<< 前へ  次へ >>  更新
918/918

918:ペトロパレス-1

「でも見事な光景と言うか、惹かれる人は惹かれる光景でしょうね。これ」

「まあ、それは否定しないでチュ」

 新たな眼宮の見た目は、簡単に述べれば『蜜底に澱む呪界』の構成物をオパールに変えたようなものだった。

 言い方を変えれば、床も壁も天井もオパールで出来た鍾乳洞、あるいは洞窟とも言えるだろうか。


「「「ピギイイィィ!!」」」

「ひっ、ひあっ……」

「来るなああぁぁ!!」

「こいつらのスタミナどうなっているんだよおおぉぉ!」

「まあ、観光するには騒がしすぎるけど」

「こればかりは解放したばかりだから、仕方がないでチュね」

 なお、先行して突入したプレイヤーたちが地竜に追い掛け回されているため、今は非常に騒がしい。

 いや、地竜の性質を考えると、今だけでなく普段も騒がしそうな予感がする。


「プギィ……」

「しかし可愛いわね」

「試練個体と比べたらそうでチュねぇ」

 さて、眼宮突入と同時に出現する竜呪が私たちの前にも表れた。

 しかし、その見た目は試練で戦った地竜と比べると、随分と可愛らしい。

 何周りも小さく、全身を覆う虹色の甲殻が全体的に丸く、牙が短く、目がつぶらな感じだからだろうか?

 なんとなくだが、ウリ坊とか言いたい。

 なお、小さいとは言ったが、体高は1メートル近く、体長も2メートルは確実にある。


「ピギイイィィ!」

「どう戦うでチュか。たるうぃ」

「とりあえず入り口から少し離れた場所には向かいましょうか。此処だと、何時横槍が入るかも分からないし」

「分かったでチュ」

「後、鑑定っと」

 地竜がこちらに向かって突進を始めたので、人の気配が薄そうな方向に向かって私たちは移動を開始。

 地竜も私たちを追って、同じ通路に入ってくる。

 で、余裕があるうちに鑑定は済ませておく。



△△△△△

虹亥の竜呪 レベル40

HP:782,365/782,365

有効:沈黙、出血

耐性:毒、灼熱、気絶、小人、干渉力低下、恐怖、乾燥、暗闇、魅了、石化、引力増大、幸運値低下

▽▽▽▽▽



「ピギイイィィ!」

「こうがい……で、良いのかしらね。うーん、ステータスは可愛くないわね……。後、沈黙効いたのね、このウリ坊」

「うわ、切っても切っても再生していくでチュ……」

 地竜の正式名称は虹亥の竜呪っと。

 ステータスを見る限り、倒すための戦術として考えられるのは、沈黙での窒息死あるいは即死、出血による一撃爆散、試練でやったように自分が関与していない石化物を食わせる事、この辺だろうか?

 とりあえず再生能力は眼宮個体でも健在であるらしく、ザリチュが隕鉄剣で深々と切り付けているが、平然と再生、走り続けている。


「じゃ、折角だから試してみましょうか。ysion(イシオン)沈黙の邪眼(タルウィセーレ)・3(エクリプス)』」

「ピギッ!?」

 まあ、試練個体と違って歩幅が狭い分だけ脚も遅く、首は狙いやすい。

 と言う訳で、伏呪付きの『沈黙の邪眼・3』を虹亥の竜呪の首に向かって放つ。


「ピギュウゥゥ……」

「これは即死で狩るのが正着手かしらね」

「眼宮レベルでの個体ならそうかもでチュねぇ」

 結果、虹亥の竜呪はあっさりと即死して動きを止めた。

 と言う訳で、ドゴストに死体を放り込んでおく。

 どう控えめに見ても滋養豊かな豚肉なので、今から味が楽しみだ。


「で、虹亥の竜呪を一匹狩ったなら、これでもう撤退でチュか?」

「んー、それでもいいけど、ギミックについては確認しておきたいわね。と言う訳で眼宮の鑑定っと」

 では続けて眼宮の鑑定といこう。



△△△△△

虹霓(こうげい)鏡宮(きょうきゅう)の呪界・虹石の眼宮(ペトロパレス)


限り無き呪いの世界の一角に築かれた虹霓に輝く城。

離宮の一つ、虹石の眼宮、そこは蛋白石(オパール)ばかりの世界であり、踏み行ったものたちも取り込み一つにしようとする世界でもある。

ひしめくは猪と石化の力に満ちた竜の呪いであり、彼らは死せる時まで決して足を止めようとしない。


呪詛濃度:26 呪限無-中層

[座標コード]

▽▽▽▽▽



「うーん、特にこれと言った情報は無い感じねぇ」

「みたいでチュねぇ」

 眼宮の正式名称は虹石の眼宮(ペトロパレス)

 しかし、特にこれと言った情報は無し、と。

 ギミックについては眼宮内を歩き回って探すしかないようだ。


「「「ピギイイィィィ!!」」」

「たす、たす……アアアァァァ!?」

「ジャックが食われたぞぉ!?」

「無限ダッシュとかバグジャネーノ!? バカジャネーノ!?」

「……。空を飛んで探しましょうか」

「まあ、それが妥当でチュね」

 ……。

 いや、歩き回るのは厳しいかもしれない。

 今も私たちの眼下を複数人のプレイヤーが虹亥の竜呪たちに追いかけられる形で通り過ぎていったので。

 うん、素直に地上から離れて探索しよう。

 虹亥の竜呪自体は高さ数メートルくらいなら壁を駆け上がって襲い掛かるくらいは出来そうだが、他のプレイヤーの逃走に巻き込まれないのは大きい。


「あ、これがそうね」

「じゃあこれで目的達成でチュか?」

「そうなるわねー」

 ちなみに虹石の眼宮のギミックはその後直ぐに見つかった。

 どうやら壁や床の割れ目からガスが噴き出して、触れたものに石化(蛋白石(オパール))の状態異常を与えるようだ。

 このガスの面白い所は、ガスが噴き出してから誰も触れずに暫く経つと、ガスそのものが固形化し、アイテムとして回収できるようになる事だろうか。

 なお、凧形二十(トラペゾ)四面体の(ヘドロン)蛋白石(オパール)ではない。

 回収できるのは、呪われてはいるが高品質ではあるオパールなので、誰が回収しても安心である。

 と言う訳で、私たちは虹石の眼宮を後にした。

<< 前へ目次  次へ >>  更新