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33:プロセスファーン-1

「ログインっと。さて、早速作るべき物から順番に作っていきましょうか」

『チュッチュウ』

 そもそもの話として、私は何故武器を作る必要があるのか。

 それは『毒の魔眼・1+(タルウィベーノ)』に対応できない相手に対処するためだ。

 では、対応できない相手とは?


「持ち手の基本はこの前のアンテナで良いから、不要な部分は取り除いてっと」

 一つは毒の状態異常が通用しない相手。

 そう言う相手なら正着手は逃走だが、必ずしも逃げられる状況で遭遇するとは限らないので、戦う場合は考えておくべきだろう。


「垂れ肉華シダの蔓を編んで縄にして……」

 一つは相手の数が多すぎる場合。

 相手の数が6ぐらいまでならまだしも、相手の数が100や200となったら、一体一体にかける事になる『毒の魔眼・1+』では対処不可能だと言っていい。

 こちらも最適なのは逃げだが、そうでなければ範囲攻撃手段が欲しい。


「あ、折角だから上顎と下顎は別々に使っておいて」

 一つは毒の効果が表れるよりも早く仕掛けて来る、所謂速攻系。

 私の毒は総ダメージ量や継続性は十分だが、瞬間的なダメージは控えめだし、重症化しなければ足止めも難しいので、毒が積み重なるよりも早く接近されてしまうのはよろしくない。

 まあ、これも一番良いのは、やはり逃げてしまう事なのだが、それが無理なら容易な接近を許さない牽制くらいはしたい。


「む、案外難しいわね。長さは長すぎても短すぎても良くないし……うーん、呪った後に調整をするのは難しいわよね」

 では、これらの条件をまとめて満たした上に、空中浮遊の呪いを有する私でも扱える武器と言うのはどんな物なのか。

 リアルにて色々と武器を調べて、結論として出した武器が現在制作中のこれである。


「よし、一応出来たわね」

 と言う訳で、私は自分の前に置かれているそれを改めて見る。

 持つ部分は長さ1メートルほどの金属製の棒で、先端には毒吐きネズミの下顎骨が結びつけてある。

 同時に棒の先端に長さ1メートルほどの垂れ肉華シダの蔓の端も結び付けておく。

 そして、垂れ肉華シダのもう一つの端にもとある物……毒吐きネズミの上顎骨と言うか頭蓋骨に加工を施した物で、目の部分から毒噛みネズミの前歯が飛び出ていると共に、内側に重りとして毛皮で包んだ大量の前歯を貼り付けた物を結び付けておく。

 なお、折角なので毒吐きネズミの二つの骨は上手く乗せれば噛み合って、一体化しているように見せる事も可能にしておく。


「さて、此処からどう呪うかなのよね」

 出来上がった武器の外見を一言で述べるならばフレイル。

 穀物(グレイル)と呼ばれる打撃部と持ち手を紐や鎖で繋ぎ、不規則な挙動と遠心力によって防がれづらいと共に強力な一撃を叩き込める武器だ。

 扱いは難しいとされるが、元々マトモな武器をマトモに扱えない体である私だ。

 知識として持っている既存の武器の使い方に引っ張られず、一から構築していける方が都合がいいだろう。


「ま、素直に強度上昇でいいか」

『チュー』

 私は出来上がったフレイルを呪怨台に乗せる。

 すると呪怨台は仕様通りに赤と黒と紫の霧でフレイルを包み込み始める。


「金属製の武器に負けないくらい強固になりますように……」

 私はいつも通りに13の瞳で見つめつつ、呪いの方向性を定めるように呟く。


「毒は要らない。あると扱いが難しそうだし」

 イメージするのは完成形。


「壊れないようにー、壊れないようにー」

 不必要な物を削ぎ落し、必要な物を詰め込んだ武器。


「出来た」

 そうして霧が晴れていき、蔓の結び目などが消失して、全てのパーツがきちんと一体化した一本のフレイルだった。

 と言う訳で、早速鑑定をしてみる。



△△△△△

鼠のフレイル

レベル:5

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:5


鼠の頭蓋骨を打撃部に持ったフレイル。

周囲の呪詛濃度に応じて強度が上昇する。

心なしか使い手の意図した通りに動きやすくなっている。

▽▽▽▽▽



「よし、デメリットなし」

 私は鼠のフレイルを両手で持つと、軽くその場で振るってみる。

 うん、反動で体が動くせいで扱いづらい。

 なので、セーフティーエリアの外に移動して、それなりに広いオフィスの方で試してみる。


「じゃあ、まずは軽く……」

 私は勢い良く床を蹴る事で回転を得つつ飛び出すと、背中の翅によって回転を加速。

 増えた目によって激しい回転の中でもターゲットをきちんと見据え……回転の勢いそのままに打撃部をターゲットに叩きつける!


「チュ……ガ……」

「よし、問題なさそうね」

 打撃部はターゲットである毒噛みネズミの後頭部を直撃。

 毒噛みネズミの頭部は勢い良く凹み、そのまま絶命した。

 とりあえずの動作確認はこれで終了。

 予想通りに癖は強そうだが、十分な武器にはなったようだ。


「さて、それじゃあ次に取り掛かるべきね」

 私は死体が風化した後に残った毒噛みネズミの前歯を回収すると、セーフティーエリアに戻る。


「まずは……『毒の魔眼・1+(タルウィベーノ)』」

 セーフティーエリアに戻った私は『毒の魔眼・1+』を部屋の天井から床へと蔓を伸ばし、その先端に蕾を付けている垂れ肉華シダに向けて放つ。

 すると暫くして蔓は根元から千切れて、その場に落ちる。


「解体解体っと」

 続けてトゥースナイフで解体。

 葉は蔓との境目で切断して回収。

 蕾も蔓との境目で切断しようとしたが……かなり堅かった。

 だが、時間はかかったものの、何とか回収には成功。

 とりあえず鑑定してみる。



△△△△△

垂れ肉華シダの蕾

レベル:1

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:5


垂れ肉華シダの蔓の先端に生じる花の蕾。

周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する性質を有する。

良い香りはするが、蔓や苔から切り離されたため、これ以上成長して開花することは無い。

▽▽▽▽▽



「ふうん、蕾の使い勝手はあまり良くなさそうね」

 この分だと呪詛濃度が高い空間で敵に投げつける石と言うかボールの代わりくらいが良い所だろうか。

 呪詛濃度が低い空間に行けるならば、強度が下がった事で霜降り肉のような組織を剥がして、色々と使えるのかもしれないが……私にそれは無理だろう。


「とりあえず次は花が咲いてから回収しましょうか」

 セーフティーエリアでは面積か栄養が足りないのか、そもそもの成長が足りていないのかは分からないが、垂れ肉華シダは一本の蔓しか天井から下ろす気は無いらしい。

 となれば、花が回収できるのは明日以降だろう。

 なお、垂れ肉華シダが成長の為に周囲の呪詛を吸っても、呪詛濃度が下がることは無いようだ。

 これはゲーム的な都合もありそうだが、それ以上に呪詛がそれだけこの世界に満ちていると言う事でもあるのかもしれない。


「さて、葉っぱの加工を始めましょうか」

 私は余っている毒噛みネズミの頭蓋骨と適当な大きさの骨を手に取ると、垂れ肉華シダの葉を手で千切りつつ頭蓋骨の中に放り込んだ。

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