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285:セパレートヒート-1

本日一話目です

「あ、ストラスさんたちが第四階層に入ってる」

『どうするんでチュか?』

「んー……放置で。破壊活動をしているわけじゃないし」

 『ダマーヴァンド』に戻ってくると、『ダマーヴァンド』内で活動しているプレイヤーの気配が伝わって来た。

 死に戻りしたのか、脱出したのかは分からないが、プレイヤーの数は多少減っている。

 で、ストラスさんとドージを含む彼らは第四階層を探索していて、『ダマーヴァンド』の植物の採取を行っているようだ。

 一番喜んでいるのは……やはりこれまでは回収できなかった小人の樹関係の素材か。


『会わなくていいんでチュか? 向こうは色々と聞きたがっていると思うでチュよ』

「教えられないことが多いし、私がカースになったことは出来るだけ秘匿したいのよね。出来ればイベントまでは隠したいわね」

『そうでチュか』

「あ、緊急要件用にポストくらいは置いておきましょうか。まあ、メッセージ機能で十分だし、雰囲気つくりにしかならないけど」

『それは止めておいた方がいいと思うでチュ』

「そう? なら止めておくわ」

 第四階層にセーフティエリアは……一つだけあるか。

 なら今後は『ダマーヴァンド』を拠点として、砂漠と火山に向かうプレイヤーも僅かに出て来るかもしれない。

 そうなれば、DCの収入的には美味しいことになりそうだ。

 なお、僅かと言ったのは、『ダマーヴァンド』には一部のアイテムを使い物にならなくする呪いが蔓延しているからである。


「さて、そろそろ今回の戦利品の回収と行きましょうか」

『でっチュねー』

 私は解体場に移動すると、毛皮袋の中から熱拍の樹呪の樹皮と葉、それに炎視の目玉呪の死体を取り出す。

 そして炎視の目玉呪の死体を解体して、蛇皮、蛇牙、毒腺、水晶体、ゼラチンの回収に成功した。

 量については水晶体以外はいずれもそれなりにある。

 では鑑定である。



△△△△△

熱拍の樹呪の樹皮

レベル:25

耐久度:100/100

干渉力:130

浸食率:100/100

異形度:14


熱拍の樹呪から採取できる白、赤、黄が入り混じった樹皮。

熱と乾燥に対して極めて高い耐性を有する。

繊維が硬く、加工には適さない。

▽▽▽▽▽


△△△△△

熱拍の樹呪の葉

レベル:23

耐久度:100/100

干渉力:125

浸食率:100/100

異形度:15


熱拍の樹呪から採取できる葉。

熱に対して極めて高い耐性を有する。

熱を利用して自身の強化を行うことが出来る他、強化に利用できない熱を葉の表から逃がす事によって自身の身を守る事も可能。

完成された火炎耐性を有するが故に、加工が入るほどに、耐性は下がっていく。

▽▽▽▽▽


△△△△△

炎視の目玉呪の蛇皮

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:15


炎視の目玉呪の蛇から取れた美しい皮。

熱と光を表から裏へと通すが、裏から表へは通さない。

▽▽▽▽▽


△△△△△

炎視の目玉呪の蛇牙

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:15


炎視の目玉呪の蛇から取れた鋭い牙。

効率的に熱を伝える事が出来る材質と構造になっている。

与ダメージ時:ダメージの火炎属性化、灼熱(与ダメージの30%)

