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263:トライアルボルカノ-2

「さて、探索開始ね」

「ですねー」

『でっチュねー』

 『試練・火山への門』のダンジョン部分の基本構造も、『試練・砂漠への門』と変わらないらしい。

 初期地点は複数個所ある。

 合流と分岐を繰り返す通路を進んで、奥へと向かう。

 ボス前には広場があって、ボスを倒せばクリア。

 内部でのプレイヤー同士の揉め事回避の為のマイナールールも同様のようだ。


「あっ……何かを踏んで……」

「熱風ね」

『効果はないでチュ』

 だが違いもあって、通路の素材、罠、モンスターと言った物は独自のものだ。

 罠の例としては、今、クカタチが床にあるスイッチを押して発動、この辺に居るプレイヤー全員を巻き込むように熱風が吹き荒れたのが一例になるか。


「タルさん、新装備で炎が大丈夫になったんですね」

「大丈夫どころか、低レベルのものなら無効化できるレベルね。今のぐらいなら、何も問題はないわ。クカタチは?」

「私は熱湯スライムですよ? これぐらいなら、むしろ涼しさを感じるくらいです」

『どっちも炎に対して強すぎるでチュねぇ』

 が、私にもクカタチにも熱風は効果を示さなかった。

 まあ、私の装備品は呪限無である『熱樹渇泥の呪界』探索のためのものなので、この程度の熱も防げないようでは困る。

 クカタチにしても、これぐらいの熱風はあってないような物だろう。

 他のプレイヤーが浴びたら……装備品によってはそれなりのダメージと灼熱の状態異常は負うかもしれない。


「きゃああぁぁっ!?」

「次の罠は落石ね。生きてる?」

「あ、はい。驚きはしましたけど、ダメージすら受けてないです。それにしても、加熱された石を落とすって、殺意が高いですね」

 次の罠は天井からの落石だった。

 十分に加熱された石は、直撃すれば勿論大ダメージだが、掠っただけでも結構な痛手を負うだろう。

 私が受けたら多少危ないかもしれない。

 なお、落ちてきたクカタチは体温維持に使えると、石を体内に取り込んで、回収していた。


「それにしても、モンスターが出てきませんね」

「もしかしたら、他プレイヤーとのルート被りが起きているのかもしれないわね」

「なるほど。確かにありそうですね」

 出現するモンスターは掲示板によれば、鉄肌人……メタルスキンとも呼ばれる人型モンスターであるらしい。

 特徴は名前の通りで、全身の皮膚が金属製になっており、斬撃、刺突、火炎、電撃と言った攻撃に対して強いらしい。

 装備品によって戦士系、術士系、その他系に分かれるのは緑小人と同じだが、装備品の素材は全て金属であるらしい。


「「「メタアァァ」」」

「あ、出てきましたね」

「みたいね」

 と、ここで戦士2、術士1の構成で鉄肌人たちが出てきた。

 出てきたが、構えの取り方や挙動の速さからして、何と言うか、エギアズ・1の劣化版な気配がしてしょうがない。


「とりあえず2体は始末するわ。『毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』」

「「メゴッ!?」」

「メタッ!?」

「まあ、金属の皮膚程度じゃ防げるわけがないですよねー」

 とりあえず高濃度の呪詛の霧を浴びせつつ、戦士の片方と術士に『毒の邪眼・2』を発動、毒(190)を与えておく。

 これで2体の鉄肌人はその内に死ぬだろう。


「じゃあ、残りは私が相手をしますね」

「ええ、頼んだわ。クカタチの戦い方をしっかり見せて」

「分かりました。私の呪術をタルさんに一度しっかり見てもらいたかったので、いい機会です」

 それまでは移動がしやすいと言う理由で球体となって転がっていたクカタチが人型を取る。

 そして右腕を前に出す。

 さて、クカタチの普段の戦い方はどんなのだろうか?


「メ、メタアアァァ!」

 鉄肌人が手に持った剣を振りかぶりつつ、クカタチに向かって突っ込んでくる。


「では、トランス・ローパー」

「!?」

 クカタチの右腕が無数の触手に変形。

 槍のように鋭く、真っ直ぐに伸びていき、鉄肌人を貫く……には至らず、激しく頭や胸を打って、吹き飛ばすに留まった。


「私の擬態術は食べたモンスターの姿の一部、あるいは全身を模倣して、その能力を扱えるようになる呪術です。今使ったのは私のお気に入り、トランス・ローパーで、微量な麻痺効果を持った無数の触手が出せるんです」

「へー、凄いわね。でもクカタチ。見たいとは言ったけど、解説までは不要よ。明かすのは概要だけにしておいて、核心はちゃんと隠しておきなさい」

「あ、はい」

「……」

 鉄肌人は麻痺の状態異常によって、動きが幾らか鈍っているようだ。

 ダメージもそれなりに入っている。

 しかし、トランス・ローパーか……私が呪術であると気づいていなかっただけで、これについては前回のイベントでも頻繁に使っていたのかもしれない。

 変形して現れたクカタチの触手に何処か見覚えがある。


「そうですよね。タルさんともまた何時か何処かで戦うかもしれないんですから、隠すべき所は隠すべきですよね」

「そういう事ね。後、戦闘はまだ終わってないから」

「あ、はい。トドメ刺しますね。トランス・ウルフ」

 クカタチの左腕が狼の頭に変形して、鉄肌人の頭を挟み込む。

 そしてクカタチの右腕の触手が鉄肌人の胴体に巻き付く。


「せいっ!」

「!?」

「おおっ」

『……。タルの弟子でチュねぇ。本当にチュアアアァァァ!?』

 で、両方の腕を適切に動かして、鉄肌人の首を捻じ曲げ、曲がってはいけない角度まで折った。

 なるほど、切る、刺すが出来なくとも、相手の関節などを利用して、始末することが出来ると。

 あ、ザリチュについては久しぶりに抓っておく。


「じゃ、先に進みましょうか」

「分かりましたー」

 戦闘終了後と言う事で、私たちは奥に進むための移動を始めた。

 なお、鉄肌人から得られるアイテムで、私にとって目ぼしいものは特に無いので、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』で死体は焼いておいた。

 これはゾンビ化防止のためである。

09/27誤字訂正

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