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137:レッドハーブパーク-3

「彼の者に癒しを。ヒール」

「おおっ……」

 シロホワが剣の柄に付けられた鈴を鳴らすと、周囲の呪詛が集まってきて、私の傷ついた手を癒していく。

 どうやら回復呪術とでも言うべき代物をシロホワは手に入れたらしい。

 発動までに10秒、発動してから完治までにも10秒と戦闘中の使用は難しそうだが、便利そうでもある。


「じゃあ、触ってみるわね」

「お願い」

 で、無事にHPが回復したところで、私は何本かの赤い葉の植物を引っこ抜いて、放り投げる。

 そして、ある程度触れたところでザリアに鑑定をしてもらう。


「出血(126)と表示されているわね。少しずつ減っていっているわ」

「私の視点では状態異常は発生していない事になっているわね」

 ザリアの鑑定結果には私が出血と言う状態異常にかかっているのが見えているらしい。

 だが、私の視点……視界左上のHPや満腹度、普段なら状態異常を示してくれる場所は空欄のままだ。


「じゃあ、ちょっと試すわよ。『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』」

 私は『灼熱の邪眼・1』を目一つで発動。

 引っこ抜いて積み上がっていた赤い葉の植物が熱を帯び、乾燥、HPが尽きたのか、葉っぱや花の一部だけ残して風化していく。

 と同時に……右腕の至る所から痛みと共に血が噴き出して、私のHPが『灼熱の邪眼・1』のコスト以外によって削られる。


「再鑑定。出血は……消えているわね」

「回復します。彼の者に癒しを。ヒール」

 なるほど、これで出血の仕様は大体分かった。


「出血は他にダメージを受けるまで表面化しない傷を与える状態異常。と言うところかしらね」

「それでいいと思うわ」

「受けている当人には分からないとか怖いな……」

「気が付いたら致命傷を負わされている可能性もあると言う事か……」

「呪術のコストでも反応するなら、毒でも……反応してますね」

 出血は一種の追加ダメージ。

 条件を満たすとスタック値分のダメージを一気に受けて、解除される。

 条件は今回の出血毒草なら、とにかくダメージを受ける事で、普通のダメージも。呪術やアイテムのコストでも、毒でも反応するようだ。

 試しにザリアに出血を受けた後に毒を受けて貰ったら、毒を受けると同時に出血した。

 使い道としては……HPが減ってくると大技を使ってくるRPGあるあるなボスと戦う時とかか?

 だがまあ、最も恐ろしいのはブラクロの言っている通りだろう。


「ザリア。一応聞くけど他のメンバーで出血にかかっているのは?」

「居ないわね。全員、健康な状態よ」

 出血はかかっている本人には分からない。

 自分で自分を鑑定した時には、『鑑定のルーペ』の仕様上、既に出血は効果を発動している。

 時間経過で治るにしても、どれぐらいで完治するかは元の数字が分からなければ、判断の仕様がない。

 ザリアたちなら心配は無用だが、もしも信用出来ない相手と一緒の時だと……二重の意味で血を見る事になりそうだ。


「でもこれで出血状態への対策は必須だと分かったわね。対策なしは幾ら何でも無謀すぎるわ」

「そうね。見えない爆弾を抱えているようなものだし」

「……。何時即死してもおかしくないのでは、壁にもなれないな」

 なんにせよ対策は必須。

 今回の『赤い葉の薬草園』なら一度にかかる出血を10ぐらい無効化出来れば、無視できるようになるかもしれないが、先々まで考えるなら出血の状態異常解除に特化した手段の一つくらいは欲しいかもしれない。

 まあ、これはどの状態異常でも言えることかもしれないが。


「トリガーになるような行動を全部回避するってのは無理があるしな」

「無理でしょうね。範囲攻撃一つで詰みです」

「そうでなくとも、ちょっと小石に躓いたりとか、何かにぶつけたりとかでも1ぐらいだったらHPは削れますからね。現実的ではないでしょう」

 なお、理論上はあらゆるHP減少を回避すれば、出血の状態異常は効果を発揮しないが……それは現実的ではないだろう。

 私の邪眼のように発動=命中としていい攻撃は少なからずあるし、攻撃の余波で飛んできた礫がちょっと強めに当たっただけでも発動しかねないからだ。

 なので、この方法については考えない事にする。


「対策は……やっぱり第一階層の薬草かしら」

「そうだと思います。血にまつわる呪いに影響を及ぼすとありましたから、何かしらの効果はあるかと」

「都合がいいわね」

「ダンジョンあるあると言うか、この辺は狙っているんだろうな。ダンジョン内で入手可能なアイテムだけで対策は可能ですってのは」

「……」

「まあ、最初の頃だけでしょうけどね」

 では肝心の対策は?

 まあ、順当にいけば第一階層にあった赤い葉の薬草だろう。


「後はこの奥に行く価値があるかだけど……」

「私たちの依頼的には第一階層で薬草を狩り尽くすだけでもいいですけど……」

「私は止められてもいく気よ。レベル上げもそうだけど、色々と面白いのが手に入りそうだから」

「まあそうだよな。ボスは経験値効率もいいし、ドロップも優良。ダンジョンの核もあれば尚更だ」

「じゃあ、対抗アイテムを手に入れたら、奥へと向かってみましょうか」

「……。リアル時間19時にダンジョン入口で再集合。どうだ?」

 ロックオの言葉に私たちは頷き合うと、対策アイテムになるであろう薬草を回収しつつ、一先ずダンジョンの入り口まで引き上げることにした。

 さて、対策アイテムも作りたいが、出血毒草の加工もしなければ。


「ふふふ、楽しみねぇ……」

「「「……」」」

『ああ、またたるうぃにスイッチが入ったでチュ』

 私はセーフティーエリアに入ると、『ダマーヴァンド』に飛んだ。

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