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213:2ndナイトメアバトル-3

「久しいな。タル」

「久しぶりね。スクナ」

 対戦開始10秒前。

 2回戦に出場するプレイヤーがマップに揃う。

 環境は……一言で言えば砂浜。

 フィールドのおおよそ半分が白い砂が敷き詰められた砂浜で、もう半分が足首程度の深さがある海。

 植物の類は一切なく、日差しはきついが、体調に影響を及ぼすほどではないだろう。

 この環境は……私には影響なし、ライトリとマナブは多少移動に影響あり、スクナは残念ながら何の問題もなさそうだ。


「最初から全力で行かせてもらう。今回のフィールドには身を隠す場所はないようだからな」

 スクナは槍一本だけを持ち、他の手には複数本の短剣を握る。

 そして何時でも短剣を投げられる態勢に入る。

 まあ、このフィールドで私と戦うのであれば、当然の動きだろう。

 隠れる場所なんて何処にもないわけだし。


「師匠。僕は……」

「マナブはライトリを頼む。流石の私も盾役が居る中でタルを討てるとは思っていない」

「はい。頑張らせていただきます」

 マナブは素人目で見てもとてもきれいな姿勢で剣を構える。

 視線は真っ直ぐに、ライトリだけへと注がれる。

 これは私が多少何かをしたぐらいでは、集中を乱すことは出来なさそうだ。


「タルさん」

「分かってる」

 ライトリが盾と槍を構え、私は屈伸運動をして気持ちを整える。

 私たちのスペック上、戦いはそう長くは続かず、ほぼ最初で決まるだろう。

 ではカウントダウン3……2……1……


 0


「ふんっ!」

「せいやっ!」

「させません!」

「すぅ……」

 試合開始直後。

 スクナは横に飛びながら、私に向かって短剣を投げつける。

 マナブもライトリに切りかかる。

 ライトリはスクナの攻撃への対処は予定通りに諦めて、攻撃を防ぐ。

 で、私は邪眼術のチャージを開始しつつ、目玉琥珀の腕輪の効果と呪詛への干渉で周囲の呪詛濃度を一気に上昇させ、同時に斜め後方に向かって飛んで距離を取っていく。


「流石に速いが射程に……」

 やはりスクナは強い。

 恐ろしい勢いで私に短剣を投げつけつつ、砂浜であることを気にした様子もなく私の方へ駆けてくる。

 少しずつ距離が詰まってきている。

 だが、流石に間に合う。


「『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』」

「「!?」」

 私の目が紫色に輝く。

 その瞬間、スクナとマナブの動きが目に見えて悪くなる。

 今の周囲の呪詛濃度は10。

 与える恐怖は目一つにつき21で、スクナに8個、マナブに5個の目を向けた。

 結果、スクナに恐怖(155)、マナブに恐怖(102)の状態異常を付与することに成功した。


「呪術封じに行動阻害か!?」

「手足が震え……てっ!?」

 恐怖の状態異常の効果は呪術のチャージタイムとクールタイムの阻害だが、スタック値100で重症化して手足の震えによる行動阻害ももたらす。

 私の保有する邪眼術の中ではチャージもクールも短めかつ、行動阻害が付いているので、今回は最初に使ったのだが、正解だったようだ。

 明らかにスクナの投擲の精度が落ちて、避けるのが楽になったし、脚を進めるのも遅くなっている。

 では、十分な呪詛濃度も確保できたようだし、本命を仕掛けるとしよう。


「『inumutiiuy(イヌムチィゥィ) a() eno(エノ)』」

「師匠!?」

「そっちは任せる!」

 私は左手を胸元に当て、手のひらを地面に向けた状態で右腕を真っ直ぐ前へと伸ばすと、右手へと呪詛を集めていく。

 勿論、この間にもスクナの投擲は飛んでくるが、今のスクナの投擲ならば虫の翅による機動だけでも避けられる。


「『yks(イクス) nihuse(ニフセ)』」

 右手を反転。

 すると手のひらの上に彼岸花のような物が現れる。

 私はそれを握り潰す。


「『sokoni(ソコニ) taolf(タオロフ)』」

 彼岸花の花びらのようなものを周囲に散らしながら右手を胸元に持ってくると、私は全ての目を一度瞑る。

 なお、この間の機動についてはアカバベナに教えてもらった、ランダム機動を行うことで被弾を抑える。


「『nevaeh(ネヴァエー) esir(エシル)』」

 目を開ける。

 被弾は……まあ、3本くらいなら許容の範疇だ。

