939:アンエクスプロード・リージョン-3
「「「ユングルウゥゥ!!」」」
「さて、30秒ね」
私の攻撃によって牛陽の竜呪たちの巨体が浮かび上がり、ひっくり返っていく中で蛇界の竜呪が複数体突っ込んでくる。
私はそれを紙一重で受ける。
避けるのではなく受ける。
受けて血を流し、そのまま直進していく、蛇界の竜呪たちの身体に私の血を大量に擦り付ける。
「「「ユグァ!?」」」
「「「ーーー!!」」」
蛇界の竜呪たちが竜血の効果で邪眼術を受け、爆散する中、後続の竜呪たち……兎黙、暗梟、虎絶が突っ込んでくる。
それに対処するべく、私も動き出す。
つまり、ルナアポを生やしてネツミテを振るい、リーチ差を生かす事によって兎黙を一刀両断。
その能力による回避を狙う暗梟には、呪憲を込めると共に相手の座標を正確に把握する事によって、回避を無視した呪詛の剣で刺し貫く。
虎絶は引き寄せを無効化されたことでこちらに寄ってきて直接攻撃を仕掛け来るが、紙一重で避けた上で横っ面にネツミテを叩きつけて、吹き飛ばす。
「「「ーーーーー!!」」」
「恐羊と恒葉星ね」
と、ここで牛陽の竜呪の巨体が地面に着き、轟音を立て、落ち方が悪かった一体の首が折れる音が響く。
それと同時に何体かの竜呪が牛陽の竜呪に押し潰されて死亡。
だが、押し潰されなかった恐羊と恒葉星は素早く体勢を立て直すと、こちらへの攻撃を仕掛けてくる。
それは複数体の恒葉星の竜呪の能力によって移動不能に陥ったところに、もはや隙間すら見えない密度の遠距離攻撃が殺到すると言うものであるが……。
「『
「「「!?」」」
前者は『座標維持』でレジスト出来るし、後者は『転移の呪い』でとりあえずはすり抜けてしまえばいい。
そしてすり抜けると同時に、手近な場所にいた恒葉星を串刺しにして始末。
「「「ーーー!!」」」
「ザリチュ」
『はいはい、準備しておくでチュ』
で、恒葉星を始末した私はそのまま地面を擦るように横へ回転しつつスライド。
串刺しにした恒葉星の死骸を勢いよく飛ばす事で妨害としつつ、ルナアポの圧倒的な切れ味でもって、近くに居た恐羊と恒葉星を切り刻んでいく。
また、それに合わせて眼球ゴーレムを仕込んだ鼠ゴーレムをドゴストから投下して、戦場にばらまいていく。
「「「ヂュアアアァァァァッ!」」」
「はい、
と、ここで妓狼の指示によって態勢を整えたらしい鼠毒たちが一斉突撃を仕掛けてくる。
だから私は突撃を仕掛けて来た一体を『出血の邪眼・3』で爆破し、生じた隙間に向けて突っ込むことで包囲を回避する。
勿論、この際にも横回転を続けておき、周囲への被害は与えておくし、竜瞳による牽制も行っておく。
「ついでよ」
「「「!?」」」
それからついでに『
ただの砂岩の塊にしか見えない『噴毒の華塔呪』たちは何体かの竜呪たちを巻き込みつつ転がっていき、それから自立して、竜呪たちに気づかれないように少しずつ毒と乾燥をばらまいていく。
「ーーーーー!」
「舐めすぎ。
「!?」
それから暫く。
呪詛の剣による牽制、竜血によるカウンター、身のこなしによる回避、ルナアポによる攻撃で敵を削り取りつつ、これまでの行動で減った満腹度を満腹の竜豆呪で、HPを竜骨髄で回復。
対する相手は絶え間ない攻撃をしなければどうしようもないとは分かっているらしく、攻撃の態勢が整った竜呪が次から次へと突っ込んでは、一撃離脱を繰り返すように立ち回ってくる。
中には渇猿のように自らの耐久性を頼みに、複数回の攻撃を狙ってくるものも居たが、そう言うのはネツミテで吹き飛ばし、こちらから弾き飛ばしていく。
と、そんな立ち回りの中で、非実体化した暗梟の陰から飛び出すように副官の妓狼が突っ込んできたので、ルナアポで片腕を切り飛ばしつつ毒を与えておく。
これで副官の妓狼は終わりだろう。
それと長妓狼の位置もザリチュが把握してくれているから、タイミングを見て始末したいところだ。
だがその前にだ。
「「ビヒー……ンンンン!?」」
「気づかないとでも?」
ここで淀馬が私に対する狙撃を試みようとした。
が、姿を消していても、今の私が淀みの塊である淀馬を見逃すような事はない。
出現と同時に四つの目に呪詛の剣を叩き込み、現れた金貨銀貨宝石を丸ごと『熱波の呪い』で加熱、溶かして始末をつける。
また、それと並行して、何体かの竜呪の攻撃を捌きつつ、ネツミテとルナアポでぶん殴る。
「一応張っておきましょうか。『
で、この辺で一応『抗体の呪い』を発動。
これまでに一瞬ではあってもかかっていた状態異常に対する抵抗性を得る事で、安全性を高めておく。
「ブモオオォォ!!」
おっと、さらなる乱入。
虹亥の竜呪が群れをかき分けつつ突っ込んでくる。
それを見た私は虹亥の竜呪に接近し、素早くルナアポを虹亥の竜呪の首下に差し込み、振り上げる。
「
「!?」
で、そのタイミングで伏呪付きの『沈黙の邪眼・3』を使って、虹亥の竜呪を即死させる。
追加で『埋葬の鎖』も使い、死んでいるからこそ高速で何処かに飛んで行きかねない虹亥の竜呪の死体を回収。
合わせて、他の竜呪たちの死体も回収できるものは片っ端から収納していき、戦場を綺麗にしていく。
「分かってはいたけど、この規模になるとやっぱり邪眼術よりも武器での近接が主体になっちゃうわね」
『ソロの時点で当然だと思うでチュ』
勿論、そんな行動をしている間にも他の竜呪は私目掛けて接近あるいは遠距離攻撃を仕掛けてくるので、私は先程までと同じように竜呪たちへと対応していく。
でだ。
「さて、一通りの素材は回収できたかしら?」
『そうだと思うでチュよ』
「「ブモオオォォ……」」
ここで遂に牛陽が体勢を立て直し終え、こちらを見下ろしてくる。
その目には怒りの色が浮かんでおり、長妓狼も片方の背中へと既に移動済み。
この状況下で相手が取る行動なんて一つしかないだろう。
「「ブリュウウウゥゥゥ……」」
「「「ーーーーー!」」」
そう、味方を死兵とした足止めを行いつつ、あちらの最大火力である牛陽の一撃を叩き込むこと。
そのために牛陽は今現在、傷ついた体を押して、両前足を持ち上げている。
他の竜呪たちもその意図を理解しており、もはや攻撃よりも私をこの場から移動させないことをメインとした動きに変わっている。
うん、うん、私が相手でなければ正しい判断だ。
そして私が相手であっても、通るのであれば、有効な攻撃と言えるだろう。
「『
「「「!?」」」
通しなどしないが。
私は自分の口から放たれた虹色のブレスによって、周囲を薙ぎ払った。
06/05誤字訂正