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291:ザリチュリインフォース-3

「鑑定っと」

「ーーー……」

 私は熱拍の変異樹呪に向けて素早く『鑑定のルーペ』を向けて鑑定する。

 すると熱拍の変異樹呪は全ての目で私を睨みつけて来て、それに合わせて私の体を何かが通過したような気配があった。

 恐らくは鑑定へのカウンターだろう、人間ではない私には効果がなかったが。

 で、肝心の鑑定結果は……



△△△△△

熱拍の変異樹呪 レベル17

HP:6,833/6,833

有効:なし

耐性:灼熱、沈黙、出血、乾燥

▽▽▽▽▽



「前回とはだいぶ違うわね。当たり前だけど」

 与えたダメージと状態異常は消えている。

 耐性については予定通り。

 それにしても最大HPの減りがとんでもない、それだけ被害が大きかったのだろうけど。


「ーーー……」

『来るでチュよ! たるうぃ!』

 私の姿を模した熱拍の変異樹呪は右手から炎を、左手から風のようなものを吹き出し、二つを重ね合わせ、強烈な炎の剣……いや、柱のようにして叩きつけようとしてくる。

 なるほど、私対策としては正しい。

 避けられない速さと範囲での攻撃は私が対処できないものだ。


「せいっ!」

「ーーー!?」

 が、今の私には熱拍の樹呪の葉マントがある。

 私は見た目以上に重量がある葉マントを翻して、熱拍の変異樹呪の炎に当てる。

 それだけで熱拍の変異樹呪の炎は反射され、放った当人へと返っていく。

 まあ、炎に耐性がある熱拍の変異樹呪に炎を返しても、大したダメージにはならない。

 ダメージにはならないが、隙は出来る。


etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』」

「ーーー!?」

 だから、その隙を狙って、私は『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』と『呪法(アドン)破壊星(ミーティア)』を乗せた『毒の邪眼・2』を撃ち込む。

 深緑色の光と共に与えた状態異常は毒(731)。


「ーーー!」

「させないわよ」

 熱拍の変異樹呪が自分の胸に手を当てて何かをしようとした。

 この状況ですることなど、毒の回復に決まっている。

 なので私は『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』を撃ち込んで、それを阻止する。


『容赦ないでチュねぇ……』

「当たり前でしょ」

 私は気絶によって一瞬ふらついた熱拍の変異樹呪に向かって急降下を開始。


「ーーーーー!」

 熱拍の変異樹呪は気絶から復帰すると、全身についている目から、熱線を放つ。

 放たれた時点で着弾しているその攻撃は葉マントで防ぐことは叶わない。

 だが、その威力は最初の攻撃よりも、それどころか炎視の目玉呪の熱線と比べても弱く、急所への被弾さえ抑えれば、装備の耐性だけで十分防げるものだった。

 だから私は意に介した様子も見せずに、全ての目を私に向けている熱拍の変異樹呪の死角に呪詛の剣を生み出しつつ、接近。


「『暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』」

「ーーーーー!?」

 そうして距離が5メートルを切ったところで、熱拍の変異樹呪の13の目の死角から、12の目に向けて呪詛の剣を突き出して刺し、刺さった瞬間に『暗闇の邪眼・2』を撃ち込む。