 恐怖のおかげで威力も控えめだし、刺さっている所も悪くない。


「『higanhe(ヒガンヘ) og(オグ) ton(トン) od(オド)』」

「『毒の(ベノム)投槍(ジャベリン)』」

「ぐっ!? 邪魔を……」

「すみません、師匠!」

 右手の人差し指と中指を伸ばす。

 するとそこに蘇芳色の刃のような物が生じる。

 私は生じた蘇芳色の刃を左手の手首に当てる。


「『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)』」

「「!?」」

 そして、左手の手首を切り裂いて大量の彼岸花の花びらをまき散らしつつ、私は両腕を広げる。

 その邪眼術の名前を告げつつ、スクナへと全ての目を向ける。

 虹色の光が13の目から放たれて、スクナの体を覆い隠す。


「ーーーーー!?」

 そうして、スクナが倒れる。

 表示された状態異常は毒(226)、灼熱(2,125)、気絶(13)、沈黙(224)、出血(225)、小人(58)、脚部干渉力低下(151)、恐怖(658)。


「師匠!? ぐっ、この……」

「そう、この程度で乱れるの!」

「ふぅ……はぁ……私が言うのもあれだけど、酷い威力ね……」

「……」

 多数の状態異常が全力で撃ち込まれた為だろう、スクナの見た目はもはや両足が潰れた小人の焼死体としか言いようのない状態になっている。

 あまりの惨状にマナブが心を乱して、ライトリが完全にペースを握ったほどだ。


「さて、私は今の内に距離を取らせてもらおうかしら」

 私は目玉琥珀の腕輪などの装備品の効果と呪詛干渉で周囲の呪詛を回収しつつ、マナブとライトリの二人から距離を取る。

 これは万が一ライトリがマナブに敗れても、確実に勝つためである。

 ここまでやって負けるのは御免だ。

 そうして、距離を取って移動している間にスクナはHPバーが尽きて戦闘不能。


「ふんっ!」

「ごはぁ……対戦……ありがとうございました……」

「こちらこそ、対戦ありがとうございました」

 私が『禁忌・虹色の狂眼』の共通CTを明けて、次の邪眼術を発動できるようになったころに、ライトリがマナブを仕留めた。


≪勝利しました! タル様、ライトリカブト様。準決勝進出おめでとうございます!≫

≪称号『脚縛使い』、『恐怖使い』を獲得しました≫



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル17

HP:672/1,160

満腹度:51/110

干渉力:116

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・2』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『七つの大呪を知る者』、『呪限無を垣間見た者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『大飯食らい・1』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『期せずして呪限無の門を開くもの』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』、『足縛の邪眼・1(タルウィフェタ)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)


所持アイテム:

毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置


呪怨台

呪怨台弐式・呪術の枝

▽▽▽▽▽


△△△△△

『脚縛使い』

効果:脚部干渉力低下の付与確率上昇(微小)

条件:脚部干渉力低下(100)以上を与え、脚部干渉力低下の効果が残っている間に生物を殺害する。


私の脚の力を削ぐ呪いの力を見るがいい。

▽▽▽▽▽


△△△△△

『恐怖使い』

効果:恐怖の付与確率上昇(微小)

条件:恐怖(100)以上を与え、恐怖の効果が残っている間に生物を殺害する。


私の恐怖の力を見るがいい。

▽▽▽▽▽


「あ……称号来た」

『テンプレ称号でチュね』

 テンプレ称号は効果が美味しいので、ありがたい。

 そんなことを思いつつ、私とライトリは元の空間に戻された。

08/15誤字訂正

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