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23:タルウィベーノ-6

「モグモグ……モグモグ……」

 私は毒吐きネズミの死体から剥ぎ取った肉を齧りつつ、解体を進める。

 そして、剥ぎ取れたパーツについては逐一『鑑定のルーペ』で鑑定していく。

 なお、解体の結果としてセーフティーエリア内がかなり血なまぐさい上に、真っ赤に染まっているが……いずれは掃除をしないといけなくなるかもしれない。


「んー……上顎には特にこれと言った物は無し。下顎は……ちょっと面白いわね」

 さて、そうして剥ぎ取りを行った結果。

 興味深い素材が手に入った。



△△△△△

毒吐きネズミの下顎骨

レベル:1

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:5


毒吐きネズミの下顎の骨。

前歯に触れた呪詛生成物の毒液は高速で歯の先端に向けて射出される。

▽▽▽▽▽



「これも呪いなのよね」

 呪詛生成物である毒液に限って、高速で飛ばす事が出来る呪い。

 呪詛生成物の毒液さえ自由に生み出せるならば、ある種の弩や弓のように使う事も出来るかもしれない。

 そんな形に組み上げるのは……出来ない事も無いか。

 ただ、毒噛みネズミの前歯から取れる毒噛みネズミの毒液を弾にするのは難しいだろう。

 私の記憶通りなら、毒噛みネズミの毒液は血液中に入らなければ効果を発揮しない性質だったはずだ。


「で、肝心の物は見つからず、と」

 ならば毒吐きネズミの毒を生み出す機構を見つけ出せばと考えたが……どこにも見つからなかった。

 唾液腺が毒液を生み出すと考えて鑑定してみたが、反応は無し。

 それなら胃の方や喉の方を見てみたりもしたが、こちらにも反応は無かった。


「毒吐きネズミの毒液を呪怨台で変質させれば、『毒の魔眼・1(タルウィベーノ)』の強化に繋がると思ったんだけど」

 毒吐きネズミの毒液は恐らくだが、毒噛みネズミの毒液とはまた別の代物だ。

 それを基に飲む事で私の力に出来るアイテムを作れれば、『毒の魔眼・1』の強化に繋がる可能性は高い。

 だがそれも、毒液を生み出す機構が見つからなければ、実現することは無い。


「……。いっそ、飛んで来たのを受け止めるか」

 もしかしたら、毒吐きネズミの毒は、毒吐きネズミ自身の意志に基づく呪術によって生み出されているのかもしれない。

 となれば、毒吐きネズミの体の何処にも毒を生み出す機構らしい機構はなく、手に入れたいならば何かしらの方法で戦闘中に相手が吐き出した物を回収するぐらいしか手は無いのかも。


「解体が終わったら、それも含めて作ってみますか」

 私は二体目の毒吐きネズミの死体の解体を進めて、同様の素材を手にしていく。

 そして、毒噛みネズミの死体についても解体して、肉の一部は肋骨を繋げて作った台の上に置いて、干し肉にする事にした。

 そろそろ満腹度を回復させるために必要なアイテムを携帯する時に備えて、試作品を作ってみるべきだろう。


「えーと……」

 そうして解体が終われば、次は今後の為に必要なアイテムの作成。

 まず一つ目は、毛皮袋を作った時に近い形のアイテムだ。

 毒噛みネズミの下顎と毛皮を組み合わせて、毒を受け止めるための漏斗部分と、毒を収納するための袋部分を作る。

 それから、漏斗部分を補強するように肋骨を張り、細い紐状にした毛皮でそれらを固定していく。


「受け止めて収納……受け止めて収納……」

 呪怨台での呪いはとにかく目的を果たすことを第一にさせる。

 つまりは飛んできた毒液の回収と保存だ。

 そうして、出来上がったのがこのアイテムである。



△△△△△

毒噛みネズミの毒受け袋

レベル:3

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:5


毒噛みネズミの素材から作られた特殊な袋。

広がった口に当たった毒液は袋の中に吸い込まれ、内部に保存される。

注意:中に入ったものは自動で混ざり合います

注意:中に入れたものは袋を壊さなければ取り出せません

▽▽▽▽▽



「よし、これで毒吐きネズミと一対一の場面を作れれば、持久戦で貯める事が出来るわね」

 これならば、毒吐きネズミの毒を回収する事も……まあ、私が上手くやれば出来るだろう。

 もしかしたら問題は一対一の状況を作る事よりも、作った後に袋で毒液を受け止められるかどうかかもしれないが。


「さて、それじゃあもう一つ」

 折角なので、私はもう一つアイテムを作る事にする。

 まず、毒噛みネズミの毒液を前歯から回収、それと毒吐きネズミの脳みそを混ぜ合わせた上で、毒吐きネズミの毛皮に塗りたくる。

 そんな冒涜的な液体とセーフティーエリアの床に溜まった血と合わさる事で、毛皮は裏表共に実に毒々しい色合いになった。

 それから毒吐きネズミの下顎骨を枠として、先程の毒吐きネズミの毛皮を巻き付け、いつも通りのケーブルで各部を抑える。

 で、呪怨台に乗せる。


「丈夫な防具になるように……丈夫な防具になるように……」

 込める念はシンプルな物でいい。

 その方が、分かり易くて使い易い物になる。

 そうして呪詛の霧が晴れると、呪怨台の上には綺麗な蘇芳色の三角帽子が乗っていた。

 そんな形に整えた覚えはないのだが……何があったのだろうか、私は『鑑定のルーペ』を向けてみた。



△△△△△

毒鼠の三角帽子

レベル:3

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:3


毒を持ったネズミたちの素材を使って作られた三角帽子。

時折勝手に動き、鳴き、嗅ぐが、使い手以外には聞こえず、望めば静かにはなる。

微弱ながら物理耐性、電撃耐性、毒耐性を有しており、外部からのこれらの力に強くなる。

注意:着用中火炎耐性が低下する(小)

▽▽▽▽▽



「全然シンプルじゃない……」

 デザイン自体はおとぎ話の魔女が被っているようなオーソドックスな三角帽子であり、先端の折れ曲がり具合と言い、色が綺麗な蘇芳色である事といい、元がネズミの素材であるとは思えない出来になっている。

 性能も悪くないので、着用自体は迷わない。


『チュウチュウチュウ……』

「あー、本当に鳴いてる」

 毒鼠の三角帽子を被ってみると、確かに耳元でネズミが鳴いているような声が聞こえるし、嗅いでいるような音も聞こえる。

 虫の翅の先端に付いている目で見る限り、三角帽子の先端部も微妙に上下左右へ動いているようだ。


「ま、戦闘中とか呪怨台を使っている時に気が散るような真似をしなければ、特に言うことは無いわね」

『チュウッ!』

 なんだか奇妙な物が出来てしまった。

 これもある意味呪いの防具になるのだろうか。

 何にせよ、今日のログイン時間はもうじき限界となる。

 私はセーフティーエリア内の整頓をするとログアウトした。



△△△△△

『呪限無の落とし子』・タル レベル5

HP:1,040/1,040

満腹度:100/100

干渉力:104

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・1』、『毒を食らわば皿まで・1』、『鉄の胃袋・1』、『呪物初生産』、『毒使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・1』、『呪術初習得』


呪術・邪眼術:

毒の魔眼・1(タルウィベーノ)


所持アイテム:

毒噛みネズミの毛皮服、毒鼠の三角帽子、鑑定のルーペ、鉄筋付きコンクリ塊、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、毒噛みネズミの毒受け袋、ポーションケトルetc.

▽▽▽▽▽

03/11誤字訂正

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