152:カロエ・シマイルナムン-3
本日三話目です
ご注意ください
『……』
「来たっ!」
『来たでチュ!』
一度目のレーザーから3分経過。
カロエ・シマイルナムンは数本の触手を上げて、再び光の加工を始める。
それを見た私は即座に傘の下に避難しつつ、『
そして……
「今っ!」
『!?』
カロエ・シマイルナムンがレーザーを放とうとした瞬間を見計らって『気絶の邪眼・1』を発動。
カロエ・シマイルナムンに気絶(1)が付与される。
それはレーザーと言う光の速度で動くものの制御を、0.1秒もの長さで手放すと言う事。
「「「ーーーーー!?」」」
「「「ギャアアアァァァァ!?」」」
「「「アバアアアァァァァ!!」」」
『ーーー!?』
カロエ・シマイルナムンの頭上で大爆発が起きた。
レーザーの嵐が最上層で荒れ狂い、カロエ・シマイルナムンに大ダメージを与えると共に、プレイヤーを皆殺しにしていく。
『結局、大惨事でチュか』
「一番上の層に居るのが悪い。そう言う事にしておきましょう。全体7割超で消し飛ばされるよりはマシよ」
『……』
まあ、被害は出ているが、戦果は上がっているのでよしとしておこう。
カロエ・シマイルナムンが全身を痙攣させながら、ダウン状態に陥っている辺り、間違った対処では無さそうだし。
「タアアァァァル!?」
「うわっ、上がヒドイ事になって……」
「いやまあ、あのレーザーを考えたら……」
「流石、邪眼妖精……」
他のプレイヤーの反応は……何をやっているんだ的な視線もあれば、仕方が無いと言う感じの視線もある。
ま、気にしない方針で。
『メッセージでチュ』
「読み上げて」
『分かったでチュ。『試してみないと分からない』だそうでチュ』
なるほど。
なら、ザリアたちの相手している触手が引っ込んだタイミングで、試してもらおう。
私はザリアたちの方へと近づいていく。
「彼の者に癒しを。ヒール!」
「ありがとう。助かったわ」
壁に近づいた私に向けてシロホワが回復を行い、私のHPが回復する。
私は礼を言いつつ『
『……』
と、ここでカロエ・シマイルナムンが復帰。
先程までのダウンを取り戻すように、攻勢を激しくしてくる。
中央の筒の外へは勿論のことだが、ヘイトを稼ぎ過ぎている私への攻撃は……
「ちょっちょっちょっ! これ、私じゃなかったら確実に詰むわよ!」
『恨まれているでチュねぇ』
上下左右、前方後方、ありとあらゆる方向から触手が突き出され、逃げ場を防ぐように傘の内側の口から落下物が降ってくると言う殺意に溢れたものだった。
私が増えた目によって正確に状況を把握でき、虫の翅によって自由自在に飛び回れるのでなければ、確実に叩き潰されている攻勢である。
それでも毒と沈黙は撃ち込み続けるが……またHPが厳しくなってきたか。
ザリアたちの元に行くのも厳しいか。
「ぎゃあああぁぁぁ!」
と、ここで一人のプレイヤーが触手に捕まって中央の筒の中に引き摺り込まれる。
なので私はそのプレイヤーに近づくと……。
「ポーションありがとう。お礼に殺してあげるわ」
「間違ってないけど、ひでええぇぇ!!」
腰のポーション瓶を使わせてもらった上で、食われる前にナイフで首を掻っ切って即死させておく。
うん、プレイヤーは無事にカロエ・シマイルナムンに食われる前に死に戻りした。
私も当然触手の追撃を避け切って、再び毒と沈黙の維持に努める。
『……』
「またか」
『来るでチュよ』
「三分間隔で仕掛けてくる感じかしらね」
『正解だと思うでチュよ』
どうやら再びレーザーが来るようだ。
カロエ・シマイルナムンが触手を頭上に持ち上げている。
「喰ら……やばっ!」
『レーザーが来るでチュー!?』
『……』
私は先程と同じタイミングで『気絶の邪眼・1』を放った。
だが効果はなし。
恐らくだが、さっきの状態異常耐性の傾向で言うところの予防によって、無効化されたようだった。
そして、レーザーを暴発させられるタイミングが発動前の一瞬しかないと言う事は、今から『気絶の邪眼・1』をチャージしても間に合わないと言う事。
つまり……大惨事である。
「次からは目を四つか五つぐらいは回すべきかしら。たぶんだけど、同じ戦闘中に同じ状態異常を何度も使ったことによる耐性上昇の類よね」
『たぶん、そう言う事でチュね』
カロエ・シマイルナムンの体によって守られている私にレーザーは来ないようだが、周囲の足場に居るプレイヤーは容赦なく薙ぎ払われている。
一応、防御特化っぽいプレイヤーなら耐えられるようだが、基本的には耐えられないようだ。
あ、ザリアたちも吹っ飛ばされた。
「しかし、私たちプレイヤーが不老不死の存在であるのはカロエ・シマイルナムンもそろそろ分かっているはず。なのにただ死に戻りさせるだけのレーザーを撃つ理由は……なるほど。そう言う事ね」
『呪いが貯まっているでチュねぇ。まあ、まだまだ大丈夫そうでチュけど』
此処で私は中央の筒の底、カロエ・シマイルナムンの真下に小さな黒い穴のようなものが生じ始めている事に気付く。
アレは呪限無に繋がる穴だ。
『ダマーヴァンド』にあるものに比べると、規模も小さいし、安定もしていないし、まだまだ使い物にならないだろうけど。
なるほど、プレイヤーたちを殺し続ける事で呪限無に繋がる穴を開通させ、この場から離脱するのがカロエ・シマイルナムンの狙いか。
逃げられたら……たぶん、最低でもサクリベスは崩壊するんだろうなぁ。
うん、次のレーザーからは確実に止めよう。
最悪、13の目全てで気絶を狙いに行くぐらいで、適切だろう。
「ザリチュ、掲示板の書き込みとか出来ない?」
『文章の代筆くらいならするでチュよ。投稿はタル自身の手でお願いするでチュ』
「じゃ、それでお願い」
壁に着地、蹴って、再び飛び始めると同時に、私は呪限無に繋がる穴が生じ始めている事を掲示板に投稿。
むやみやたらと死なないように警戒を促す。
『……』
「ふふふっ、まだまだ隠しているものは多そうね」
『楽しそうでチュねぇ』
「あははははっ! 勿論よ!! さあ、カロエ・シマイルナムン! 私にもっと未知なるものを見せて頂戴!!」
プレイヤーたちが生産区画に戻ってきて、戦列の再構築を始める。
私は笑い声を上げながら、私に向かってくる触手の間を掻い潜って飛んでいく。
06/18文章改稿