210:2ndナイトメアトーク-2
「これでよし」
「メッセージですか」
「ええ、ストラスさんから、イベント終了後でいいからインタビューをさせてほしいというメッセージが来たわ」
さて、リアルでの雑事を済ませて再ログイン。
私はライトリが打ち合わせ用に用意してくれた個室に来た。
なお、ストラスさんからのメッセージにはイエスで返しておいたが、インタビュー日時や方法については後日打ち合わせである。
これについては私もストラスさんも本戦に出場しているので仕方がない。
「じゃ、こちらはこれで問題ないわ」
「では始めます」
「ええ、よろしくお願いします。タルさん。ライトリカブト」
私はこの部屋の中に居る二人へと視線を向ける。
そう、二人だ。
一人は私の今イベントの相方であるライトリカブト。
そしてもう一人は……
「では、改めて自己紹介から。私は『光華団』の後方支援担当アカバベナと申します。本戦で必要な道具の調達、対戦相手の解析、戦術の提案を支援させていただきます」
「ええ、よろしく」
「はい」
『光華団』から私たちの支援を行う人員として派遣されたアカバベナだ。
アカバベナは、見た限りでは頭で赤い花が大量に咲いている以外には異形がなく、服装も外での戦闘ではなく生産などの街の中での活動を重視している感じだ。
うん、流石は『光華団』と言うべきか、裏方もしっかり揃っているらしい。
「さて、まずは相手の確認からですね。お二人の一回戦での対戦相手はオンドリアとレライエと言います」
では、話し合いを始めるとしよう。
まずは確認からだ。
「オンドリアは一言で言うならば鶏人間ですね。ただ、狼人間として有名なブラクロのような全身くまなくではなく、腕と頭だけが鶏になっているようです」
オンドリアは前回のイベントの本戦で熊ですとやりあっていた覚えがある。
あの時の戦闘スタイルは格闘家と言う感じだった覚えがある。
今は……鶏らしく甲高い鳴き声を上げる事でバフを撒きつつ、殴る蹴ると言う感じか。
武器は持っておらず、防具も胴と脚を守るだけで軽装と言っていい。
「レライエは弓使いです。常人の倍の長さの腕を利用した巨大弓を扱った狙撃を予選で行っていますね。呪詛の霧によって視界が制限される『CNP』においては極めて珍しいスタイルと言えるでしょう」
レライエ。
こちらは初めて見るプレイヤーだ。
外見でとにかく目を引くのは、アカバベナも言ったとおり、常人の倍の長さがある両腕と、その腕の長さに見合った大きさの巨大弓。
三本目の脚によって土台を安定させた上で、特製の矢をつがえ、霧の向こうに向かって弓を放っている姿を見る限りでは、だいぶ慣れている感じがある。
防具については普通な感じだ。
「確かに狙撃。でも、射程が500メートルを明らかに超えていますね」
「はい。このことから、弓矢に何かしらの誘導機能が付いているか、視覚以外の何かしらの方法で相手の位置を把握していると私は考えています。可能性としては後者の方が高そうですが」
予選でレライエが行った狙撃は最大のもので、500メートルと少し離れた場所に居たプレイヤーを撃ち抜いて、即死させている。
矢の飛距離についてはそう言う弓、呪術を使っているでいいとして、狙いを付けている方法は……ちょっと予選のレライエの行動を全部見てみるか。
6分割ぐらいすれば、直ぐに見終わるだろう。
「タルさ……6分割!?」
「気にしたら負けです」
「ああうん、アカバベナの言う通り、視覚以外の方法で感知しているわね。風の影響は考慮してそうだけど、基本的に真っ直ぐに構えているし、時々外している姿もあるから、誘導ではなさそう」
『たるうぃ、3つの目で6つの画面を認識するのはちょっとどうかと思うでチュよ……』
ザリチュのことは放っておくとしてだ。
予選での映像を見た限りでは、レライエは聴覚……いや、地面の振動を感知しているように思える。
静かに移動していても感知しているが、激しく走り回っている相手の方がより正確に感知している感じがあるからだ。
うん、私の予測が正しければ、空中浮遊、虫の翅を持っている上に小人化まで出来る私は、位置が把握できず、攻撃の射程も同程度なので、レライエにとっては天敵に近いかもしれない。
「こ、これが邪眼妖精……」
「アカバベナ。他にも出すべき情報はあるはず」
「そ、そうでしたね」
さて、この二人が組むとどうなるのか。
ぶっちゃけそれは誰にも分からない。
と言うのも、オンドリアとレライエは得意な距離がまるで違うためか、予選開始と同時に別行動を開始。
それぞれが1対2を制し続ける事で本戦に勝ち上がってきたからだ。
ただ、予選開始時の様子を見る限りでは、性格面での相性はそこまでよいものではなさそうだ。
そうなると予選で見せていなかっただけで、戦術面での相性は極めて良いものである事になるが……。
「オンドリアはそれなりに活動している姿が目撃されているので、情報も多いです。しかし、レライエはソロかつ狙撃専門であるためか、目撃情報すらも多くはありません。実力は確かですが、未知の部分が多いです。後方支援担当としては申し訳ないと言う他ありませんね」
「まあ、これについては仕方がないわね。私だって普段はあまり知られていないし」
「うん、仕方がないです」
「お二人とも……ありがとうございます」
まあ、分からん。
情報不足だ。
順当にいけば、後方からレライエが精度のいい狙撃を行って前線で戦うオンドリアを支援する、そういう組み合わせ方になるだろうが、それぐらいだ。
「では、どう戦うかを実際に話し合いましょうか。それと必要なアイテムの確保も」
「分かったわ」
「分かった」
そうして時間は過ぎていき、本戦開始時刻となった。