233:ヒートサースト-1
本日一話目です
『そ、そろそろいいでチュかね。たるうぃ?』
「ん? ああ、ザリチュ……そうね。いい加減動きましょうか」
感動の余韻に浸ること暫く、私はザリチュの声で活動を再開することにした。
「じゃあまずは……後ろのこれね」
『チュ? 何も見えないでチュよ?』
私は自分の背後の空間に僅かだが歪みがあるのを確認した。
この歪みは……まあ、放置しておいてもたぶん大丈夫ではある。
だが、万が一を考えると、きちんと正しておき、此処から通常のマップへと溢れ出ていくものが無いようにしておくべきだろう。
「『
『チュー? 何をやったのかよく分からないでチュ』
「私も把握しきっているわけではないわ」
私は歪みに手を伸ばし、軽く手を振りつつ、歪みの周囲の呪詛濃度を19に近づけていく。
同時に補助として表示されたワードを唱える。
それだけで歪みは消去され、此処で門が開かれたことは分からなくなった。
≪称号『呪限無の門を閉じるもの』、『呪限無の門を操るもの』、『呪限無を行き来するもの』を獲得しました≫
「待って。一気に称号が来た」
『確認するしかないでチュね』
私は自分に『鑑定のルーペ』を使用する。
△△△△△
『蛮勇の呪い人』・タル レベル17
HP:875/1,160
満腹度:107/110
干渉力:116
異形度:19
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・2』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『大飯食らい・1』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』
呪術・邪眼術:
『
所持アイテム:
毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトル、タルの身代わり藁人形etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
▽▽▽▽▽
△△△△△
『呪限無を行き来するもの』
効果:呪限無に繋がる門の作成難易度低下(中)、開閉速度上昇(中)、転移機能の制限を部分解除、座標コード表示
条件:呪限無に繋がる門を作成して開閉。呪限無に到達する。
呪限無の世界へようこそ。
引くも進むも君の自由だが、自由には相応の責任と言う名の限り無い呪いも付き物である。
さあ、君がどこまで至れるのかを我々に見せてくれたまえ。
▽▽▽▽▽
「……」
『あー、ドンマイでチュ……』
どうやら、幾つかの称号が統合された結果として、『呪限無を行き来するもの』になったらしい。
それはいい。
それはいいのだが……また、フレーバーテキストを確認する暇ぐらいはください……。
未知がぁ……確認できたであろう未知がぁ……ノオオォォ……。
運営に要望を送っておきます、はい。
「気を取り直すわ。とりあえず、此処が何処かの鑑定からよ」
『分かったでチュ』
私は目の前の空間に向けて『鑑定のルーペ』を使用する。
△△△△△
呪限無の世界へ赴いた者が居る。
その者の血肉に従って泡沫の世界は形作られた。
我々に分かるのはここまでであり、その先はこの場に足を踏み入れたものにしか分からない。
呪詛濃度:20 呪限無-浅層
[座標コード]
▽▽▽▽▽
≪ダンジョン『熱樹渇泥の呪界』を認識しました≫
「『熱樹渇泥の呪界』……」
情報量が多い。
熱樹は……たぶん、私の周囲にある拍動しつつ熱を放っている巨大な樹の事だ。
渇泥はまだ見ていない物だろう。
フレーバーテキストの内容は……もしかしなくても、私に合わせてこの領域が作られたと言う事か?
呪詛濃度20はいいとして、呪限無-浅層と言う事は、此処は呪限無の中でもごく浅い部分、上の方の世界と言う事であり、つまりはまだまだ先がある、と。
最後に[座標コード]は……任意座標を撃ち込んで転移する時に使う奴なので、消費するDCはともかく、セーフティーエリアを発見する前に私が倒れても此処へ帰ってこれると言う事か。
『この場で回収できる情報は回収できたでチュかね?』
「そうね。一先ず得るべき情報は得られたわ」
とりあえず本格的に探索を開始する前に得るべき情報は得られた。
では、ここから本格的な探索を始めるわけだが……。
「あ、折角だし、他の第二エリア到達者に倣って、私もライブ配信とかしてみましょうか。映像を垂れ流すだけだけど」
『え? 正気でチュか? と言うか運営から許可が下りるんでチュか? ここ呪限無でチュよ?』
「さあ? とりあえずやるだけやってみましょう」
折角なので、私はここから先を垂れ流すことにした。
撮影を始め、私に関する話をしている掲示板にライブ映像へのリンクを張っておく。
書き込みが出来たので、運営としてもこれくらいは想定の範囲内と言う事か。
「えー、では、呪限無探索開始です。まずは地面がどうなっているかを見に行きましょう」
「『ヤバいと思ったら、早めに視聴を切り上げるでチュよー』」
私はゆっくりと下降を始めた。
09/05誤字訂正