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227:メイクサクリファイス-2

「『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』」

 私は『灼熱の邪眼・1』を使って藁を乾かしつつ、調理用アイテム一式を使って作り上げた三つの料理を食べる事にする。

 一つは薄切りにしたジャガイモを油で揚げて、塩と香草をまぶしたポテトチップスモドキ。

 一つはベリー系の果実を磨り潰して得た汁、砂糖、『ダマーヴァンド』の毒液を混ぜ合わせたジュースモドキ。

 一つは毒液に小麦、キノコ、赤豆を入れて、一緒に煮た粥モドキ。

 さて、味を含めて結果は?


「モグモグ」

『どうでチュか?』

「んー、そうねぇ……」

 ポテトチップスは普通に美味しい。

 ジャガイモと香草に毒が含まれているので、満腹度が回復すると同時に微妙に毒を受けるのは困りものだが。

 ジュースは甘いヘドロと言う感じだ。

 おまけに一瞬ではあるが沈黙、出血、脚部干渉力低下など、様々な状態異常にかかっている。

 粥は普通に美味しい。

 適度に塩気と辛みがあって食が進むし、状態異常にもならず、上手く出来たと言えるだろう。


「『ダマーヴァンド』の毒液は加熱すると味がマトモになりやすいのかもしれないわね」

『そうなんでチュか?』

「経験則的にはね。熱で毒液が分解されるのかしら? 確か毒ネズミの毒にはそういう性質があった気がするのよね。私自身も火炎属性に弱いし」

『ふむふむ。なるほどでチュね』

 とりあえず味がいい料理が欲しい時は加熱調理を基本とすればいいか。

 なお、毒液を使わないと言う選択肢はない。

 調理用アイテム一式には水道もセットされているのだが、近くの水源を自動で探知して持ってきている為か、毒液しか出てこないのである。

 これで毒液すらもなければ、DCを消費して普通の水を作り出すようだが……調理用の油でも効率がいいとは言えない量のDCを持っていかれたので、非推奨の方法だろう。


≪称号『毒を食らわば皿まで・3』を獲得しました≫

「あ、はい」

『称号でチュか』

 と、完食したところで称号獲得の通知が来た。



△△△△△

『毒を食らわば皿まで・3』

効果:経口摂取した毒の効果が弱まる(中)

条件:有毒の食べ物を一定量以上食べる


毒? ああ、あの美味しい料理か。慣れるとむしろ毒がない方が困るぐらいだよ。味気が無くてね。 

▽▽▽▽▽


△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル17

HP:1,160/1,160

満腹度:110/110

干渉力:116

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・2』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『呪限無を垣間見た者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『大飯食らい・1』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『期せずして呪限無の門を開くもの』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』、『足縛の邪眼・1(タルウィフェタ)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)


所持アイテム:

毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置


呪怨台

呪怨台弐式・呪術の枝

▽▽▽▽▽



「まあ、いつも通りの効果ね」

『タルはほぼ有毒物しか食っていないでチュからねぇ』

「いや、斑豆……じゃなくて白豆は無毒で、しかも分けて食べられるでしょ。うん、そうね。私が悪かったわ。獲得して当然だったわ」

 自分で言ってて、確かに有毒物しかなかったと気付かされた。

 白豆以外はほぼ確実に有毒か、白麦と赤麦のように有毒な何かと分けられない状態であるかで、称号獲得は当たり前と言えば当たり前だった。

 まあ、得て困る称号ではないので、流しておこう。


「とりあえず藁を編みましょうか」

『そーでチュねー』

 私は乾かした藁を人型に編んでいく。

 両手両足を作り、頭を作り、束ねて留めていく。

 編まれた人形の見た目はどう見ても呪いに使われるような藁人形だが、これは他人を害するためではなく自分の身を守るための人形だ。


『身代わり人形と言う話でチュけど、どうやって自分に来た攻撃を肩代わりさせるんでチュ? これをただそういう方向に呪っただけだと、そこまでの代物にはならないと思うでチュよ』

「そうね……先例であるザリアは、恐らくだけど、自分の棘を人形の中に埋め込んで使う事で、自分との繋がりを強固なものにして性能を上げていたんだと思う。だから私も同じような事をしようとは思っているわ」

『同じような事でチュか』

 さて、藁人形に自分に関わる何かを埋め込むわけだが……ここで風化の呪い、不老不死の呪いが邪魔をしてくる。

 風化の呪いがある以上、普通に体から髪の毛を切り離したりしても風化して消滅するだけ。

 切り離すことが出来ても、不老不死の呪いがある以上、素材として扱おうとすると消滅してしまう。

 ザリアの棘がどちらの呪いの対象からも外れているのは、ザリアの棘が呪詛生成物の一種であり、使い捨てと言うか生え変わるのを前提としている存在だからだろう。


「そうそう。同じことよ。『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』」

『血でチュか』

 では私の場合はどうするか?

 回答は、『出血の邪眼・1』を自分に撃って、適度に出血の状態異常を付与した上で、藁人形に手を突っ込み自傷、藁人形に私の血を吸わせていく、だ。

 『出血の邪眼・1』の効果によって排出された血は風化の影響を幾らかは受けづらい。

 血は体内で生成されるものであるため、不老不死の影響を多少は受けづらい。

 なので、勝算はそれなりにあると踏んだわけだが……うん、少しだが血が藁に染み込んだ上で定着してくれたようだ。


「じゃあ、呪いましょうか」

『分かったでチュ』

 では後は呪うだけ。

 と言う事で、私は危険な攻撃から身代わりになってほしいと言う思いを込めつつ、呪怨台で呪う。

 そうして出来上がったのがこれである。



△△△△△

タルの身代わり藁人形

レベル:15

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:3


タルの血が染み込んだ藁人形。

タルに火による危機的被害が迫った時に、一度だけ身代わりとなって燃え尽きる。

人形が燃え尽きるまでの間、タルは火によるダメージを一切負わない。

注意:身代わりの効果を持ったアイテムを複数所有している場合、条件を満たしたアイテムは全て同時に使用されます。

注意:作成者以外が身に着けていても効果はありません。

▽▽▽▽▽



「……」

『まあ、保険としてはいい出来だと思うでチュよ』

「うんまあ、そうね」

 装備の都合で火炎属性の攻撃に弱い私が、一度だけその攻撃を防げる、と言うのはいい効果だ。

 だが、注意文からして、同じ効果の身代わりアイテムを複数個持っていても、意味はないらしい。

 やはり攻撃を受けないのが一番いいようだ。

 後は危機的被害と言うのがどの程度かだが……流石に火の粉を浴びたり、調理をしている程度で発動はしないだろうし、即死級の攻撃なら確実に発動するだろうから、たぶん大丈夫だろう。

 とりあえず、腰から吊るしておくとしよう。


「さて、後は明日の準備をして今日のところは切り上げますか」

『分かったでチュ』

 それにしても、こう簡単に身代わり人形を作れるのなら、あの方法が現実味を覚えそうだ。

 そんなことを考えつつ、私は多少の作業をしてからログアウトした。

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