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22:タルウィベーノ-5

≪タルのレベルが5に上がった≫

「ふむ、検証結果は中々かな」

 私の『毒の魔眼・1(タルウィベーノ)』によって、人型生物6人中4人は毒が100以上蓄積されて死んだ。

 逃げ出した2人についてはビルの陰に入られてしまったので仕留められなかったが、30から40程度の毒は蓄積されていたはず。

 上手くいけばその辺のモンスターが仕留めて、私におこぼれが来るかもしれない。

 なんにせよ私は毒吐きネズミたちとの戦闘経験も合わさってレベル5にレベルアップである。

 そして、それ以上の成果を私は得ていた。


「まず、私の邪眼の射程。500メートル以上は確実にある。場合によっては目視さえ出来ていれば、距離は問わないのかも」

 今回狙い打った連中が居たのは『ネズミの塔』から数百メートルは離れた場所。

 私が居るビルの高さは50メートルくらい。

 これらを合わせて考えれば、直線距離にして500メートル以上はあるはずだ。


「効果量については詳細通り。重症化させてダウンさせるのに2斉射必須だった」

 『毒の魔眼・1』の詳細に記されていた通り、私の邪眼で与えられる毒は対象の周囲の呪詛濃度によって与える量が決まる。

 以前『ネズミの塔』の外の呪詛濃度を見た時に表示された数字は5。

 となれば、私の13の邪眼が完全に効果を発揮しても、与えられる毒の量はマックスで65。

 だから、重症化……毒の蓄積が100を超えるには2斉射必要だったのだろう。


「撃ち分けは問題なく出来そう」

 13の邪眼を目ごとに対象を変えて撃ち込むのは上手くいった。 

 これは上手く使えば、半分ほどの目で真っ先に狙いたい相手を毒で侵しつつ、もう半分の目で周囲を牽制すると言う事も可能だろう。

 後は……相手のだいたいのHPが分かっていれば、適量の邪眼だけ向ける、なんて真似も出来るか。

 とにかく有用なのは間違いない。


「コストは詳細通り。斉射だと一回につきHPを130消費ね……」

 コストについては『ネズミの塔』の呪詛濃度が10なので……目一つにつき10ダメージ、合計して130ダメージだ。

 私の最大HPが1,000と少しであるので……斉射一回につき最大HPの一割以上を削られる事になる。

 一方的に攻撃できる環境なら、自然回復とポーションケトルによる回復が合わさって、ある程度は大丈夫だろうが……乱戦中などだと、かなりのリスクになりそうだ。


「んー、やっぱりネックになりそうなのはコストと効果量の計算式かしらねぇ」

 私はネズミたちの死体を解体するべく、セーフティーエリアへ移動する。

 ただ、道中でも先程の戦いについて少し考えてしまう。


「相手の方が呪詛濃度の低い空間に居ると、一回一回の効果量が下がって、コストと効果の比が悪くなる。これが一番の問題よねぇ」

 そう、私の『毒の魔眼・1』が現状抱える最大の問題はそれだ。

 今回の検証において、私の邪眼は『ネズミの塔』内部なら一度の斉射で重症化まで毒を持って行けるのに、外の相手に使ったら二度使う必要があった。

 単純計算でコストが倍かかるようになってしまっているのだ。


「でも、私の方のコストを下げるのは、計算式が変わらないと無理」

 だが、『毒の魔眼・1』のコストを私の周囲の呪詛濃度を下げる事によって減らすのはただの自殺行為だ。

 私の異形度では恐らく呪詛濃度8以下の空間に入ってしまうと、呪詛濃度不足の状態異常を発症してしまう。

 呪詛濃度9でも大丈夫だと言う保証はない。

 つまり、コストを良くする方法は計算式の変更一択で、現状ではその方法は不明である。


「効果量を高める方法は……相手の周囲の呪詛濃度を高めるか、計算式を変えるか」

 ならば効果量を高める方が可能性があるだろう。

 相手の周囲の呪詛濃度を高める方法については是非とも探っておきたい。

 それが出来るのであれば、私の周囲の呪詛濃度を高めることによって、『ネズミの塔』の外に出る事も出来るようになるはずだ。

 計算式を変えるのは……やはり方法は不明である。

 しかし、芽が無いわけでもないと思う。


「『毒の魔眼・1』に1と付いている以上、上位互換はあるはず。上位互換ならば、何かしらの改善点もあるはず。その改善点が何かは分からないけど、順当にいけば効果量の増強よね」

 そう、『毒の魔眼・1』はまだ覚えたてで、しかもゲームそのものも始まったばかり。

 ならば、今後改良や改善がドンドン進んでいくはずである。

 問題はその改善の方法だが……。


「毒噛みネズミの死体と毒吐きネズミの死体が2つずつ……」

 セーフティーエリアに着いた私は毛皮袋から死体を取り出す。

 魔眼による毒だけで倒し切ったため、傷口の一つすら存在していない綺麗な死体である。

 これをきちんと解体すれば、様々な素材が手に入る。

 毒噛みネズミの前歯や毛皮、骨と言った、私にとってはいつも通りの素材から、新規素材である毒吐きネズミの素材まで色々だ。

 そして、毒吐きネズミは……私に向かって毒を吐き出す攻撃を持っていた。


「まあ、同じ方法で強化を重ねていくのが現状では無難、かな」

 私の目が毒吐きネズミの口の中に向けられる。

 私が考える通りなら、この口の中の何処かに毒を生み出し、射出する機構があるはずである。

 それを見つけて、毒を製造して、量を集めて、呪怨台で変質させれば……『毒の魔眼・1』の強化を図れるかもしれない。


「よし、鑑定しつつ解体しましょう」

 『鑑定のルーペ』を左目に当てつつ、私は毒吐きネズミの死体の首筋にトゥースナイフを突き立てた。

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