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202:2ndナイトメアヒート-3

「「……」」

 転移直後。

 ライトリは槍と盾を構えて、何処から攻撃が来てもいいように構える。

 私はライトリの頭上で全方位を確認。

 周囲の地形と敵影を確認する。

 地形は……荒野、障害物は灌木と小さめの岩ぐらいしか、エリアの境界まで存在していない。

 敵影は二組。

 片方は北の方角、隣のエリアとの境界に現れた二人組で、既にこちらを認識している。

 もう片方は南の方角、隣の沼地エリアの中に出現してしまったようで、状況把握に戸惑っている。


「『光華団』! 速攻で仕掛ける!」

「理由は分からんが一人だ! 狙うぞ!」

「まずはこっち」

「そうね」

 北の二人がこっちに向かって突っ込んでくる。

 どちらも革製の装備で身を固めていて、手には金属製の武器を持っている。

 異形は……気にしなくていいか。


「『脚縛の邪眼・1(タルウィフェタ)』」

 私は二人のプレイヤーをある程度引き付けたところで、10の目で『脚縛の邪眼・1』、2の目で『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』を詠唱キーと動作キーでそれぞれ発動。

 また、発動に合わせて、二人のプレイヤーの周囲の呪詛濃度に干渉して、濃度を1だけ上げる。

 結果、黒色と橙色の光と共に二人のプレイヤーにはそれぞれ脚部干渉力低下(5)、沈黙(7)が付与された。


「ーーー!?」

「……!?」

 さて、走っている最中に脚部干渉力低下が入ったらどうなるだろうか?

 数字にすればたった5%であるが、脚が自分の思い通り動かなくなるのだ。

 ならば……二人とも派手に転ぶに決まっている。

 沈黙状態の為に悲鳴一つ上げられないが。


「ふんっ!」

「!?」

 そして、派手に転ぶなんて明らかな隙を見逃すライトリではない。

 ライトリは盾を消すと、勢いよく駆けだし、駆けた勢いのまま、プレイヤーの片方を馬上槍で串刺しにする。

 これで先ずは一人。


「せいっ!」

「ーーー!?」

 そのまま馬上槍を振り下ろし、残ったもう一人のプレイヤーを叩き潰して、即死させる。

 これで二人目。

 そして一組脱落だ。


「『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』」

 で、ライトリが私の近くに戻ってくるまでに、南側に居たプレイヤーの周囲の呪詛濃度を6に高めた上で、『毒の邪眼・1』と『沈黙の邪眼・1』を順次撃ち込んでいく。

 沼地にいる二人は逃げる事も助けを求めることも出来ずに沈んだ。

 これで二組目だ。


「現在の生き残りは382組。既に半分くらいです」

「ファーストコンタクトと開幕事故で、と言うやつね」

 周囲に敵影はない。

 さて、これで一先ずの安全は確保したか。


「それじゃあまずは……」

「エリア予測結晶体を確保してるから、それを使います」

「お、幸先いいわね」

 ライトリが黒色の正八面体を砕く。

 どうやら先ほどの二人の死体から得られたようだ。

 で、使用したライトリ曰く、私たちが今居る場所は2時間経っても、エリア縮小結果の予測線すら見えないらしい。

 どうやら、私たちが居るのは第7ブロックの中でも中心に近い位置のようだ。


「どちらに向かいます?」

「あちらに丘になっている場所があるわね。まずはそちらに向かいましょう」

「分かりました。警戒は任せます」

「任されたわ」

 私はライトリの兜の上に座り、その状態のままライトリが西に向けて移動を始める。


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「……」

「分かってはいたけど、沈黙の状態異常の強さはおかしい」

「まあ、スタック値1でも10秒。PvPで普通のプレイヤー相手だと、スタック値10もあれば、死ぬまで一言も許さない。なんて真似が出来るものね」

 さて、500メートルほど移動して、私たちは小高い丘を登り始めた。

 すると当然と言うべきか、他にもプレイヤーが居たので、『沈黙の邪眼・1』で黙らせた上で、ライトリが仕留めた。

 なお、彼らは『沈黙の邪眼・1』を食らったことで、ようやく私の存在に気づいたようだった。

 私の想像以上に、小人の状態異常は正体を秘匿しているらしい。


「修正は来ると思う?」

「うーん……沈黙自体の修正は来ない気がする。沈黙状態を回復するアイテムや沈黙状態を防ぐアイテムは入手しやすくなるような修正はあり得るかもしれないけど」

「沈黙耐性、私も考えておきますか」

「必要なら、予選突破後に沈黙効果のあるキノコか毒草を渡しましょうか?」

「考えておく」

「『ダマーヴァンド』には腐るほどあるから、在庫は安心して」

 なんにせよ、これでこの小高い丘は制圧した。

 この丘は時折木が生えている以外には障害物らしい障害物はなく、生えている草も丈が短いもので、極めて見通しの良い丘である。

 周囲の地形は……東は先ほどの荒野、南東から南は沼地、南西は森、西は溶岩の川、北西は砂漠、北東は氷河のようだ。

 ライトリ曰く、次々回のエリア縮小の予測線は丘の頂上に立って西の方を向くことで、ギリギリ見えるかどうかと言うところらしい。


「で、これから開始2時間後の呪詛濃度上昇までは大人しくしましょうか」

「分かりました。それまでは準備ですね」

「そうなるわね」

 さて、現状ではそれなりに居る異形度5のプレイヤーは視界が制限されていない。

 その状態で狙撃を仕掛けるのは、やはりリスクが大きい。

 なので私とライトリは先々の仕込みをしつつ、2時間経過するのを待つことにした。

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