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211:2ndナイトメアバトル-1

「さて本戦ね」

 本戦開始10秒前。

 私たちは本戦一回戦のフィールドに転移した。

 フィールドの内容としては……住宅街と言うのがよさそうか。

 煉瓦でできた塀や家、人が一人隠れられる太さの木々、用水路と言った物が見える。

 なお、いずれも崩れかけである。


「彼らが相手です」

 ライトリが盾と槍を構えて、いつ戦いが始まってもいいように備える。

 私はそんなライトリの背後に無音で移動しておく。

 なお、私は小人状態にはなっていない。

 小人状態は今回の相手と言うか、本戦では使い勝手が悪いと判断したからだ。


「コケーコココ、邪眼妖精と『光華団』のタンクとは相手にとって不足なし! さあ、楽しくやり合おうぞ!!」

 オンドリアは腰を少しだけ落として、構えを取る。

 私の知識の範囲内だと、レスリングの姿勢に近いだろうか。

 見た限りでは予選からの装備の変更はなし。


「……。やかましいぞ。オンドリア」

 オンドリアの相方であるレライエは長い腕と巨大な弓を地面と水平に構えると、矢筒から取り出した、まるで槍のような矢を軽くつがえる。

 何故か靴を履いていない第三の脚も既にしっかりと地面に付いているようだし、これは開幕で撃ち込まれそうだ。

 こちらも装備の変更は見えない。


「何を言うかレライエ! 強敵だぞ! 強敵と戦うのがつまらない者が居るわけないだろう!! コケーコオォ!!」

「僕は楽に勝てる方が嬉しい。まあいい、予選と同じだ」

 カウントダウン3……2……1……。


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「コッケ……っ!?」

「せいっ」

「ふんっ!」

「させません!」

 試合開始直後に全員が動いた。

 オンドリアは呪術でもある叫び声を上げようとしたが、これは私の『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』による一瞬の気絶で強制中断。

 その私を狙って、横に少し飛んだレライエが矢を発射。

 だが、そちらは事前に予測して同様に飛んでいたライトリが盾で軌道を逸らすことによって防御。

 レライエの矢は私たちの後方にある煉瓦の塀に深々と突き刺さる。


「予想はしていたが厄介な!」

「……」

 オンドリアが私に飛びかかろうとするが、ライトリが進路上に割り込む。

 そしてオンドリアが蹴りかかってきたが、ライトリはそれを盾で防ぎ、僅かだが反撃の毒をオンドリアに乗せる。


「前は任せた」

 レライエは私の視界から逃れるように後方へと移動開始。


「呪詛展開」

 私は邪眼術のチャージを開始しつつ、目玉琥珀の腕輪の効果で『ダマーヴァンド』から呪詛を呼び寄せ、周囲の呪詛濃度を上げていく。

 その上で呪詛を操作して、オンドリア周囲の呪詛濃度を上げる。

 レライエは……既に建物の陰に入ったか、まあ、私相手なら当然の行動だ。


「『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』」

「む……っ!?」

 チャージが完了したので、私はオンドリアに『毒の邪眼・1』10発と『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』1発を撃ち込む。

 なお、『沈黙の邪眼・1』は動作キー発動だ。

 で、オンドリアに与えた状態異常は毒(120)と沈黙(12)。

 これで後は放置でもいいが……。


「ふんっ」

「ま、憂いはちゃんと断っておくべきね」

 そこはライトリが毒の重症化で苦しむオンドリアの頭にきちんと槍を突き刺して、始末しておく。

 私たちの隠し玉の一つのような物をオンドリアが持っていても困るので、当然の対応だ。


「タルさん」

「分かってる」

 さて、問題はここからだ。

 オンドリアの時間稼ぎによって、既にレライエは私の視界の外に移動済みであり、視界の中に私たち以外に動くものはない。

 なので私はライトリと共に、一先ず近くの建物の中へと移動を始める。


「2時方向!」

「っつ!」

 と、ここで山なり軌道を描いた矢が2時方向から飛んできたため、ライトリがそちらに向かって盾を構え、防ぐ。

 で、飛んできた矢だが、矢じりから尾羽に至るまで全てが呪詛の霧に似たカラーリングで染められており、矢じりには馴染みのある臭いを放つ深緑色の液体が塗られているようだった。

 どうやら狙撃に適した矢をレライエは使ってきているらしい。

 毒が『ダマーヴァンド』の毒液なのは、今は追及しないでおこう。


「タルさん。相手の姿は?」

「見えないわね。遮蔽物の位置と密度からして、やっぱり何かしらの方法でこっちを感知していると思う」

「では、予定通りに」

「そうね。予定通りに」

 ライトリが盾を構えた状態で、ゆっくりと矢が飛んできた方向に向かって前進していく。

 ライトリの防御力ならば、至近距離で防具がない場所に、水平で撃ち込まれない限りは大丈夫だろう。

 対する私はゆっくりと羽ばたいて、ライトリから距離を取ると、そのまま地面に脚を付かないように注意しつつ移動を開始。

 レライエの感知方法が私の予測通りなら、これで私の位置は分からないはずだ。


「12時! 1時!」

 ライトリの叫び声が本選マップに響き渡る。

 事前の取り決めで、ライトリはひたすら直線に移動し、攻撃を受けたら、どちらの方向から攻撃が来たかを叫ぶ事になっている。

 私はその声と、建物の上を飛ぶ矢の動きからレライエの位置を予測して、少しずつ移動していく。


「3時! っ!? 軽度の毒・悪臭・激痛!」

 どうやらレライエは複数の状態異常を引き起こす矢を使用しているらしい。

 とは言えだ。


「5時! 5時! 5時! 矢の威力強化の呪術あり!」

 状態異常の対策はしっかりとやっている。

 そしてレライエの焦りを示すかのように、矢を放つペースは明らかに早まっている。

 そうなれば必然的に私もレライエの位置を探りやすくなる。


「『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』」

「しまっ!?」

 そうして私はレライエを発見。

 レライエ周囲の呪詛濃度を10まで引き上げた上で『毒の邪眼・1』を斉射。

 レライエは毒の重症化によってその場で倒れ伏す。


「むぐうっ……最後っ屁が痛いわね」

 が、流石は本戦まで残ったプレイヤーと言うべきか、こちらの『毒の邪眼・1』に合わせるように矢を放ち、私の腹を矢が貫通。

 HPは一気に半分以下にまで減らされると共に、毒(12)、悪臭(1)、激痛(2)と状態異常が表示され、それなりに強い痛みが襲い掛かってくる。

 とりあえずレライエに何かしらの解毒アイテムを使われても面倒なので、追加の『毒の邪眼・1』を撃ち込んでおくとしよう。


「ふんっ、せいっ!」

「万能薬……だと……そして何故、激痛状態で普通に動け……ガフッ」

 そうして数十秒後、レライエは毒のダメージとライトリの攻撃によって倒れた。


≪勝利しました! タル様、ライトリカブト様。二回戦進出おめでとうございます!≫

≪タルのレベルが17に上がった≫



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル17

HP:425/1,160

満腹度:82/110

干渉力:116

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・2』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『七つの大呪を知る者』、『呪限無を垣間見た者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『大飯食らい・1』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』、『期せずして呪限無の門を開くもの』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』、『足縛の邪眼・1(タルウィフェタ)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)


所持アイテム:

毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置


呪怨台

呪怨台弐式・呪術の枝

▽▽▽▽▽



「あ、久しぶりにレベルが上がった。17ね」

「意外と低い。前線組はもう20なのに」

 無事に一回戦勝利である。

08/13誤字訂正

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