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196:2ndナイトメアプリペア-2

「それで? NPCとのフラグと言っていたけど、具体的にはどうやって発生させるの?」

「んー……前回は街中を歩いていたら、向こうから接触を仕掛けてきた感じだったのよね」

 えーと、私の記憶通りだったら、確か見られている気配が最初にして、出元を探ったら聖女ハルワが居た。

 で、相手が話しかけてきたから、それに応じたと言う流れだったわね。


「向こうからねぇ……」

「ちなみに条件を満たしていないと、相手の姿は認識できないわ。まあ、今回の条件は前回とは別だろうけど」

「運任せと言うか、結構厳しそうね」

「そうね。だから、ブラクロたちとの合流を第一にすればいいと思うわ」

 なお、前回の条件は推定だが、プレイヤーの異形度が一定値以上であることだと思う。

 掲示板のログを改めて見た限りでは、私含めて異形度が高いプレイヤーにしか認識できなかったようだし。


「ウィナー、青コーナー!」

「「「ーーーーー!!」」」

「模擬戦は盛り上がってるようね」

「今回はペア戦で、組み合わせによっては立ち回りが大きく変わる可能性もあるし、前回ほど神経質になる必要はないのかもしれないわね」

 広場では前回と同様に模擬戦をやっている。

 ただ、今回はイベント本番がペア戦であるためか、1対1だけではなく、2対2の模擬戦も行われているようだ。


「結構鑑定をしているプレイヤーが居るわね」

「マナーが……ああなるほど。この模擬戦の舞台に上がったプレイヤーは鑑定自由って書いてあるわ」

『目立ちたいと言うか、自分を売り込みたいプレイヤーが集まっていると言うことでチュか』

 舞台上のプレイヤーに『鑑定のルーペ』を向けているプレイヤーが多いから何事かと思っていたが、どうやらこの舞台は最初からそういうルールで運用されているらしい。

 鑑定されても分かるのは称号、名前、HPくらいだから問題はないという認識なのだろうけど……。


「ザリア、ザリアの『鑑定のルーペ』もアップグレードされたようだけど、どういう効果が付いたの?」

「私は相手のHPの量をバーで表示する機能ね。そういうタルは?」

「私が使える邪眼限定で、相手の耐性が分かるわ」

「そう言うのもあるのね。と言うことは……」

 カロエ・シマイルナムンの素材によって『鑑定のルーペ』がアップグレードされるようになった現状だと、割とヤバいルールである。

 おまけに、そのことに気づいているっぽい『エギアズ』と『光華団』の調査員と思しきプレイヤーの姿も見えるし、その二組織以外にも何処かのグループの人間っぽいプレイヤーは居る。


「まあ、私たちは観戦に留めておきましょうか。後、ブラクロたちを探さないと」

「そうね。そうしましょうか」

 まあ、自分からバラしても問題ないと判断したプレイヤーしか舞台上には居ないので、気にしないでおこう。


「あ、思い出した。ザリア、『鑑定のルーペ』って鑑定するとどうなるのかしら?」

「『鑑定のルーペ』の鑑定? 確か『CNP』が始まって直ぐに検証班が鑑定不可能と言う鑑定結果を出していたと思うけど……あ、待った。今だと変わる可能性はあるわね」

「ちょっと試してみましょうか」

「そうね」

 と、他プレイヤーの『鑑定のルーペ』で思い出したので、私は『鑑定のルーペ』をザリアの『鑑定のルーペ』に向けてみる。


「タルのは翅が付いたのね」

「そう言うザリアのはサボテンの花よね」

「可愛いでしょ」

「可愛いし、よく似合っていると思うわ」

 で、鑑定。

 結果はこうなった。



△△△△△

鑑定不能

▽▽▽▽▽



「で、鑑定結果は想定通りと言う感じね」

「そうね。一段階のアップグレードじゃ駄目だって事でしょうね」

 どうやら、『鑑定のルーペ』を鑑定するためには、もっと性能が良くなる必要があるようだ。

 しかし……初期装備のボロ布と言い、『鑑定のルーペ』と言い、最初から持っている物の方が世界観的にはヤバい代物と言うあたりに、色々と感じる物がある。

 まあ、不老不死の呪いは『七つの大呪』の一つであるし、初期装備はそれに連なるものと考えたら、妥当な気もするけど。


「便利じゃよな。『鑑定のルーペ』。馬鹿弟子のは儂もよく使わせてもらっておるわ」

「あら……」

「え、誰?」

 と、いつの間にか、少しばかり顔の(しわ)が少ないイグニティチが私たちのすぐ横まで来ていた。


「イグニティチ……で、いいのよね?」

「なぜ疑問形なんじゃ?」

「少し皺が少ないから?」

「此処は夢の中じゃからな。儂の主観で少し若返っておるんじゃろ」

 イグニティチの言葉で私は察した。

 ザリアも察したのだろう、少しだけ表情が変化している。


「夢の中ね……イグニティチが今回の夢の主なのかしら」

「いや、儂は主じゃが、正確には主の一人じゃな。儂が主なら、絶対に夢には出さぬものを此処までに見かけておる」

「へー、そうなの」

 イグニティチはNPCだ。

 それが夢の中に居て、しかもプレイヤーに自分から声をかけに来ている。

 しかも内容が、自分が主だと認めるもの。

 完全にイベント発生である。


「と言うかタルよ。儂の見立てが正しければ、不老不死の呪いがなければ、今回はお主も夢の主の側だったと思うぞ」

「へ?」

「タルが?」

 イグニティチの言葉に私は思わず間抜けな声を出してしまった。

 うん、流石に私が夢の主になる展開は想定していなかった。


「では折角じゃ。今のうちに話せること話しておこうかの。そちらの美人さんと一緒に適当に茶でも飲みながら語るとしよう」

「だそうよ? ザリア」

「そうね。行きましょうか」

 さて、イベントの本番前から、色々と濃い事になりそうである。

 私はそんなことを思いつつ、露店で適当に飲み物を貰うと、ザリア、イグニティチの二人と共に丸いテーブルを囲った。

07/31表現調整

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