279:サウスウエスト-2
本日一話目です
「あははははっ! 素晴らしいわぁ! これぞ正に未知! 世界が変わり、未知が生み出されているわぁ!!」
私は歓喜の声を上げつつ、『ダマーヴァンド』の調整を素早く進めていく。
つまり、ダンジョンの核である邪眼妖精の毒杯、アジ・ダハーカの居場所に通じる縦穴、呪限無の石門と言う余人には決して触れてほしくない三つを第三階層から切り離し、第五階層として私の足下にある山の中へと移動させる。
そうして作られた第五階層に、これまでの第三階層と同じようにセーフティエリアに繋がる結界扉、『ダマーヴァンド』産の植物が一通り回収できる農場、解体場を作成。
「新たなるダンジョンを! プレイヤーが! GMに知らせる必要もなく! 作り出すことが出来る!! こんな素晴らしい経験をさせてもらえるなんて、感動以外の何物でもないわ!!」
そんな第五階層に繋がる入り口そのものは第四階層にある。
が、その入り口には深い穴と毒の滝を設置して、最低でも私並みの飛行能力を持っていないと通れないようにしておく。
「ああ、惜しむらくは秘匿しなければいけないことが多すぎる事かしら。場所、道具、呪術、あまりにも秘匿するべきことが多くて、誰にも語る事が許されないのかが悲しいわぁ……」
ついでに『ダマーヴァンド』産の植物の中でも、斑豆と飢渇芋については生育区域を限定。
第五階層でしか育たないようにしておく。
これで、外に漏れる事はなくなった。
『心にもない事を言っているでチュね』
「あら? そうかしら?」
『そうでチュよ。たるうぃは今回の件、最初から結果を言う気は有っても、過程を教える気はないじゃないでチュか。知った人間次第では取り返しのつかないことになるから。それを分かっているから、悲しいなんてまるで思ってないじゃないでチュか』
「……。ま、そうだけどね」
さらに操作を進めていく。
これまで『ダマーヴァンド』にかけていた侵入制限を全面解除。
第三階層から第四階層に繋がる穴に
毒液と呪詛の流れを弄って、これまでの『ダマーヴァンド』にもきちんと毒液と呪詛が流れ、維持されるようにする。
「これでよし」
『後、他プレイヤーに対する支援も結構しているでチュよねぇ。今だって、これまでの『ダマーヴァンド』は残したままでチュし』
「別にいいじゃない。誰も困るわけじゃないし」
おっと、気が付けば山の高さは500メートル近くにまでなっている。
同時に、第四階層と周りのエリアの間に緩衝区域が作られて、毒、熱、乾燥が荒れ狂う事でモンスターが行き来出来ないようになっている。
これは周囲との調整でダンジョンの側が勝手にやってくれたようだ。
とりあえずこれで『ダマーヴァンド』の調整は完了。
何かが起きても、直ぐには大惨事にならず、解決する暇が得られる空間を私は得られた。
『で、これからどうするでチュ?』
「色々とやりたいことはあるけど……まずは今さっき得た物の確認ね」
『まあ、そうでチュよね』
私は自分に『鑑定のルーペ』を用いて、新しい呪法に名前を付けた。
△△△△△
『蛮勇の呪い人』・タル レベル20
HP:1,180/1,190
満腹度:128/150
干渉力:119
異形度:19
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』
呪術・邪眼術:
『
呪法:
『
所持アイテム:
呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『鼠の奇帽』ザリチュ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
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『ダンジョンの創造主』
効果:自分の創造したダンジョン内において有利な効果を得る(調整可能)、自分の創造したダンジョンの呪詛に対する支配力が増す(中)
条件:ダンジョンを生み出す
おお、なんと悍ましき事か。呪いを統べる迷宮を自らの手で生み出すとは。 汝に呪いあれ!!
▽▽▽▽▽
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『呪いを支配するもの』
効果:大気中の呪詛を支配し、自在に操る
条件:特定干渉領域に存在する大気中の呪詛を一定量以上操る
誰のものでもない呪いすら扱えない者はもはや私の敵ではない。私は呪いを支配するものである。
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△△△△△
効果:邪眼術発動前に、言葉を伴って呪詛に干渉することで、発動した邪眼術の性能が向上する。
条件1:発する言葉は発動する邪眼術に相応しいものである事。
条件2:発動する邪眼術は詠唱キーによって発動する事。
正しき言葉、虚を突く言葉、呪いの言葉。発するべき言葉を研究する事で邪眼の輝きは増していく。
注意:1音につきHPを1消費する。
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「『ダンジョンの創造主』、『呪いを支配するもの』はまあ、どうでもいいとして」
この二つについては今までの称号の上位互換でしかない。
『ダマーヴァンド』内で格下相手に負ける事がほぼなくなったぐらいだろう。
「方違詠唱。いい性能しているわぁ」
『ちなみに名前の由来は何でチュ?』
「陰陽術の方違えの概念ね。相手だって呪術に対しては備えを置いているはず。それを正面から打ち破るよりも、後ろから刺した方がらしいでしょう?」
『なるほどでチュねぇ』
『呪法・方違詠唱』の性能はかなりいいだろう。
相応しい言葉については自分で研究して、導き出す必要はある。
だが、一度相応しい言葉を見出すことが出来れば、チャージ時間中の暇な時間を利用して発動、僅かな消費で邪眼術を強化することが出来るのだから。
『ところでたるうぃ、この方違詠唱、『禁忌・
「んー……たぶん可能だと思うわよ。そもそも『
正確な数え方はまだ不明だが、『禁忌・虹色の狂眼』は44音程度。
元の消費HP量を考えれば、44ぐらいは誤差の範疇だろう。
「さて、午前中の活動はこの辺にしておきましょうか」
『午後は何をやるでチュ?』
「そうね……今まで後回しにしていたことを一つやろうと思うわ」
私は『ダマーヴァンド』とその周囲が安定していることを確かめると、ログアウトした。
10/09誤字訂正
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