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246:ドラゴンフライミート-1

「さて、まずは鑑定ね」

 称号『ゲテモノ食い・3』を取得したことで……ああいや、『CNP』では逆だったか、とにかく、今の私は食事による異形度上昇の可能性を知る事が出来るようになっている。

 そして恐らくは毒頭尾の蜻蛉呪の肉を食べる事で、異形度を上昇させることが出来る。

 と言うわけで、毒頭尾の蜻蛉呪の肉、比較として『ダマーヴァンド』の斑豆を鑑定してみる。



△△△△△

毒頭尾の蜻蛉呪の肉

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:19


毒頭尾の蜻蛉呪の肉。

カースの肉は呪いの塊と言ってもいい、こんなものを食べても大丈夫なのは、同じカースくらいだろう。

注意:食べると8%の確率でランダムな呪いを恒常的に得て、異形度が1上昇します。

▽▽▽▽▽


△△△△△

『ダマーヴァンド』の斑豆

レベル:15

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:16


『ダマーヴァンド』で生み出された赤、白、黒の斑模様を持った豆。

生で食べると低確率で毒、灼熱、沈黙の状態異常を受ける。

味は良く、食べると満腹度も大きく回復する。

注意:『ダマーヴァンド』または『ダマーヴァンド』と類似した環境でしか生育しません。

▽▽▽▽▽



「ふうん」

『カース肉はやっぱり食べるべき物ではなさそうでチュねぇ』

 斑豆の鑑定結果に変化はないが、毒頭尾の蜻蛉呪の肉には変化があった。

 なるほど、8%の可能性で異形度上昇か。

 一口食べたらアウトなのか、ある程度の量が要るのか、完食か、と言う部分も気になるが、試すのは止めた方がいいだろう。

 流石にランダム呪いで異形度を増やすのは、メリットが生じる可能性よりも、デメリットが生じる可能性が大きすぎる。


『と言うわけで、とっとと焼却処分するでチュよ。たるうぃ』

「いいえ、もう少し試したいことがあるから、色々と試すわ」

『まさか……食べる気でチュか?』

「流石にランダムは遠慮するわ。この高異形度にも関わらず均整の取れたアバターを崩すのは嫌だもの」

 後、自分で言うのもなんだが、私のアバターは異形度19にしては極めて整っていると思っている。

 たぶんだが、高異形度はマントデアのような明らかな化け物になるのが普通であり、私のように概ね左右対称で、高異形度だからこその美しさを持てると言うのは、そうないと思うのだ。

 なので、呪いを追加するにしても、このアバターの外見を崩さないような呪いにしておきたい。

 現状、このアバターに不満などないのだから、未知を求めるにしても、それくらいは粘るべきだろう。


「んー……とりあえずリアル時間丸一日くらいただ煮込んでおくもの、一煮立ちさせたら吊るして乾燥させるもの、ただの乾燥ではなく藁で燻すものを作りましょうか。食えるようになってもよし、呪い付与に方向性が付くもよし、単純に強くなるもよしね」

『カースの生命力を甘く見ないようにとは言っておくでチュよ』

「不穏な呪詛の流れが見えたら、その時点で焼却処分しておくわ。そうね、普段は朝一ログインをしないけど……明日は念のためにしておきましょうか」

『まあ、それなら大丈夫でチュか』

 と言うわけで調理完了。

 放置しておく。

 なお、この作業と並行して、タルの身代わり藁人形の再作成、斑豆の補給もしておいた。

 灰汁取りもしない煮込みをただ待つだけでは、時間的に勿体ないので当然である。


「じゃあ次ね。目玉をばらして水晶体を取り出してっと」

 調理と補給が終わったので次である。

 私は今日手に入れた毒頭尾の蜻蛉呪の目玉を解体。

 中の水晶体を取り出す。


「ふんふふーん」

 取り出した水晶体を適度な大きさに切り分けて、おもちゃの望遠鏡のレンズと交換。

 水晶体の残りと甲殻の一部を砕いて粉状にして、毒液と混ぜ合わせ、接着剤代わりに塗布、細工用バーナーで距離を取って炙る事で乾かし、レンズを固定。

 では、呪怨台に乗せよう。


「見ている先の事がより正確に分かりますように」

 赤と黒と紫の呪詛の霧に干渉しつつ、いつものように願いを口にしていく。

 そうして無事に望遠鏡は出来上がった。



△△△△△

蜻蛉呪の望遠鏡

レベル:18

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:10


毒頭尾の蜻蛉呪の目玉を利用した望遠鏡で、遠くのものが近くにあるように見える。

倍率は2倍~5倍

固体に焦点が合わさると、その物質までのおおよその距離が表示される。

注意:このアイテムを介して生物を見た場合、見られた生物に使用者の存在が通知されます。

▽▽▽▽▽



「ふむ、デザインはほぼ変わらずね」

『つまり、中身がそれだけおかしくなっているんでチュけどね』

 『ダマーヴァンド』第三階層に移動した私は蜻蛉呪の望遠鏡を覗き、近くの壁を見てみる。

 すると、焦点があったところで、11メートルと言う表示が出た。

 続けて、噴水から飛び出ている毒液を見てみたが、やはり液体には反応しないらしく、焦点があっても距離の表示はなかった。


「うん、これは使い勝手がよさそうね」

『ところでたるうぃ? 見られていると言う通知を消す方向で呪わなかったのは何ででチュか?』

「あー……」

『忘れていたんでチュね』

「まあ、現状困ったことはないから。ついね」

 うんまあ、やってしまったものは仕方がない。

 とりあえずこの後は、今日のメインイベントに移るとしよう。

 そんなわけで私は『ダマーヴァンド』と言うダンジョンの核を、噴水の中に隠されている毒鼠の杯から私自身の体へと変更し、毒鼠の杯を取り出した。


『本気でチュか』

「毒の邪眼を強化するのなら、やっぱりこの器を使うべき。そうは思わないかしら?」

『楽しそうだから、でチュか』

「ええ、沢山の未知が呼び込めそうだから、よ」

 そして私は他に必要な素材を回収すると、マイルームに戻った。

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