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253:ヒートビートタイニー-3

「さて、今日はバリバリ作っていきましょうか」

『でっチュねー』

 土曜日。

 今日は『熱樹渇泥の呪界』探索で入手したものを用いる形で、朝から生産活動に従事する。


「これでよし」

 と言うわけでまずは一つ。



△△△△△

毒頭尾の蜻蛉呪の翅剣

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:115

浸食率:100/100

異形度:15


毒頭尾の蜻蛉呪が高速で空を飛ぶために用いる透明な翅を剣として加工したもの。

極めて薄く、硬いため、鋭い刃物として加工することが可能だが、脆くもある。

優れた使い手が用いれば、相手は斬られた事にすら気づかないかもしれない。

▽▽▽▽▽



『使えるんでチュか? これ』

「んー……私には厳しいかも」

 毒頭尾の蜻蛉呪の翅に、熱拍の幼樹呪の木材による持ち手を付けて、刃渡り1メートルほどの剣を作った。

 元がトンボの翅なので、向こう側が透けて見えるのはまあいいとして、薄さは1ミリほどしかなく、私の技術と呪いでは、剣として用いることは出来ないだろう。


「組織を潰さずに食品を切る時用の包丁として一本確保。他は次のイベントの時にでも交換会に出しましょうか」

『妥当かもでチュね』

 と言うわけで、細工用アイテム一式で加工を施し、耐久度を損ねることなく包丁サイズにしたものを調理用アイテム一式に登録しておく。

 これで脆いと言う性質も多少はカバーできるだろう。


「さて、こっちもそろそろ終わったかしらね?」

『終わったようでチュよ』

 で、何故に今日の作業で必要がなさそうな包丁を作っていたかと言えばだ。

 今日の作業で使うアイテムの作成……いや、アップデートに時間が必要だったためである。


「おおっ、ちゃんと熱拍の幼樹呪の木材製になっているわね」

 正確な経緯としては、熱拍の幼樹呪の木材を持って裁縫用アイテム一式に近づいたところ、裁縫用アイテム一式に使われている木製素材を熱拍の幼樹呪の木材に変更するかと言う表示が出たのだ。

