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265:トライアルボルカノ-4

「メンダアアァァ……」

「一体だけですか」

「その分だけ強いんでしょうね」

 私たちの前に現れたのは、身長2メートルほどの鉄肌人。

 装備品は重厚な全身鎧を身に着け、右手に身長と同じ程度の長さがある大剣、左手に全身が隠せる大きさの盾を握っている。

 未知を楽しむためにボスに関する情報は敢えて集めていないのだが、通路に入る前のクカタチの話からして、私たちの異形度合計に合わせたスペックになっているはずである。

 一応鑑定をしておくか。



△△△△△

鉄肌人の戦士長 レベル18

HP:18,017/18,017

有効:なし

耐性:なし

▽▽▽▽▽



「『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』」

「メダァッ!」

 特に有効な状態異常はなし。

 ではまずは小手調べだ。

 私は鉄肌人の戦士長に素早く近づくと、『呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』を発動した『恐怖の邪眼・3』を、相手の攻撃を避けつつ撃ち込んだ。

 紫色の閃光が凝視点から放たれ、金属の表面に反射、周囲が紫色の光で満たされる。

 そして鉄肌人の戦士長に恐怖(728)を与え……


「っ!?」

「タルさん!?」

 私に恐怖(154)が付与された。


「メ、メメダ……」

「こ、これは……」

 全身が震えて、マトモに立っていられない。

 視界も震えて、焦点が定まらない。

 重症化した恐怖を発症している。

 鉄肌人の戦士長も私と似たような状態で、盾の陰に隠れているが……とりあえず何が起きたのかは理解した。

 『恐怖の邪眼・3』の一部が反射されて、私に返って来たのだ。


「ザ、ザリチュ!」

「『任されたでチュ。しかし呪詛反射とは……クカタチは知っていたでチュか?』」

「い、いえ、知りませんでした。掲示板にも報告はなかったと思います」

「『つまり、反射には普通は満たさないような条件を満たす必要があるってことでチュね』」

 幸いにして恐怖は精神系の状態異常。

 ならば、ザリチュに体の制御を任せる事で、恐怖による体の震えは抑え込める。

 恐怖本来の効果であるCTの鈍足化は……しっかりと働いていて、普段の倍以上は必要そうだ。


「『恐怖そのものはしっかりと入っているでチュから、戦いは任せるでチュよ。クカタチ』」

「分かりました! トランス・ローパー!!」

「メゴッ!? メメゴゴ!?」

 戦いそのものについては心配要らないだろう。

 両腕を複数本の触手にしたクカタチが鉄肌人の戦士長の体を叩く。

 鉄肌人の戦士長は反撃として、腰が引けたままに剣を振るうが、そんなものが当たるほどクカタチの動きは遅くないため、一方的に攻撃を仕掛け続けている。


『しかしやられたでチュね。たるうぃ。まさか、一部とは言え、邪眼術が返されるとは思っていなかったでチュよ』

 まったくもってその通りである。

 部分反射とは言え、まさかこんな場所で遭遇するとは思わなかった。

 とは言え、使ったのが『恐怖の邪眼・3』だったのは不幸中の幸いである。

 これでもしも相手が術士系で、有効だからとこちらが使ったのが『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』だったら……最悪、沈黙の重症化によって窒息死していたかもしれない。


「『クカタチ、援護するでチュよ! 『毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』』」

「メギョッ!?」

「ありがとうございます!」

 さて、恐怖に震えて、ただじっといているわけにもいかない。

 と言うわけで、私は反射される前提で、二つの目による『毒の邪眼・2』を撃ち込む。

 私の目から深緑色の光が放たれ、鉄肌人の戦士長の盾の表面で一部が反射、周囲に深緑色の光が漏れる。

 鉄肌人の戦士長に与えた状態異常は毒(35)。

 私に返ってきた毒はなし。

 状態異常を反射されても、耐性が十分にあれば防げると言う事だろうか?


「メギョアアアァァ!」

「わわっ、何か当たるを幸いって感じ」

「『本当にたるうぃの体は動かしづらいでチュねぇ。なんで、あんな軽快に動き回れるんでチュか……』」

 鉄肌人の戦士長は半ば正気を失ったような状態で剣を振り回しつつ、こちらに向かって来る。

 なのでザリチュには反撃を考えずにとにかく逃げてもらう。

 クカタチは……流石に攻撃を避け切れずに触手が切り飛ばされているが、切り飛ばされた体に別の体をくっつける事で回収して、消耗を抑えているようだ。


「メゴ……エダ……アアァァ……」

 そうして戦う事暫く。

 状態異常の反射と言う予期せぬ反撃こそ喰らったが、それ以外には特に見どころもなく、クカタチの連打によって嬲られた鉄肌人の戦士長は倒れた。


≪称号『火山侵入許可証』を獲得しました≫

≪報酬はメッセージに添付してお送りいたします≫



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル19

HP:1,005/1,180

満腹度:91/110

干渉力:118

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・2』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・1』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』、『足縛の邪眼・1(タルウィフェタ)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)

呪法:

呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)


所持アイテム:

呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、ポーションケトル、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡、熱拍の幼樹呪の外套etc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門設置


呪怨台

呪怨台弐式・呪術の枝

▽▽▽▽▽


△△△△△

『火山侵入許可証』

効果:『試練・火山への門』の観測所によって放たれる攻撃が無効化される。

条件:『試練・火山への門』のボスを討伐


汝は力を示した。熱き世界へと足を踏み入れるといい。

▽▽▽▽▽



「それにしてもどうして攻撃が反射されたんでしょうね? 私の攻撃は終始大丈夫だったのに」

「『んー、ダメージの有無か、物理的実体があるかどうか、この辺が関わるかもしれないでチュねぇ。いずれにせよ今後は注意を払う必要がありそうでチュ』」

「このボスの素材を使って反射アイテムを作られるかもしれないから?」

「『そういう事でチュね』」

 その後、私の恐怖が回復するまでクカタチとザリチュには雑談をしてもらい、恐怖が治ると共にダンジョンの外に脱出した。

09/29誤字訂正

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