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214:2ndナイトメアバトル-4

「二回戦勝利。おめでとうございます」

「ありがとう。案外苦戦した。スクナが倒れて、そのまま崩れるかと思ったら粘られた」

「アカバベナありがとう。マナブについてはほぼ間違いなくレベルも装備も、ライトリどころか私以下なのにあの強さ。今後が楽しみではあるわね」

 ライトリと私は打ち合わせ部屋に戻り、アカバベナが出迎えてくれた。

 で、部屋にアカバベナ以外のプレイヤーが増えていて、掲示板を開きつつ、他の試合を見ている。

 どうやら『光華団』から追加の後方支援要員が送られてきたようだ。

 となるとだ。


「ライトローズ・ストラス組は敗北?」

「ええ、残念ながら、マントデア・シロホワ組に敗れました。他の『光華団』メンバーも全滅済みなので、以降『光華団』はライトリカブト・タル組の支援に全力で当たらせていただきます」

 やはり敗れていたか。

 うんまあ、あの巨体にふさわしい身体スペックと、それを十全に生かせるプレイヤースキルを持ったマントデアと、HP回復を含めた各種支援を行える上に本人の戦闘能力もそれなりにあるシロホワの組み合わせは、今回のイベントの大本命と言ってもいい。

 敗れても仕方がない面はあるだろう。


「で、タルさん。『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)』についてはどうですか?」

「予定通りかつ仕様通りだけど、明日の今の時刻まで使用不可能。イベントだからと言って試合毎に使わせてくれる優しい処理はないみたいね。掲示板ではどんな感じに推測されている?」

「色々と感想と推測が出ていますが、鋭いものもありますね。使用後のCTが桁違いに長いのは完全にバレています。フェイントは一度くらいなら、たぶん通じるでしょう」

「なるほど。分かったわ」

 掲示板は大荒れのようだ。

 『光華団』の支援要員が見ている私とライトリについての掲示板が阿鼻叫喚な状態なのが横目で見えている。

 しかし、アカバベナの言う通りに鋭い指摘もあるようで、この分だと確かに使うフリによる足止めが一度出来るかどうかと言うところか。

 とは言え……


「アカバベナ、次の試合相手は?」

「今現在も試合は続いていますが、ブラクロ・ドージ組が押して……終わりましたね。ブラクロ・ドージ組の勝利です」

「……。きつい方が残ったわね」

 ブラクロとドージが相手だと、そもそも私の邪眼術そのものがかなり厳しいことになる。


「ライトリ。次の試合はライトリに頑張ってもらうしかないと思うわ」

「その心は?」

「ドージは浄化術……状態異常を回復する呪術、周囲の呪詛濃度を下げる呪術、それと恐らくは攻撃力を上げるための呪術も持っているわ。ぶっちゃけ私の邪眼術の天敵よ」

 私は以前ドージと一緒に行動した時の話をライトリたちに聞かせる。

 そして私の話を聞いたライトリたちは……揃って苦笑いをしていた。


「なるほど。タルさんがブラクロ・ドージ組を推していたのは、ブラクロのバフと戦闘能力ではなく、ドージの浄化術が原因でしたか」

「普通のプレイヤーにとっては浄化術はそこまで問題にはならない。けれどタルさんにとっては大問題、か」

 『光華団』の後方支援担当曰く、ドージはここまで時々状態異常の回復をするくらいで、後は普通に優れた格闘家のような動きしかしていなかったらしい。

 なので、私からもたらされた情報は想定外とまではいかなくとも、苦笑いをするだけの情報ではあったようだ。

 ただ一つ勘違いしないでほしいことがある。


「勿論、ブラクロの戦闘能力も推していた理由よ。ブラクロはスロースターターだけど、スイッチが入ればスクナ相手に真正面から一対一で粘れるレベルの近接戦闘能力持ち。厄介でないはずがないわ」

 ブラクロは普通に強い。

 普段と言うか非戦闘時の言動が何となく褒めづらいだけで、実力そのものは間違いなくトッププレイヤーなのだ。

 その実力のほどは、前回イベントの結果が物語っている。


「で、普通のスロースターターなら速攻で仕掛けて落とすんだけど……」

「タルさんの邪眼術とドージの浄化術の相性のせいで、それは叶わない、と」

「そういう事ね。いや、本当に厄介な組み合わせだわ……」

 まあ、今考えるべきは、そんな実力者同士かつ私との相性が最悪な二人をどう打ち倒すかだ。


「そうですね……。最悪、ライトリとドージは相打ちでもいいでしょう。タルさんとブラクロの組み合わせになれば、距離次第ですが、十中八九タルさんが勝てるはずです」

「まあ、そうね。ブラクロ一人と私一人なら、邪眼術の引き撃ちに徹すれば、負ける事はないと思うわ」

 アカバベナの言う通り、ブラクロと私の一対一なら、たぶん私が勝てる。

 ブラクロがスロースターターで、時間が経つほど本人のスペックが上がっていくにしても、私との相性差を覆せるほどではないのだから。


「となれば、やはり先に狙うべきはドージ。邪眼術が通じる可能性は低いから、私がメインとなってドージを落とす他ない」

「隠し玉の類は全部切るつもりで行きましょうか。これ、スクナ・マナブ組よりも厄介です」

「そうね。それくらいでいいと思うわ」

 やはりドージか。

 ドージをどうやって手早く処理するか、それが次の試合の争点になりそうだ。


「そう言えば、マントデア・シロホワ組の次の相手は?」

「ザリア・クカタチ組ですね」

 あ、ザリアもしっかり勝ち抜いているらしい。

 どちらと戦うにしても楽しいと同時に厳しいだろうが、付き合いの深さを考えると、ザリア・クカタチ組に頑張ってほしいものである。

 まあ、これについてはブラクロ・ドージ組に勝ってからか。


 そうして、準決勝の時間が来た。

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