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924:タルウィブリド・3-5

「ーーーーー!!」

「レーザー系統の攻撃……いえ、それだけじゃなさそうね」

『っつう!?』

 乱雲光髄の外天竜呪の尾から生える突起物が一瞬だけ白く光り、その直後に、赤、橙、黄、緑、青、紫の光が放たれる……いや、伸びていく。

 そして伸びていく光は雷のように折れ曲がり、枝分かれしながら、私とザリアへと迫っていく。

 それをザリアは私が配した足場を素早く跳び回る事によって、紙一重で回避していく。


「ぐっ、なるほど。電撃属性のダメージに状態異常ね。私の耐性を抜いてくるとなると、ザリアが直撃したらまずそうね」

『確認はありがたいけど、無理はしないで欲しいんだけど? 後、耐性を抜かれているのに、なんで一瞬で治ってるのよ……』

「竜活中だからそんなものよ」

 対する私は翅のサイズが大きくなっているなどの事情から、完全に避け切る事は不可能と判断。

 なので直撃だけは避ける方向で動き、ルナアポと呪憲の壁による軽減の後に、出来るだけ体の端の方に当たるようにする。

 で、受けた結果を述べるなら、電撃属性のダメージに加えて、色に応じた状態異常を受けるようだ。

 具体的には赤なら灼熱、橙なら沈黙、黄なら気絶、緑なら毒、青なら暗闇、紫なら恐怖だ。

 まあ、私の耐性で直撃を避けたならば、どの状態異常も支障を来たさないレベルに抑えられるようだが。

 完全無効化すら抜いてきている点については今は気にしないでおく。


『はぁ、前から思っていたけど、タルの使う呪術で一番ぶっ飛んでいる気がするわ。それ』

「否定はしないわ。citpyts(シトピィトス)出血の邪眼・2(タルウィブリド)』」

 問題は攻撃の持続時間か。

 既に攻撃開始から十数秒経っているのだが、乱雲光髄の外天竜呪の尾から伸びる光は未だに消えず、伸び続け、幾度も折れ曲がってから再び私とザリアの方へと向かってきている。

 この攻撃を止める方法は……。


『せいっ!』

「ーーーーー!?」

「ま、そう言う事よね」

 ここでザリアが光の帯をかいくぐって乱雲光髄の外天竜呪の尾に接近。

 手にした細剣を振るい、突起物の一つを横から突き刺す。

 するとその突起物が強烈な閃光を放ち、色こそそのままではあるが、全ての突起物からの光が止み、攻撃が強制中断された。

 うん、順当な停止手段ではある。

 難易度の高さと、私の攻撃では駄目であろう点が厄介だが。

 それと見た目の感じからして、出血の状態異常が効果を示さないようにダメージを与えたようだ。


「ーーーーー!」

『ヤバッ!?』

「引き寄せるわ!」

 と、攻撃を中断させられた乱雲光髄の外天竜呪だが、今度は胴に付いている突起物を輝かせ始める。

 そこから放たれたのは、一つ一つはピンポン玉程度の大きさしかない、虹色に輝く無数の球体。

 けれど私のように遠目から見ても、そしてザリアのように特殊な感知方法を持っていないものであっても、その内に莫大なエネルギーが秘められていると認識できるようなもの。

 それを乱雲光髄の外天竜呪はあろうことか、一瞬で数千あるいは数万も放ち、雨のように降らせようとしていた。


『引き寄せ……むぐうっ!?』

「さて、壁は……無駄ね」

 私は咄嗟にザリアの身体に呪詛の鎖を巻き付け、私のすぐ近くへと引き寄せる。

 その上で雨を防ぐべく呪詛の壁を張ったのだが、雨はそんなものは存在しないと言わんばかりに、壁をすり抜けて落ちてくる。


「舌を噛んだわ! でも助かったわ!」

「それは御免なさいね! それとお互い様よ!」

 それを見たザリアが殆ど反射的に針を投げつけ、素早く飛んでいった針の一つが雨の一つに突き刺さり……大爆発。

 その爆発で他の雨が吹き飛んでくれれば話は楽だったのだが、残念なことに他の雨は爆発の影響を受けずに落ち続けている。


「面攻撃はすり抜けとか、悪質過ぎないかしら!?」

「まったくね!!」

 ならばと私は呪詛の槍を生成し、当たるを幸いに射出。

 すると運よく直撃した雨だけが大爆発を起こし、他はそのまま降ってくる。

 どうやらこの雨はピンポイントに攻撃が直撃した場合のみに爆発して、防ぐことが可能であるらしい。


「ザリア、出来るだけ私に近づいておいて!」

「分かったわ!!」

『『噴毒の華塔呪』を出すでチュよ! たるうぃ!』

 なので私もザリアもひたすらに点での攻撃を、自分の真上に向けて行い続け、少しでも雨の数を減らしていく。

 そうして限界点に達したと判断した時点で、私はザリアを自分の近くに寄せ、周囲をジタツニの伸びた部分でガードし、その更に外側へ念のためにとドゴストへと入れておいた『噴毒の華塔呪』たちを配し、ガードを固めていく。


「ーーーーー!!」

「「!?」」

 乱雲光髄の外天竜呪の咆哮と共に全ての雨が爆発した。

 最初の核融合モドキよりも一瞬の破壊力については控え目だが、あらゆる方向から連続して熱と衝撃波が襲い掛かるこちらの方が、総合的な破壊力と言う意味では上かもしれない。


「ーーー……」

「まったく……対処を少しでも間違えたら、私でも即死ね」

「本当ね。タルがいなかったらどうしようもなかったわ」

 それでも何とか私たちは生き残った。

 『噴毒の華塔呪』は全滅したし、私もザリアも傷だらけで、ビルはもはや完全に倒壊して私の呪詛を足場にしている形だが、どうにか凌ぐ事は出来た。


「さて、次の攻撃が来るまでに何とか状況を改善する必要があるわね」

「タル、向かうための足場をお願い。どう改善するにしても、私が動くならば接近するしかないもの」

「分かったわ」

「……」

 では反撃といこう。

 ザリアは敢えて傷だらけのまま駆け出し、私は邪眼術の準備をしつつ乱雲光髄の外天竜呪が次に使ってくる攻撃を見極めるべく目を凝らす。

 そして乱雲光髄の外天竜呪は……頭の突起物を光らせ始めた。

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