240:セパレトドラゴンフライ-3
本日二話目です
「ふむ。結構いい感じに繊維が取り出せたわね」
『これを糸や紐にする感じでチュ?』
『CNP』にログインした。
私はまず、昨日毒液に漬けておいた熱拍の幼樹呪の樹皮を確認。
いい感じにふやけていて、簡単に繊維を取り出すことが出来るようになっていた。
と言うわけで回収しておく。
「ええそうよ。と言っても垂れ肉華シダの蔓の繊維も混ぜて、強度も得られるようにするわ。で、可能なら糸や紐ではなく、布にまでしたいところね」
『この世にはない布が出来そうでチュねぇ』
そして、代わりに垂れ肉華シダの蔓をある程度裂いた上で、毒液に漬けておく。
マイルームに置いてある裁縫用アイテム一式には小型の機織り機も含まれているので、材料が揃えばたぶん出来るだろう。
上手くいけば……熱と乾燥に耐性を有すると共に、呪詛濃度に応じて強度が上がる特殊な布が出来る事だろう。
『じゃあ、呪限無に行くでチュか?』
「いいえ、その前に新装備を作っておくわ」
続けて私は毒頭尾の蜻蛉呪の毒歯の加工を行う。
毒頭尾の蜻蛉呪の歯は、ネズミのそれよりも猿などの雑食動物のものに近い。
そのため、加工することでナイフとして使い物になりそうな鋭い前歯、犬歯だけでなく、臼歯も存在している。
と言うわけで、前歯と犬歯を臼歯とこすり合わせて削っていき、合計八本のナイフを作成。
持ち手に滑り止めとして垂れ肉華シダの蔓を巻き付けた上で、呪怨台に乗せていく。
「毒とかいらないので、その分強度と切れ味をお願いします。長く長く、使い勝手がいい感じでお願いします」
『八本もあるからって微妙に雑でチュね』
「格上素材だから、気合を入れすぎると、扱えない物になる可能性が高いのよ」
『まあ、それもそうでチュか』
と言うわけで完成である。
とりあえず一本鑑定してみた。
△△△△△
毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣
レベル:20
耐久度:110/110
干渉力:112
浸食率:100/100
異形度:10
毒頭尾の蜻蛉呪の前歯を加工して作られたナイフ。
毒を失った代わりに耐久度と干渉力が増している。
▽▽▽▽▽
「多少重いわね」
『レベル不足でチュからねぇ』
出来上がった短剣を私は軽く何度か振ってみる。
実際の重量はこれまでのトゥースナイフと大して変わらないはずだが、レベル不足の為に重く感じる。
だがまあ、この程度なら問題はないだろう。
「まあ、私にとって短剣は戦闘で使うものではなく、採取や現地での解体の方が多いし、問題はないわね」
『戦闘で使う時も、組み伏せてトドメの一撃として使う場合くらいでチュからね。確かに問題はなさそうでチュ』
これまでのトゥースナイフは……マイルームに放置でいいか。
呪限無に持ち込む短剣も二本もあれば十分だから、残りは置いておこう。
あ、モンスター解体用アイテム一式のナイフ、調理用アイテム一式の包丁、細工用アイテム一式の小刀を、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣に変更したり、追加したりできるようになってる。
じゃあ、一本ずつ追加しておくか。
デフォルトのナイフと包丁よりも切れ味と頑丈さは上だろうから。
「手持ち二本、マイルームに三本、予備三本、毒頭尾の蜻蛉呪一匹の一部を加工しただけでこれだけ得られるものがあるとか、本当に美味しいわぁ」
『でっチュねぇー』
さて、呪限無に行く前に回収、加工しておくべきものはこれぐらいかな?
毛皮は量が、翅と毒尾は組み合わせるアイテムが、甲殻は使い道が思い浮かばないし。
一応ステータスも見ておくか。
△△△△△
『蛮勇の呪い人』・タル レベル18
HP:1,170/1,170
満腹度:110/110
干渉力:117
異形度:19
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・2』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・1』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『呪いが足りない』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』
呪術・邪眼術:
『
所持アイテム:
毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトル、タルの身代わり藁人形etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
▽▽▽▽▽
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
『分かったでチュ』
問題はなし。
と言うわけで、私は呪限無の石門の前に移動する。
「『
二回目は呪限無の石門の呪詛濃度を高めた上で、一回目より格段に短いワードを唱えるだけで、門が開いた。
『これ、どういう意味なんでチュかね?』
「さあ? 『ジュゲムノ』と言う部分は、そのまま『呪限無の』何でしょうけど、他はちょっと分からないわね」
私は呪限無の石門をくぐって、『熱樹渇泥の呪界』に移動する。
ワードの内容については……正直よく分からない。
どことなく『禁忌・
『熱拍の幼樹呪の内部でチュね』
「ええ、前回と変わらずのようね」
さて、移動した先は前回呪限無の石門を見つけた、熱拍の幼樹呪の内部だ。
直径1メートル程の空間に、台座と呪限無の石門がある光景に変化はない。
「『
私は門をきちんと閉じると、外に繋がる穴を下っていき、外の様子を確認するが、特に問題はなさそうだ。
なので私は熱拍の幼樹呪の外に出ると、その上に移動する。
「さて、此処からどこへ向かうかね」
『毒頭尾の蜻蛉呪を一匹は狩りたいところでチュよね』
「そうね」
『熱拍の幼樹呪の樹皮も回収しておきたいでチュよね』
「赤樹脂、木材なんかも欲しい所ね」
『熱拍の樹呪をどうするか、ワームのような巨大カースをどうするかも悩みどころでチュね』
「少しずつ情報を得たいところではあるわね」
私は配信の準備を進めつつ、ザリチュとこれからどうするかを相談する。
「では配信開始。今日も『熱樹渇泥の呪界』を探索していくわよ」
そして私は『熱樹渇泥の呪界』の空へと舞い上がった。