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58:1stナイトメアプリペア-4

本日一話目です

「では一応私から。私はザリア。異形度は元々3だから、普段もこのままね。と言う感じで自己紹介かしらね。まあ、必要以上の情報は出さなくていいと思うわ。みんな、この後のイベントにも参加するでしょうし」

「だな」

 まず自己紹介したのはザリア。

 どうやらザリアは多肉植物の髪と左肩から生えた数本の棘以外に呪いをかけていないらしい。

 武器は……腰の剣と小さめの盾かな。


「じゃあ俺な。俺はブラクロ。普段はしっかり頭まで黒い狼だ。今は犬耳と尻尾だけだけどな」

「ブラクロ? 貴方が?」

「おう、俺がだ」

 二人目は黒髪の男性、ブラクロ。

 狼男らしい。

 年齢は私と同じくらいのはずだが、どことなく軽薄な感じがする。


「次は私、シロホワですね。私は変わらずです。あ、ブラクロのリアル妹でもあります」

「あら、そうだったの」

「今朝まで気付いてませんでしたけどね」

「俺は気づいてて黙ってたけどなー」

 三人目は白い猫耳と尻尾を生やした女性、シロホワ。

 ブラクロの妹らしい。

 たぶん高校生くらいだろうか。


「オンガだ。まあ、俺はさして特徴は無いか? 姿もそのままだな」

「確かにオンガはそのままだよな」

 四人目は筋骨隆々の男性、オンガ。

 頭から角が生えていて、手にはテーピング。

 年齢は……30代前半くらい?


「私もそのままだな。名前はオクトヘード。ちなみにこれで異形度は2なんだ」

「タコ頭で呪い一つって事なのか。ある意味見た目詐欺だな」

「確かにな」

 五人目はタコ頭の男性、オクトヘード。

 タコ……頭足類と言う事は、もしかして腹に内臓は無い?

 戦う時にはちょっと考えた方がいいかも。


「……。ロックオだ。俺は普段は全身が岩の皮膚で覆われているな」

「そう、貴方がロックオなの。いつもありがとうね。それで、どうにも落ち着かないようだけど……」

「普段と感覚が違い過ぎてどうにもな……」

「ああ、高異形度あるあるですか。私もこっちに来て驚きました」

「賛同していただけてなによりだ」

 六人目は両腕が岩の皮膚で覆われた男性、ロックオ。

 落ち着かない気分になるのはよく分かります。

 私も視界が狭くなって不安な状態なので。


「俺はノーマキと言います。行商人プレイですね。姿は普段と変わらずですわ。あ、自分は戦闘の方のイベントは未参加ですわ」

「悪徳商人の間違いじゃない?」

「ぼったくり商人じゃね?」

「酷いですわー。お得意様ですやん」

 七人目、蜥蜴っぽい手足をした長身の男性、ノーマキ。

 口調に独特のイントネーションがあるが、生粋と言う感じではないので、RP(ロールプレイ)の一環だろうか。

 行商人プレイと言うあたり、生産職……とも、少し違うのかな? 仲買人とか卸売りとかだろうか。


「では、最後に私はタルと言います。ザリアのリアルでの知人ですね。異形度は19なので、今とは……そんなに変わらないかな。普段は傍目には妖精っぽい感じでしょうか」

『チュウウゥゥ……チュアァ!?』

 最後に私が名乗る。

 とりあえず変な鳴き声を上げたザリチュについては、帽子の縁を強く抓る事で制裁しつつ黙らせる。

 普段の私と違い過ぎて色々と言いたいのは分かるが、それでも言っていい事と悪いことがあると言う事だ。

 で、私が名乗った直後……。


「「「異形度19!?」」」

「ッ!?」

「まあ、そうなるわよねー」

 ザリア以外の全員から驚かれた。

 で、その後は先程のザリアと同じような会話になった。

 考えてみれば、この場に居る面々はみんな異形度5以下の普通のプレイヤー。

 そこに異形度16以上と言うのは、場違いに近いのではなかろうか……あ、なんか交流するのが面倒に……。


「はいはい、そこまでにしておきましょう。どんなにタルが珍しいからって、知人に対する失礼を許す気は私には無いわよ」

「お、おう。悪い。ザリア」

「す、すみません。つい」

 と、ザリアが止めてくれたか。

 まあ、止めると言っても、特に積極的に詰め寄って来ていたのは見た目からして若めなブラクロとノーマキの二人だけで、後は最初から一歩引いた感じだったが。

 ロックオさんに至っては一度驚いて復帰した後は、部屋の備品を確認し始めていたし。


「ごめんなさいね。タル。驚かせるような真似をして」

「い、いえ。それにまあ、此処にログイン直後に遭遇した連中に比べれば、まあ……」

「何の話?」

 あ、折角なので、ザリアと合流する前にあった一件について話しておこう。

 あの手のは私だけでなくザリアやシロホワにだって絡んでくるだろうし。

 と言う訳で話したところ。


「なるほど。気を付けた方が良さそうね」

「そうですね。注意した方が良さそうです」

「度しがたいな。ここはそう言う場ではないだろう」

「全くだ。タル君だったか。君は間違ってない。その手のは初動が大事なんだ」

「イラっと来る……」

「ソ、ソウダナー」

「ほう、なるほど……」

 とりあえず女性陣からは賛同を得て、年長者組っぽい方々も理解を得られた。

 ブラクロだけどうしてか目を逸らしているが……まあ、ブラクロだからで済ませてよさそうな感じはある。

 コイツは釘を刺しておけばそれで十分なタイプだ。


「と、私はそろそろ失礼を。挨拶周りにイベント直前の補給を望む人間など、結構な稼ぎ時ですわ」

「分かったわ。部屋は何時でも入れるようにしておくから、上手く活用して」

「おおきにですー」

 と、ここでノーマキが部屋の外に出て行く。

 どうやら行商人らしく稼ぎに出るらしい。


「それで私たちはどうしますか? この場に居る全員がイベントに参加するようですが、イベントまであと三時間ほどありますが」

「そうねぇ……ルールの再確認に掲示板での情報収集をしてもいいし、運営の前座や開会式なんかがあるようだけど……」

「はいはーい。俺としては折角の祭りなので、表に出てみる事を提案したいです。なんか、広場の方でウォーミングアップとして模擬戦とそれの観戦が出来るって話だったし、そこに行ってみるのはどうでしょうか!」

「ほう……」

「へぇ……」

 模擬戦か。

 手の内を晒したくないので私が出るのは無いが、他のプレイヤー同士の戦いなら見てみたいかもしれない。

 一般的なプレイヤーがどういう物で、どの程度の実力なのかとかまるで知らないし。

 なので私は全員の様子を窺っているザリアに賛成の視線を送る。


「そうね。それじゃあ行ってみましょうか。ただ、トラブルが起きたなら、直ぐに退散しましょう。イベント本番前にネガティブな話は御免だから」

「あ、タルには私のマントを貸しておきます。その格好は目立つと思うので」

「ありがとうシロホワ」

「いえいえ」

 そうして私たちは模擬戦が行える広場とやらに行くことになった。

 まあ、シロホワのフード付きマントがあれば、私が目を惹くことは無いだろうし、さっきよりは周囲を落ち着いて見れる事だろう。

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