212:2ndナイトメアバトル-2
「一回戦勝利。おめでとうございます」
「ありがとう」
「ありがとうね。アカバベナ」
一回戦を終えたライトリと私は打ち合わせ部屋に戻された。
そして、出迎えてくれたアカバベナが頭を下げ、全員一緒に席へ着く。
「万能薬は上手くいきましたね」
「味は最悪の部類だった……」
「そこは今後の課題と言う事で」
さて、先ほどのオンドリア・レライエ戦だが、ライトリは隠し玉の一つとして万能薬とでも言うべきアイテムを持ち込んでいた。
これを使用することで、レライエから未知のものを含む複数の状態異常を受けても、即座に回復することが出来たのである。
と言うわけで、折角なので、『CNP』の状態異常回復について少し。
知っての通り、『CNP』の状態異常は非常に種類が多い。
そして、普通の状態異常回復アイテムや呪術だと、対応している状態異常1種類のスタック値しか減らせないなんてことが良くある。
これは普通の状態異常回復アイテムや呪術を得る方法が、対応する状態異常を引き起こすアイテムを加工して作ることが多いからだ。
なので、未知の状態異常と言うのは極めて厄介なものになるのである。
しかし、今回ライトリが使用した万能薬は違う。
『ダマーヴァンド』産の状態異常アイテム5種類を元に、『光華団』専属の生産組が作った万能薬は、効果量が多少控えめではあるものの、だいたいの状態異常は回復できるという物だったのである。
その有用性は先ほどの試合を見た通り。
私のような状態異常特化型にとっては極めて厄介なアイテムと言えるだろう。
「言っておくけど、イベント後に『ダマーヴァンド』からアイテムを出してほしいと言われても、その気はないわよ」
「分かっているから大丈夫です。イベント後は自力で作れないか、『光華団』で試行錯誤してみます」
まあ、プレイヤーが普段使い出来るようになるのは当分先だろうけど。
後、万能薬が一般的になったらなったで、私は一種類の状態異常を重ねるだけだし。
「では、今すぐに直すべき反省点もありませんし、そろそろ次の対戦相手について話しましょうか。次の対戦相手は事前の予想通り、スクナ・マナブペアになりました」
「まあ、妥当ね」
「知ってる」
さて、次の対戦相手についてだ。
次の相手はスクナとマナブと言う名前のプレイヤーだ。
「スクナについては改めて説明する必要はないですね。順当にパワーアップしていて、手を付けられないだけです」
「ですよねー」
『でチュよねー』
「知ってた速報ー」
スクナは……まあ、変わらず。
私が『藁と豆が燻ぶる穴』で出会った時と比べると全体的に装備がよくなっている他、後頭部の頭が詠唱キーを用いてスクナに攻撃力増加のバフを乗せられるようになっているが、それぐらいだ。
厄介なのは変わらないが、元からなので、特に問題ない。
二回戦で当たる事も予見できていたので、どうやって対処するかも既に考えてある。
「問題はペアの相手であるマナブですね。彼、成長が止まりません」
「「……」」
問題はもう一人だ。
プレイヤーの名前はマナブ。
見た目は狼の頭、トカゲの腕、鳥の足、猫の尻尾を持った、正に異形と言った感じの見た目。
武器は飾り気のないシンプルな金属製の剣で、防具もシンプルなもの。
アカバベナ曰く『身に着けている物のスペックからして、『CNP』を始めてから2週間経つかどうか』であるらしい。
だいたいクカタチと同じ頃に始めたと言う事だろう。
「こちらは一回戦の映像になりますが、格上のプレイヤーをソロで討ってます」
「予選中にスクナから指導を受けて、ゲーム内たったの数時間でこれか。末恐ろしいわね」
「元から現実で何かをやっていたとは思う。それでも凄いとしか言いようがない」
が、マナブは一回戦で、スクナが相手の片方を切り倒した後に一対一で戦う機会を与えられ、勝利している。
それも私のような搦手型ではなく、ライトリやロックオ、エギアズ・1と言った直接戦闘型と戦ってだ。
スクナの指導力もあるだろうが、マナブに素質があるからこそでもあるだろう。
「でも、一対一なら、私が勝つ」
「そうね。一対一なら、ライトリに分があると思うわ」
「では、事前の作戦通りでいきましょう。この先を考えると多少不安ではありますが、これが一番勝率も高いでしょうから」
ちなみにスクナの個別スレではマナブは予選開始当初寄生扱いをされていたが、予選が終わるころには手のひら返しされている。
スクナの普段の相方程ではないが、一緒に戦えるだけのプレイヤーだと周囲が認めていると言う事だ。
「ちなみに、この先については、私は準決勝はブラクロ・ドージ組、決勝はマントデア・シロホワ組かザリア・クカタチ組だと思っているんだけど」
「どうでしょうか? 準決勝はエギアズ・1とアルビーノの組、決勝は
「準決勝は分からない。決勝は団長読み。マントデア組もあり得そうだけど。タルさんの読み理由は知り合いだからじゃないの?」
「知り合い補正はあるかもだけど、それを抜きにしても強いのよ。余裕があったら、調べておいて」
「まあ、一応先ほどまでよりも詳細に調べておきます。団長でも回復付きのマントデアは厳しいでしょうし」
さて、そうこうしている内に二回戦の時間である。
次の試合はきっと一瞬も気を抜くことは出来ないだろう。
だが、リベンジを目指して、挑むのみである。
「では、お気をつけて」
「ええ」
「はい」
そうして準備を整えた私たちは二回戦の舞台へと飛ばされた。