 で、要求されたのが木材とDCだけだったので、私はそれを承諾。

 しかし、アップデートには時間がかかるため、その間に包丁を作ったのだった。


「機織り機が明らかにパワーアップしてるわね……」

『まあ、そうでないと、これからの作業はツラいものがあるでチュから、丁度いいと思うでチュ』

 さて、アップデートされた裁縫用アイテム一式だが、一番強化されたのは機織り機だ。

 使いやすくなると同時に、大型化もしている。

 これならば、私の全身を覆えるような大きな布も問題なく織れそうだ。

 また、糸を撚るための道具も良くなっているようで、効率よく作業を進められそうだった。


「では、今日のメインを始めましょう」

『チュー』

 私は毒液に漬けた熱拍の幼樹呪の樹皮から繊維を取り出す。

 そして垂れ肉華シダの蔓からも同様にして繊維を取り出していく。

 そうして二種類の繊維を取り出したら、撚って一本の糸にする。

 で、ある程度の量がまとまったところで、私はまとめた糸を呪怨台に乗せた。


「それぞれの性質を保持しつつ一本の糸としてまとまるように……」

 霧が晴れた後に残っていたのは、蘇芳色の糸の束だった。

 では鑑定。



△△△△△

熱拍の幼樹呪の糸

レベル:18

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:13


熱拍の幼樹呪の繊維と垂れ肉華シダの蔓の繊維を撚って一本の糸にしたもの。

熱と乾燥に対して極めて強い耐性を有する。

周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する。

染色された事によって、奇麗な蘇芳色を呈すると同時に、極めて高い毒耐性を有する。

▽▽▽▽▽



『強いでチュねぇ……』

「このまま上手く加工できれば、熱・乾燥・毒耐性に呪詛濃度に応じた強度上昇。いいわねぇ。じゃあ、次の工程ね」

『呪詛纏いの包帯服をばらすんでチュね』

「ええ、その通りよ」

 私は量産用アイテム一式の対象を一時的に熱拍の幼樹呪の糸に変更。

 素材を投入して、量産を進めさせておく。

 その間に私は呪詛纏いの包帯服を脱ぐと、細かい紐状に裂いていく。

 ただし、呪詛纏いの包帯服は耐久度回復効果を持った装備品なので、裂いた布地同士は接触させないように気を付けてだ。

 なお、脱いだところで初期装備のボロ布が何処からともなく表れているので、全裸にはなっていない。


「では、織っていきましょうか」

 私は新しくなった機織り機を動かして、細かい紐状になった呪詛纏いの包帯服と熱拍の幼樹呪の糸を組み合わせる形で織っていく。

 そうして出来た包帯状の布を私の体に巻き付け、仮止めをし、脱いで縫い合わせていく。


『デザインは変わらずなんでチュね』

「まあ、こっちは純粋に強化した方が使い勝手もいいでしょうからね」

 私は出来上がった新たな呪詛纏いの包帯服を呪怨台に乗せる。

 するといつものように霧が集まってくるので、念じる。


「私にとって適切な呪詛濃度を維持できるように、素材それぞれの持ち味が生かされるように、常に効果を発揮できるように、出来るだけ良い装備品になるように……」

『出来たでチュ』

「みたいね」

 では鑑定だ。



△△△△△

呪詛纏いの包帯服

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:112

浸食率:100/100

異形度:15


様々な素材を組み合わせて作られた、包帯を幾重にも体に巻き付けたような見た目の服。

周囲の呪詛を操作し、着用者が生存するのに適した呪詛濃度に近づける効果を持っており、呪詛濃度を最大7まで増減させられる。

毒無効(15)、毒に対して極めて高い耐性、毒に対して極めて高い抵抗性を有する。

灼熱に対して高い耐性を有する。

火炎属性攻撃に対する高い耐性を有する。

乾燥に対して強い耐性を有する。

周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する。

周囲の呪詛の一部を吸収する事で耐久度が回復する。

身に着けているものの全身にこれらの効果の一部が発揮される。


注意:着用中、氷結属性への耐性が低下する(大)

注意:着用者の異形度が14以下の場合、1時間ごとに(15-着用者の異形度)だけHPが減少する

注意:この衣服を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(大)

▽▽▽▽▽



「一気にパワーアップしたわね……と言うか、これって……ああなるほど。よくある魔法の防具のように、服がない部分にも防御効果が及んでいるのね」

『代わりに耐性低下の効果範囲も広がっているから、そこは注意でチュね』

「なるほど。それは確かに危険ね」

 身に着けた新しい呪詛纏いの包帯服はレベル不足もあって少しだけ重たい。

 まあ、直ぐにレベルが上がって、重量については問題はなくなるだろう。

 それよりも、一部のRPGにあるビキニアーマー……布地が少ないのに防御力が高い魔法の防具のように、効果範囲が拡大したことの方が重要か。

 この効果があれば、私の耐久力は大きく増す事になるだろう。


「じゃあ、ついでにもう一品作りましょうか」

『まだ作るんでチュか?』

「糸はたっぷりあるもの」

 さて、折角なのでさらに一つアイテムを作った。

 熱拍の幼樹呪の糸だけを使って織った布を腰に巻き付け、結び、前が開いたスカートのようにした上で、毒頭尾の蜻蛉呪の甲殻を細工して作ったボタンで留めてみた。

 スカートの丈の長さは腰から踵の上ぐらいまで。

 で、鑑定結果はこんな感じだ。



△△△△△

熱拍の幼樹呪の腰布

レベル:19

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:13


熱拍の幼樹呪の繊維と垂れ肉華シダの蔓の繊維を織って一つの布にしたもの。

毒無効(15)、毒に対して極めて高い耐性、毒に対して極めて高い抵抗性を有する。

灼熱に対して極めて高い耐性を有する。

火炎属性攻撃に対する極めて高い耐性を有する。

乾燥に対して極めて強い耐性を有する。

周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する。

身に着けているものの全身にこれらの効果の一部が発揮される。


注意:着用中、氷結属性への耐性が低下する(大)

注意:着用者の異形度が14以下の場合、1時間ごとに(15-着用者の異形度)だけHPが減少する

注意:周囲の呪詛濃度が19以下の場合、一部の効果のみ発揮される。

▽▽▽▽▽



『もう、毒、熱、乾燥は効きそうにないでチュね』

「代わりに氷結には死ぬほど弱くなったと言うか、掠っただけで蒸発するんじゃないかしら」

『氷結対策の身代わり人形が欲しくなるでチュね』

「でも藁人形だと駄目なんでしょうね。一応試しに作ってみるけど」

 重さは問題なし。

 見た目についても呪詛纏いの包帯服と同じ色なので問題なしだ。

 注意事項も気にする必要はない。

 うん、これで午前中は終わりでいいだろう。

 なお、氷結対策の藁人形は私の予想通り作れなかった。

 その内入手方法を考えないといけないだろう。

 しかし、糸と装備品の名称には垂れ肉華シダの蔓の名前はないが、フレーバーテキストにはある為なのか、誤解を招きそうな気がするな、これ。



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル19

HP:1,180/1,180

満腹度:97/110

干渉力:118

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・2』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・1』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』、『足縛の邪眼・1(タルウィフェタ)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)

呪法:

呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)


所持アイテム:

呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、ポーションケトル、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡etc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門設置


呪怨台

呪怨台弐式・呪術の枝

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