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165:ミニマムツリー-4

「今日も無事にログインっと」

『ストラスからメッセージがあるでチュよ』

「例の西の草原攻略が上手くいったのかしらね」

『確認すると良いでチュ』

 木曜日、ログインした私は、まずはストラスさんからのメッセージを確認。

 どうやら無事にストラスさんたちは攻略できたらしい。

 とは言え、全員一度は攻略する必要性があるとの事で、先に進むのには時間がかかりそうだ。

 ちなみに草原を抜けた先は砂丘と岩場が入り混じったタイプの砂漠とのことだった。


「ま、手が空いたら挑みましょう」

『でチュねー』

 私は『呪い樹の洞塔』に転移すると、結界扉を開けて、第二階層に出る。

 で、ここで樹に触れれば、小人状態になるわけだが、折角なので自前で小人状態になるとしよう。


「『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』」

 私は胸の前で手を組んで、チャージ、13の目全てが私に向いている事を確認した上で、詠唱して『小人の邪眼・1』を発動。

 13の目から白い光が放たれて、私の体は瞬く間に小さくなっていく。


「これでよし」

『ちょっと過剰な気もするでチュよ』

「まあ、効果時間優先よ」

 表示されている状態異常の表示は小人(247)。

 発動の瞬間に目玉琥珀の腕輪を利用して私の周囲の呪詛濃度を上げた結果である。

 これで理論上は、体が大きくなり始める小人(90)までスタック値が減少するのに、1570秒……26分ほど小人状態を維持できるだろう。


「さて、第三階層だけど……」

 昨日、小人の樹の葉を再回収しに来た時に確認したのだが、どうやら『呪い樹の洞塔』の第三階層に入るルートは複数あるらしい。

 正確にはメインルートの他にサブルートがあると言うべきか。


「サブルートで入るわよ」

『その心は?』

「小人状態で空を飛ばないと入れないルートとか気になって仕方が無いじゃない」

 メインルートは結界扉があるこの通路。

 恐らくはボスに正面から挑む道になるだろう。

 だが、サブルートとして、小人状態でなければ入れないような洞や、枝の張られ方の都合で空を飛ばなければ到達できないような洞も複数存在していて、これらのサブルートでもボスに到達出来そうであった。

 なので、私はサブルートを選択。

 背中の翅を使って空を飛び、適当な穴から第三階層に突入してみる。


「へえっ、戦争中。と言うところかしら」

『蜘蛛VSナナフシでチュか』

 そうして入った第三階層は、中々に興味深いことになっていた。

 壁にサブルートとして幾つもの穴が開いた、ドーム状の空間で、十数匹の小人ナラフシと百匹以上の凧飛び蜘蛛が戦っていたのである。


「「「セブシャアアアァァァ!!」」」

「「「キチチチイイイィィィ!!」」」

 その戦いは激しく、お互いにお互いの事を殺しつくそうと動いている。

 運が悪い者から倒されて行き、倒した相手はすぐさま食われて糧となり、欠けた戦力の埋め合わせは何処からともなく現れてくる。


「総大将はあの二匹かしらね」

『ポイでチュねぇ』

 そんな中、それぞれの集団の中に、一際大きいと共に、特徴的な外見の個体が居る。

 なので私はその二匹を鑑定してみた。



△△△△△

『樹の守護蜘蛛』・バルウィガド レベル12

HP:11,925/11,925

有効:灼熱

耐性:毒

▽▽▽▽▽


△△△△△

『喰らう七節』・ウドイセフシ レベル12

HP:14,325/14,325

有効:灼熱

耐性:小人

▽▽▽▽▽



「さて、どうしたものかしらね」

 一匹一匹のスペックはこれまでに戦ったボスたちよりも低い。

 しかし、二匹いる上に取り巻きも存在していると言うのは初めてだ。

 おまけにボス同士が争っていると言う完全に未知の状態である。

 とりあえず大まかな方針としてはバルウィガドに味方するか、ウドイセフシに味方するか、あるいは皆殺しにして全てを勝ち取るかと言うところか。


「うん、皆殺し方針で行きましょうか。どっちも敵だし」

『でチュよねー』

 まあ、一番美味しいのは皆殺しだろう。

 此処から見ている限り、どっちのボスの頭も微妙そうで、助けたからと言ってお礼の類があるとは思えないし。


「じゃ、まずは適当な凧飛び蜘蛛を捕まえましてっと」

 私は一度第二階層に移動すると、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』と木が持っている小人化の力を利用して凧飛び蜘蛛を捕獲。

 そして、足をもいで身動きを取れなくし、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』で黙らせた上で、木に押し付けて小人状態を維持。

 傷口を塞いだら、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』を重ねていく。


『鬼畜外道とはまさにこの事でチュねぇ。まあ、たるうぃは元からたるうぃでチュけど』

「だって、あの数を正面から倒すのは流石に無理だもの。元のサイズに戻ってフレイルを振り回しても、単純に数で圧し潰されそうだし」

「……」

 出血は……ああ、現状、あるいは凧飛び蜘蛛相手だとスタック値2,500が限度か。

 この辺から維持するので精一杯になってきてる。

 私は出血のスタック値を維持しつつ、凧飛び蜘蛛の体を持ち上げて、小人のスタック値を減らし始める。


「『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』からの……ていっ」

「……」

『逃げるでっチュよー!』

 そうしてある程度元の大きさに戻ったところで、毒をダメージのトリガーとして仕込んだ上で戦場の真ん中に向けて投擲。

 私はすぐさま洞の通路に逃げ込むと、いつもの毒ネズミの皮を取り出すと、それで体を覆う。


「!?」

『!?』

 直後、木全体を震わせるような振動が生じた。

 そして戦場に戻った私の視界に映ったのは……


「下手な攻撃よりもよほど威力があるわよね」

『まったくでチュね』

 ボスたちですら半死半生となり、殆どの取り巻きが死に絶えた戦場の光景。


「じゃ、とっとと残りも片づけますか」

『でチュねー』

 私は自分にかけた『小人の邪眼・1』を解除し、フレイルを振り回しながら戦場に突入。

 二匹のボス含めて、蹂躙作業はあっという間に終わった。

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