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55:1stナイトメアプリペア-1

本日二話目です

「さて、まずは称号の変更からね」

 土曜日。

 私がまずするのは称号の変更だ。

 今の表示称号である『呪限無の落とし子』は初期異形度16以上で得られる称号であるため、この称号を持っている時点で交流エリアでの姿がどれだけ普通の人間っぽくても実際の姿は人間離れしたものである事が分かってしまう。

 それが原因でトラブルになるとは限らないが、無難な称号に変えてく事で避けられるトラブルと言うのもあるだろう。

 そう言う意味で言えば……『呪術初習得』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、この辺りも表には出さない方が無難か。

 特に『ダンジョンの支配者』とか見られたら嫌な予感しかしない。


「んー……」

 また、イベントのPvPにおいては、戦闘スタイルの秘匿と言うのは重要な案件だろう。

 最終的にはバレるにしても、称号によって自分から喧伝する意味はない。

 なので、『毒使い』、『かくれんぼ・1』辺りも出さない方がいい。

 それと、一部の称号……『暴飲暴食・2』なんかは単純に出したくないです、はい。


「これでよし」

 と言う訳で、半分くらいは消去法だが、称号を『呪限無の落とし子』から『蛮勇の呪い人』に変更。

 この称号ならば高レベルアイテムを使おうとしただけで得られるはずなので、所有者も多いだろうし、出していてもそんなに恥ずかしい称号でもない。

 これならば誰かに見られてもトラブルにはならないだろう。


『チュウ?』

「重要よ。本気で未知の戦いに挑むのなら、準備段階から戦いは始まっているも同然だもの」

 まあ、今の時点で此処まで気にしているのが少数派である事は間違いないだろう。

 しかし、戦いにおいて相手から見て私の未知を増やしておく事は悪い事ではない。

 未知に気が付かず猛進してくれるなら返り討ちにするのみ、未知に気が付くも臆するならばそれを利用する、未知に気が付き尚挑むならば……私は笑顔で歓迎して、捻じ伏せるのだ。

 ああ、想像するだけでも、とても楽しい光景で、思わず笑みが零れてしまう。


『チュ……チュウゥゥ……』

「と、いけないいけない。他にもやる事があるんだったわ」

 私はイベントに持ち込むアイテムを種類別にまとめておく。

 まず、交流の方で交換対象として出す予定のアイテム。

 交換の仕様が、運営判断で同価値と認められた物同士で交換する事になっているので、貴重品が欲しいならば相応の価値を有するアイテムをこちらも出す必要がある。

 ただ、よく調べてみると、袋なり紐なりを利用すれば、複数のアイテムをまとめて一つのアイテムとして出品できるようだった。

 これも利用してだ。


「えーと……これでいいかしらね」

 ほぼ傷も汚れもない毒噛みネズミの毛皮を単品で3枚。

 毒噛みネズミの全身の骨一式を3セット。

 垂れ肉華シダの葉12枚……1ダースを短い蔓でまとめた物を3セット。

 約2メートルの長さの垂れ肉華シダの蔓12本……1ダースが1セット。

 計10個のアイテムを出品する。

 特に最後の垂れ肉華シダの蔓の束は目玉として、良いアイテムと交換できるのではないかと思っている。

 ダンジョンの中で使うのであれば、生半可なロープとは比べ物にならない程強靭な蔓であるし。


「ふふっ、楽しみね」

 ちなみに交換が成立するのはPvPイベント終了後。

 これは交換で手に入れたアイテムをPvPで、対策アイテムあるいは急な成長要素として活用されるのではないかと言う不安からアイテムの出し渋りが発生する可能性を、運営が見たためのようだ。

 うん、正しい判断だと思う。

 深く考えないプレイヤーも多そうだが、私のように深く考えるプレイヤーは必ず居るし、他プレイヤーが入手しづらいアイテムを交換に出してもらいたいなら、間口は出来るだけ広くした方がいい。


「後はPvPで使うアイテムの方ね」

 PvPで使うアイテムについては、色々とある。

 とりあえず垂れ肉華シダの葉団子についてはたっぷり50個ほど作っておいた。

 使わずに済むならそれに越したことは無いのだが、たぶん使う事になる。

 この辺りを想定しているユーザーがどの程度居るのかは分からないが、想定していなかったユーザーは……たぶん詰むか、そう言う行動を取らざるを得なくなるだろう。


「これ、上手く使えるといいんだけど……まあ、試してみるしかないか」

 それと、使い捨ての攻撃アイテムも幾つか作ってあって、こちらは毛皮袋に入れておく。

 私の毛皮袋にはゲーム内時間で24時間以上入れておくと、中に入れたアイテムが消滅してしまうというデメリットが存在するのだが、この後に行うPvP参加登録を行ってから、イベント終了後に初めてログインするまでの間はゲーム内の時間経過で発生するあらゆる効果が停止されるらしいので、それでアイテム消滅は免れることが出来るはずである。

 なお、イベント中に使用したり破損したアイテムは、イベント終了後に全て元通りになって戻って来るとのこと。

 安心して使えそうで何よりである。


「財満さん……ザリアとの合流についても打ち合わせ済み。うん、大丈夫そうね」

 ザリアとの合流についても問題は無し。

 具体的にはフレンドコードを事前に登録しあって、当日にフレンド機能を利用し、交流エリアで目立つランドマークで合流する予定である。

 ザリアのゲーム内での友人も紹介してくれるとの事だそうだ。


「よし、登録!」

≪タルはイベント『聖女が想う(呪う)悪夢の宴』にPvP参加者として登録されました≫

≪残り時間が僅かであるため、イベント開始まではログイン出来なくなります≫

≪ログアウト処理を開始します≫

 そうして私のイベントは始まる事となった。

04/02誤字訂正

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