206:2ndナイトメアヒート-7
「こんなの勝てるかああぁぁ! ぐぼうっ!?」
さて、チーミングしてきたプレイヤーたちを返り討ちにして暫く。
一眠りして目覚めた私とライトリは予選マップをゆっくりと移動しつつ、遭遇した敵を仕留めていった。
つまり、ライトリが単独行動をしていると勘違いして襲い掛かってきたプレイヤーは、私が『
「た、タルだ! 逃げっ……毒……が……」
私に気づいたり、ライトリが『光華団』の一員であると知っていたり、一人だったり、その他諸々の要因で逃げ出そうとすれば、『
そんな感じである。
「タルさん。周囲に敵は?」
「見た限りでは居ないわね」
「では、進みましょうか」
「そうね」
ぶっちゃけ、かなり安定して戦えている。
私の視覚とザリチュの嗅覚を誤魔化せるプレイヤーはまず居ないし、仮に居てもライトリの防御は貫けない。
そもそも、ライトリ自身も探索能力持ちのようであるから、不意打ちなんて出来ない。
攻撃は二人ともそれなりにある。
と言う事で、危ない場面はまるでない。
尤も、何があるか分からないのが予選なので、最後まで油断する気はないが。
「これで6回目の縮小。エリア縮小はまだまだ気にしなくてよさそうです」
「呪詛濃度は8。矢印は……あ?」
『長さも方向もほぼ同じのが6本でチュかぁ』
と、ここで予選開始から6時間経過。
エリア縮小、呪詛濃度上昇、他プレイヤーの位置表示の全てが同時に行われた。
その結果、6本の矢印が長さも方向もほぼ同じと言うか、重なるように表示された。
残りのペア数は私たち含めて5組。
これは、現在進行形で争っているのでなければ、少なくとも3組は組んでいるな。
全生存だと矢印が2本ほど足りないので、そこは気を付けておこう。
「向かいます」
「そうね」
ライトリが盾を消し、私を肩に乗せて、勢いよく駆けていく。
うん、私が自力で飛ぶのより明らかに速い。
ライトリの脚部にかかっている呪いはやっぱり便利そうだ。
「ストップ。うわっ、面倒くさいわねぇ」
『簡易砦、と言うところでチュねぇ』
「何が見えますか?」
私の視界に矢印の向かう先にあるものが見えた。
それは……一言で言ってしまえば砦、あるいは戦車と言うところだろうか。
木製の壁を複数枚組み合わせて作った箱が、平原をゆっくりと移動している。
材料を持ち込んだのか、予選マップで森の木々を伐採して作ったのかは分からないが、覗き穴付きの箱がゆっくりと移動しているのだ。
しかもこちらに向けて。
で、これをライトリに説明したところ……。
「チーミングですね」
「ええ、間違いなくチーミングよ。しかも、さっきのと違って、ガチガチに守りを固めてる」
「攻略は出来そうですか?」
「うーん、所詮は木製だし……『
ライトリはゆっくりと後退を始めた。
うんまあ、私の邪眼は対生物に寄っているし、あの砦はライトリのほぼ上位互換みたいなものだしで、マトモにやりあっても勝ち目はないか。
「あ、ストップ。ライトリ、相手は動きを止めたわ」
「分かりました。でも何故?」
「『今の『
「なるほど」
ザリチュに言われて気づいたが、そうなると『灼熱の邪眼・1』を撃ったのは失敗だったかもしれない。
『毒の邪眼・1』や『沈黙の邪眼・1』の方が正解だったか。
まあ、内部構造が分からないから、元から上手くいく可能性は低いのだけど。
私の存在がバレたのは……『灼熱の邪眼・1』もそうだが、相手メンバーの異形度の問題もありそうか。
ライトリがそうであるように、視界が制限されていないプレイヤーの数が確実に減っている中で、視界制限外の位置から攻撃してしまったし。
「それにしても、彼らはどうやって勝つつもりでしょうか。射程と索敵はこちらのが圧倒的に上。あの移動スピードでは、こちらの引き撃ちは容易。こちらから攻め込むことは出来ませんが、向こうから攻めることも出来ないでしょう」
「……。まさか、サプライズイベント待ちとか?」
「運ゲー……と言うほど分の悪い賭けではないですね。相手は6人で、こちらは2人。相手は砦のおかげである程度は持ちこたえられ、私たちにはそういう備えはないですから」
「出てくるカース次第ではあるけど、勝ち目は十分って言うのが嫌らしいわね」
しかし、そうだとすると……私としては微妙な顔をしたくなる。
チーミングは上位プレイヤーに下位プレイヤーが勝つ手段でもあるし、ルール上の問題もないから問題はない。
簡易砦に至ってはこの状況下でそんな物を作り上げたことに対して称賛の言葉を送りたいくらいだ。
だが、そこまでして肝心の勝負を決める要因にサプライズイベントを持ってくる?
もし本当にそうなら、身勝手なのは分かっているが、最後は自分の力で戦えよとか言いたくなってくる。
「と、誰か出てくるわね」
「なら……」
と、ここで砦の一部……私が中を目視できない位置で板が動き、中から誰かが出てくる。
よし、対策はしているだろうが、狙い撃たせてもらおうか。
「勿論よ。『
私は出てきたプレイヤーを狙い撃った。
が、遠目に見ても、出てきたプレイヤーはクマのぬいぐるみそのものの姿をしていた。
間違いなく熊ですだ。
そして、『毒の邪眼・1』が確実に命中した熊ですは、こちらの方を見た後、平然と砦の中に戻っていった。
「この距離で口の中を狙い撃つのは……流石に無理ですよね」
「無理ね。てか、また、選択をミスったわ……」
『今は『
あーうん、失敗した。
多少のアイテムでの対策なら、私の邪眼術には関係ないという見込みの下で『毒の邪眼・1』だったけど、そもそも特定部位を狙わないと一切効果がないタイプだったか……。
「動く気配はなし。これ、完全に待ちの態勢に入られたわね……」
「さて、どうしたものですかね」
『厄介でチュねぇ』
さて、どう攻略するべきだろうか。
私は自分の手札を頭の中で並べ始めた。