▽▽▽▽▽


△△△△△

炎視の目玉呪の毒腺

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:15


炎視の目玉呪の蛇から取れた黒い毒腺。

中には空気と反応して気化、黒煙として展開、触れたものにまとわりついて内外からの光を遮りつつ、触れたものに火傷を負わせる液体が詰まっている。

▽▽▽▽▽


△△△△△

炎視の目玉呪の水晶体

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:15


炎視の目玉呪の目玉から取れた大きな水晶体。

熱と光を束ねて熱線とする呪いが込められている。

▽▽▽▽▽


△△△△△

炎視の目玉呪のゼラチン

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:105

浸食率:100/100

異形度:19


炎視の目玉呪の目玉から取れたプルプルする物体。

熱と呪詛を取り込んで、自分の生存に必要な物質を作り出す能力を持っている。

カースの肉は呪いの塊と言ってもいい、こんなものを食べても大丈夫なのは、同じカースくらいだろう。

注意:食べると5%の確率でランダムな呪いを恒常的に得て、異形度が1上昇します。

▽▽▽▽▽



「樹皮は駄目ね。これなら熱拍の幼樹呪でいいわ」

『葉の方は最低限の加工だけ済ませる事で、耐火炎、対灼熱装備に出来そうでチュかね』

「大きさを整えるのと、糸でつなぎ合わせる事、呪怨台で呪うのも加工になるなら三工程は必須ね」

『まあ、試してみるしかないでチュね』

 熱拍の樹呪の樹皮は論外なので、焼いて灰にした上で処理ツールに投入、処分しておく。

 葉については、やはりあの球体を得るのに使えそうである。

 それと炎視の目玉呪をまた倒す時にも活躍すると思う。

 ただ、加工はかなり難しそうだ。


「蛇皮はマジックミラーのような感じね」

『不思議でチュねぇ』

 蛇皮は表から見ると普通の蛇の皮だが、裏から見ると、その先の光景が透過されて普通に見える。

 ちなみに邪眼術も裏から表に通す形なら問題なく透過するようなので、これで手足の目玉を隠すのはありなのかもしれない。


「牙と水晶体は『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』の強化に使えるわね」

『牙を短剣にはしないんでチュか?』

「しないわね。それをするなら細工道具の強化に回すわ」

『水晶体で望遠鏡、鑑定のルーペの強化も出来ると思うでチュが?』

「だとしてもそれは後回しね」

 牙と水晶体の使い道は多いだろう。

 多いだろうが、まずは『灼熱の邪眼・1』に回そう。


「毒腺……ちょっと保留で」

『これも使い道は多そうでチュよねぇ』

 毒腺は……そのまま使ってもいいし、『灼熱の邪眼・1』に回せるなら回してしまうのもありか。

 いや、光を遮る性質をメインに取り出せば、新たな邪眼に繋がる可能性もあるか。

 今回一番の当たりかもしれない。


『ゼラチンは……』

「『毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』」

『あ、そういう素材だったんでチュね』

 と、ここでゼラチンが周囲の呪詛と熱を吸収し始めたようだったので、『毒の邪眼・2』で改めて毒殺しておく。

 そして短剣でも切り刻むと、『飢渇の邪眼・1(タルウィハング)』によって徹底的に乾燥。

 ここまでしたところで、熱と呪詛を取り込んで復活する性質が破壊されて機能停止となったようだ。

 うーん、焼却処分が出来ないと言う点では、今回一番面倒くさい素材かもしれなかった。

 使い道については……まあ、ゼラチンなのだし、幾らでもあるか。


「えーと、呪怨台に乗せてっと」

 だがどう使うにしても、このまま保存するのは危ない。

 なので、私は呪怨台に乗せると、風化の呪いを中心に呪う事で、異形度上昇効果や復活能力の呪いを取り除き、出自がカースだけで危険性はないゼラチンへと変えた。

 具体的にはこんな感じである。



△△△△△

炎視の目玉呪の乾燥ゼラチン

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:105

浸食率:100/100

異形度:19


炎視の目玉呪の目玉から取れたゼラチンを加工したもの。

使用する際には適度な水分を与える事で弾力を取り戻す。

危険性は一切ないので、元がカースであるとわざわざ言わなければ、誰も正体に気づくことはないだろう。

▽▽▽▽▽



「さて、それじゃあ、後は『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』の強化をしたら、今日のところは終わりね」

『分かったでチュ』

 私は必要な材料を集め始めた。

 今回は……うん、折角だし、ゼリーで行こうか。

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