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933:現実世界にて-23

「それで結局『虹霓境究の外天呪』って何なの?」

 本日は2019年10月7日月曜日。

 いつも通りのザリア……芹亜と大学で昼食を一緒にしつつ、情報交換をする日である。

 であるが、今日については12時に次回のイベントの予告が出るかもしれない日でもあるので、そちらも注目どころである。

 で、現在は11時半頃。

 とりあえず12時になるまでは、『出血の邪眼・3(タルウィブリド)』の件で、ザリアが気になっている事についての質問会である。


「話したいですけれど……禁則事項の可能性が高い案件なので、言える事は無いですね」

「あー、やっぱりそうなのね」

 とは言え、禁則事項の都合上、話せることは限られているが。


「じゃあルナアポについては? あれ、怖ろしく重かったけど、何で出来ていたの?」

「ルナアポについては……素材は秘密ですが、重い原因は干渉力だと思います。あれ、常に私の干渉力に100を足した干渉力になっているので、今回は芹亜の剣に合わせて色々と調整はしていましたが、それでも200は確実に超えていたでしょうから」

「それは……重くて当然ね。変身中は羽衣の干渉力も大幅に上がっているでしょうし」

 まあ、ルナアポの能力の一部については話しても大丈夫なので、話しておく。

 あの時に何をやったのかまでは教えないが。


「後はあれですね。敢えてルナアポを一言で言い表すなら、アレはタルの力の結晶です」

「……。その言葉でどんな理不尽が起きたとしても納得するしかないと思えてしまうあたり、私も相当羽衣に毒されてきているわね」

「説明が楽なのは良い事ですね」

 私は笑みを浮かべ、芹亜に現物を見せるべく周囲の呪詛を集めようとして……ここが現実世界であり、呪詛なんて無い事を思い出す。

 そう、真の神含め神話と私たちとの繋がりは現実にはあれど、ルナアポは現実にはないのである。


「羽衣のその手の動き。VRあるあるかしら」

「VRあるあるですね。感覚的にこなせている事だと、うっかり出る事がありますよね」

「まあ、あるわね。なんとなく、何処そこから敵が出てきて仕掛けてきたら、どう動いて避けるかとか、うっかり考える事はあるわね」

「ありますねー」

 なお、そんなことを考えている間に私の手は少し動いていて、それを芹亜には見られていたようだ。

 まあ、この手のVRあるあるはゲームにある程度以上親しんでいると時々ある事なので、問題はない。

 敢えて昔のゲームで言うなら、FPS系統のゲームに親しんだ結果として建物同士の隙間を見て、此処は射線が通るとか、敵が角待ちしているとしてどう釣り出すかを考えてしまうようなものであり、現実に人を撃ちたいとかそういう思考とは全くの別物である。


「ああそう言えば、あの試練で気になっていた事がもう一つあったわね」

「何でしょうか」

「どうやって私の視界に羽衣が見ていたものを重ねていたの。だいたいの技術はムミネウシンムの件でやったアレと同じだと思うんだけど、何かしらの呪術や道具は使っていたの?」

「ああ、あれですか」

 では次の質問。

 乱雲光髄の外天竜呪の力がある場所を芹亜に目視させた件についてだ。

 ただあれはなぁ……。


「あれ、殆ど力技ですよ」

「えっ……」

 ぶっちゃけ力技である。


「基本的な部分については芹亜の言う通り、ムミネウシンムの件でやったのと同じです。呪詛を支配して、特定の色だけ発露させて、映像を作り出すと言う奴ですね。それであの時は、私が見ているものが芹亜の位置からどう見えるかを計算し、芹亜の目の前に計算したそれを投射。芹亜本来の視界がおかしくならないように一体化させただけです」

「特別な呪術や道具の類は……」

「一切使ってませんね」

「ルナアポ以上の理不尽に遭遇した気分よ。羽衣」

「そうですか?」

「いや、そうでしょう……」

 と言う訳で何故力技なのかを説明したところ、芹亜は机に力なく突っ伏してしまった。

 大丈夫だろうか?


「羽衣、人が機械を使わずに機械でしか出来ない事を、機械以上にしていたら、流石におかしいと思わない? 具体的には生身の人間が新幹線と同速で走っているぐらいの姿をイメージしてもらえると助かるんだけど」

「芹亜、『CNP』にログインしている時点で機械の力はこれでもかと言うぐらいに借りていますよ。だったら後はその機械をどこまで使いこなして、何が出来るかです。現実の事を程よく忘れて無視すれば、生身の人間がリニアモーターカーに追いついたって許されますよ」

 まあ、ここら辺はイメージの問題と言うか、ゲームのアバターが何処まで出来るのか、『CNP』の世界がどこまで許容しているのかを把握しているかの問題であるような気がする。

 色々と工夫を凝らせば、あの自由度の高い世界では、案外何とかなるものなのだ。


「ああ、言われてみれば……いや、そうはならないでしょ。羽衣の頭の処理能力だけは説明がつかないわ」

「そうですかね?」

「そうよ。まあ、羽衣だからと言ってしまえば、それまでなのかもしれないけどね」

「ならそれでいいと思いますよ。大切なのは自分がどう思うかですから。芹亜」

 なお、この件については他人に教えられても自分で納得しなければどうしようもならない点だと思うので、概要を伝える以上の事をする気はない。

 たぶんだがブラクロも似たような物であろうし、そちらに聞けば相応の話は聞けるだろうから、芹亜なら機会があれば聞くだろう。


「さて、そろそろ12時ですね」

「ええそうね。さて公式サイトの更新は……あったわね」

「ええそうですね。次回のイベントのタイトルは、『再演される呪われた悪夢の宴』……ですか」

 では、次のイベントについての理解を深めるとしよう。

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