無茶苦茶なことになるわ」
「でチュねぇ……まあ、相手が千人くらい居ないと、そういう話には出来ないでチュが」
強い。
少なくとも弱くはない。
発動条件が少々厳しくはあるが、『竜活の呪い』発動中にとりあえずで使っていい性能はしていると思う。
後、戦闘中に暇を持て余しがちなドロシヒに役目が出来たのもいい事だと思う。
まあ、調子に乗って使い続けていると、肝心な時に『虚像の呪い』を使えないと言う間抜けな事にもなりかねないので、気を付ける必要はあるが。
ちなみに発動に消費するHPは……『竜活の呪い』発動中だから、44か。
損をする事はまずなさそうだ。
「で、会話をしながら当たり前のように首を外さないんで欲しいんでチュが?」
「え? 外さないと着けられないじゃない」
「そうでチュけどもぉ……」
なお、ドロシヒは既に首を外して再着用済みである。
そして、残念ながら今日のアップデートは此処までである。
と言う訳で、私はドゴストの中に竜呪たちの可食部位と私の血を入れて、明日の準備を済ませると、ログアウトする事にした。
06/11誤字訂正