270:イントゥサースト-4
『呪法。でチュか』
「……」
私が選んだのは新たな呪法を作り出し、その効果によって喉枯れの縛蔓呪の耐性を無理やりにでも抜いて、状態異常を与える方法。
そう、とにかく確実に状態異常を与える事だけを優先するのだ。
精神を有さないために気絶や恐怖が入らない相手であっても、肉の体を持たないために毒が入らない相手であっても、その状態異常の効果によってもたらされる結果を生み出すような攻撃をするのだ。
『これはまた……呪詛の霧が螺旋を描いて……ヤバいものが出来そうでチュね』
つまり、毒ならば酸によって削り取ったり、生命力を直接奪い取るような形に。
灼熱ならば生命力の回復を阻害するように。
気絶ならば強制的な行動停止。
沈黙ならば空気の動きに限定した阻害。
出血ならば物体の強制移動による破壊。
恐怖ならば呪術の組み立ての阻害と、身体の震え。
他の状態異常でも、結果的に同じ効果を与えるように変換する。
『円錐……いや、
これは不可能な事ではない。
『
だからこれは、それの類似系に過ぎない。
相手が何ものであろうとも、その核に邪眼術の呪いを撃ち込んで、効果を発揮させる。
そう、これは耐性貫通の呪法であると同時に、変換の呪法であり、魂を刺し貫くための呪法である。
「……」
そうして生み出されたのは、円錐の底に細い棒のような持ち手が付けられた呪詛の槍。
ライトリの使う
『チュッ!? また大波が迫っているでチュよ!? てか、高さもいつの間にか12メートルくらいでチュ!?』
私は呪詛の槍の先端を、いっこうに引く力を弱らせる気配のない喉枯れの縛蔓呪の根元に向ける。
そして射出。
呪詛の槍は勢いよく飛んでいき、喉枯れの縛蔓呪に刺さり、その瞬間に私は『恐怖の邪眼・3』を発動した。
「……」
『チュアッ!?』
飢渇の泥呪の海から紫色の光が広がる。
ただし、『
で、肝心の結果は……恐怖(186)。
無事に耐性を抜くことが出来た様だ。
『拘束が緩んだでチュよ! 急ぐでチュ! たるうぃ!!』
「……!」
恐怖の重症化によって喉枯れの縛蔓呪の拘束は緩んでいた。
いや、マトモに力が入らなくなっていると言うべきか?
とにかく沈黙と脚部干渉力低下のスタック値が貯まるのは停止しているし、こちらを引っ張る力も弱まっている。
それどころか、私が大波を避けるべく飛び上がったら、飢渇の泥呪の中にあったらしい球根のような本体ごと持ち上げることが出来てしまった。
『ふぅ、何とか生還でチュね。あ、このまま一度、海の外に出るんでチュね』
「……」
私は喉枯れの縛蔓呪を巻き上げつつ、飢渇の泥呪が飛んでこない位置にまで飛んでいく。
そして、飢渇の泥呪に触れる事を恐れて、毒頭尾の蜻蛉呪が近づいてこない、比較的安全な場所でホバリングする。
流石にこの状態でもう一戦は避けたかったからだ。
『あ、死んだみたいでチュね』
≪タルのレベルが20に上がった≫
≪呪術『呪法・○○』を習得しました。名称を付けて有効化してください≫
喉枯れの縛蔓呪のHPが尽きたらしい。
レベルアップすると同時に、呪法の習得アナウンスが入った。
呪法の名称は……『
自分でやっておいてなんだが、効果変換はあまり効率が良くないようなので、名前のメインにしておかない方がいいだろう。
では、満腹度の回復をしつつ、性能確認といこう。
△△△△△
『蛮勇の呪い人』・タル レベル20
HP:822/1,190
満腹度:20/110
干渉力:119
異形度:19
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・2』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・1』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』
呪術・邪眼術:
『
呪法:
『
所持アイテム:
呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、ポーションケトル、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡、熱拍の幼樹呪の外套、熱拍の幼樹呪の口布etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
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効果:呪詛を固めた槍の速さ、直進運動を行った距離、進行方向に対して垂直な方向で行われた回転運動の速さ、条件を満たして発動した邪眼の数に応じて、発動した邪眼術の耐性貫通能力が向上する。
術者が意識すれば、効果が大幅に弱まる代わりに、本来はほぼ効果がない状態異常を入れる事も可能となる。
条件1:呪詛を固めた槍が出現から3秒以上経過している事。
条件2:呪詛を固めた槍と邪眼対象の体が重なっていて、重なった場所を邪眼術の発動点とする事。
条件3:邪眼術を発動する目で発動点を凝視している事。
条件4:邪眼術を発動する目と発動点間の距離が5メートル以上である事。
より確実に、より陰湿に、より悪辣に。相手の守りの穴を見極める事で邪眼の輝きは増していく。
注意:『
▽▽▽▽▽
「……?」
『呪法・貫通槍』の『呪法・増幅剣』との併用不可の記述に、私は『呪法・増幅剣』の効果を見てみる。
すると、そちらにもしっかりと併用不可の記述が追加されていた。
まあ、工夫の仕方と効果に似通った面があるので、当然の記述かもしれない。
と言うか、この記述通りなら、『
組み合わせるなら練習も必要だろうし。
『呪法・貫通槍』そのものの扱い方も、スナイパーライフルによる狙撃を思い描きつつ、練習しておくとしよう。
『沈黙が治ったでチュね。さてどうするでチュ?』
「一度帰還しましょう。新規で得た物がこれだけあるなら、整理して、強化を進めたいわ」
それから暫く。
沈黙と脚部干渉力低下が治ったところで、私は熱拍の幼樹呪を探し、『熱樹渇泥の呪界』を脱出した。
10/04誤字訂正