 熱拍の変異樹呪の12の目が暗闇に包まれ、距離が近い場所にあったので直接『暗闇の邪眼・2』を受けなかった目も暗闇に包まれた。

 与えた暗闇の量は725。

 そして、それ以上にダメージが入っている。


「せいっ!」

「!?」

 そこから降下の勢いを乗せた追撃の蹴りを顔に叩きこむ。

 ダメージは殆どないと言うか、むしろ私の方が喰らっている気がするが、ダメージ以上の効果はあった。

 何せ今の熱拍の変異樹呪の視界は暗闇に包まれているのだ。

 おまけに此処は空中で、熱拍の変異樹呪の体は誰かに支えられているわけではない。


「ーーーーー!?」

 そんな状態で頭部へ蹴りを食らったら、激しく回転し、前後不覚どころではない状態になる。

 こうなってしまえば、私対策をどれだけ体に施していようが、もはや意味はない。

 加えて、そんな状態でも毒によるダメージは続くのだから……。


「……!?」

「はい、お終いっと」

『うーん、案外簡単に片付いたでチュね』

 熱拍の変異樹呪が倒れるのは時間の問題でしかなかった。


「回収も成功っと」

 と言うわけで、予定よりだいぶ小さくなってしまったが、熱拍の変異樹呪の死体を回収する事に成功した。


≪タルのレベルが22に上がった≫

≪称号『出血の名手』、『出血の達人』を獲得しました≫

「あ、流石にレベルが上がった……オウフ」

『称号も来ているでチュね。しかもすっ飛ばしで』

 とりあえず確認するべき事を確認しようか……。



△△△△△

『虹瞳の不老不死呪』・タル レベル22

HP:782/1,210

満腹度:72/150

干渉力:121

異形度:20

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す(ダマーヴァンド)

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血の達人』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『暗闇使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・2(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・2(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』、『淀縛の邪眼・1(タルウィボンド)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『飢渇の邪眼・1(タルウィハング)』、『暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)

呪法:

呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』、『呪法(アドン)感染蔓(スプレッド)』、『呪法(アドン)貫通槍(ピアース)』、『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』、『呪法(アドン)破壊星(ミーティア)


所持アイテム:

呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『鼠の奇帽』ザリチュ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡etc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール設置


呪怨台

呪怨台弐式・呪術の枝

▽▽▽▽▽


△△△△△

『暗闇使い』

効果:暗闇の付与確率上昇(微増)

条件:暗闇(100)以上を与え、暗闇の効果が残っている間に生物を殺害する。


私の暗闇の力を見るがいい。

▽▽▽▽▽


△△△△△

『出血の達人』

効果:出血の付与確率上昇(中)

条件:出血(50,000)以上を与え、出血による与ダメージが相手の最大HPの50%以上で倒す。


ああ、血の霧が出来上がる。血の雨が降り注ぐ。実に素晴らしい光景であると思わないかね。

実に素晴らしい光景だ。

きっとこれ以上の光景なんて無いに違いない。

▽▽▽▽▽




「……」

 ちょっと前に手に入れた『暗闇使い』はテンプレ称号だからいいとしてだ。

 『出血の達人』、これは……やらかした。

 『出血の名手』を見逃してしまった。

 完全にやらかした。

 また運営に要望を送るしかない。


『今更でチュけど、出血って相手のスタック値に応じて付与が難しくなる状態異常の仕様が出づらいんでチュかね?』

「かもしれないわねー。出血の特性上、本来はひたすらに相手に攻撃をせずに、貯めて行く事になるわけだしー、多少は貯めるのが楽になっていてもおかしくはないわねー……」

 ザリチュの意見はたぶん正しい。

 普通はここまで貯めようと思って貯められるものでもないだろうから。


「はぁ。とりあえず目的は達したし、帰りましょう。いえ、むしろこれからが本番ね。全力を尽くすから、しっかり指示して頂戴。ザリチュ」

『うんまあ、分かったでチュよ。たるうぃ』

 目的は果たしたので、良しとしよう。

 私はそんなことを思いつつ、『熱樹渇泥の呪界』から脱出した。


「……。次はまあ、見逃したくても見逃さないでしょ」

 ああそれとだ。

 状態異常称号には達人の上がまだあると思う。

 だって、5万程度の出血では、カースのような桁違いの存在は殺しきれないのだから。

 きっと50万辺りにも、もしかしたら500万辺りでも何かがあるに違いない。

 私はこの程度で満足するつもりはない。

10/16誤字訂正

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