922:タルウィブリド・3-3
「ルナアポォ!!」
私は『
つまり、『呪憲・
そうして防御能力が上がった呪詛を材料にルナアポを最大サイズで生成して、刃の腹を盾のように私たちと龍の間に割り込ませる。
その上で防御能力が上がった呪詛を全方位へ壁のように展開すると共に、スカート部分が大きく広がり伸びたジタツニに纏わせて、ザリアを守るように囲む。
で、当然ながら他の装備品たちも防御に回した。
「「!?」」
直後。
龍の行動に起因するであろう熱、光、衝撃がルナアポの表面で発生した。
その量は凄まじく、熱に対して極めて強いはずの私の身体を構成する呪詛が、純粋な熱と、分子原子レベルに対して行われる何かによって破壊されていく。
「ぐっ……」
「いったい何が……」
光と衝撃が晴れ、周囲が数百度の熱に満たされた状態になった。
だが私はギリギリで生き残っていた。
体の大半が炭化……いや、炭化以外にも異常が起きている感じだが、とにかく生きている。
生きていて、正常な状態へと戻りつつある。
「タル!?」
「生きて……いるから……大丈夫よ……」
ザリアは無事。
周囲の熱に煽られて、多少肌が赤味がかっているように見えるが、誤差の範囲だろう。
「それよりも、構えて貰えるかしら?」
「……。そうね、分かったわ」
地形は酷い事になっている。
ほとんどのビルが倒壊、あるいは骨組みだけ残して、吹き飛ぶか蒸発。
地上の黒い何かも真っ赤に輝き、溶岩のようになっている。
周囲の温度も併せて考えると、まるで地獄のような様相である。
「……」
「で、あの龍は何をやったのよ。タル」
「たぶんだけど……核融合かしらね」
「核ゆ……はあっ!?」
さて、それではこの状況を起こした龍は?
試練開始時と同じ場所で、傷一つなく浮かんでいる。
とぐろを巻く状態は解除し、六色に輝く突起物も黒く染まっている事から考えて、次の一発は直ぐにはなさそうだが、余裕に満ちた姿だ。
「核融合って……そんなこと可能なの?」
「まあ、正確には呪詛を利用した、核融合に似た何かかしら。原理までは分からないし、どうやって情報を得たのかも話せないけど、いずれにせよ、防御を固めないと、この状態の私でも即死するわね」
「もう色々と突っ込みたいところが多すぎる。多すぎるけど……今は私がやれる事をやらせてもらうわ」
そう言えばルナアポ使用版の『竜活の呪い』を誰かに見せたのは、これが初めてか。
ザリアは私の事をちゃんと認識出来ているのだろうか?
まあ、認識出来ていなくても問題はないか。
とりあえず今の爆発でルナアポが破壊されつつも得てくれた情報はザリアに教えられた。
「ーーーーー!」
「さあっ、来るわよ!」
「言われなくても!」
さて、龍の突起物は少しずつ輝きを増している。
恐らくだが、時間経過でまた先程と同じような、けれど威力が増した攻撃が来るのだろう。
それまでに倒し切るか、最低でも突起物に溜まっているエネルギーを安全に拡散させるなどしなければ、私たちの負け、そう言う事だろう。
そして、龍にはそれまでただ待つと言う考えはないようだ。
どことなく紫に近い感じの白い光を爪に蓄えつつ、私たちの方へと突っ込んでくる。
「せっ……っう!?」
「ー!」
ザリアが針を投げる。
その針と龍の爪が接触する。
爆発が起き、周囲へと明らかに体に悪そうな光が撒き散らされ、ザリアに降り注ごうとしたそれを私はガードした。
「ごぼぉ!?」
「タル!?」
結果、吐血した。
いや、ただの吐血ではなく、黒い何かが混ざっているか。
「あー、はい。紫外線ね。これは……」
「癌化と言う事かしら……ああなるほど、だから核融合も出来るのね……」
まあ、直ぐに治る。
痛いがそれだけだ。
設計図が体の外にも存在している私たちならば、そちらにも干渉されない限りは、病気は怖いものではない。
「ええ、そう言う事よ。こいつはたぶんだけど、紫外線やガンマ線と言ったものを操っているんだと思う。合わせて放射能やレーザー辺りも権限の範囲かしら?」
「普通のプレイヤーが相手に出来るような能力じゃないわね」
「……」
強烈な紫外線と同様の呪詛を撒き散らした龍は、私たちから再び距離を取っている。
どうやらヒットアンドアウェイと言うか、様子見と言うか、積極的な攻勢に出るつもりはまだない……。
「~~~」
「まずっ!?」
「えっ、あっ!?」
龍が突起物の一つをこちらに向けていた。
私はそれを見て、反射的に進路上にあったもの……つまりはザリアの身体をジタツニでからめ捕り、引き寄せる。
直後、同様に進路上にあったビルの床が蒸発した。
正確に述べれば、一瞬にして砂と化した上で吹き飛んだ。
「今のは?」
「たぶん赤外線、あるいはマイクロ波」
「超高出力電子レンジでいいのかしら?」
「それでもいいと思うわ」
危ない所だった。
もしも引き寄せが間に合っていなかったら、今のでザリアの全身が茹で上がっていてもおかしくはない。
「タル。この状況で私にできる事って何かあるのかしら?」
「私には分からないわ。私に分かる事と言えば、私ではなくザリアが何かをしなければ、勝ち目はないと言う事だけよ」
「そう……だったら、やれるだけの事はやらせてもらうわ」
しかしこれであの龍の能力は多少だが分かってきた。
たぶんだが、あの龍は電磁波や放射線と言ったものを操る。
そして真なる神の加護と言うか細工の類なのだろう。
時間から考えて既に発動しているはずの劣竜瞳は、発動すらしておらず、その事から邪眼術についても考えて発動する必要があるようだった。
つまり、この戦いにおいて、私はザリアのサポートに徹する事を求められているらしい。
実は核分裂のが近いです。