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133:メドーズセーフティ-2

「話……だと……」

「乗せられるな! ただの時間稼ぎだ!」

「呪術のチャージなら、貴方たちが仕掛けてくる前に終わっているわよ? だから、単純に私は知りたいだけよ」

 私の言葉に獣耳と草髪の男は目線だけでどうするかと相談し合う。

 毒状態になりつつも、私の斜め後ろで短弓に矢をつがえている右目が二つある男は、他の二人の迷いに感化されてか、仕掛けられずにいる。


「まあ、おおよその所は察しているけどね。PKによる経験値やアイテム入手が最低限以下の『CNP』でPKをやるなら、ほぼ享楽、恨みつらみ、あるいは妨害の三択。貴方たちの様子からして妨害目的なのはほぼ間違いなし」

「っつ!?」

「そして、今この状況で私を狙って動くとなれば、サクリベスの神殿関係が疑わしい。おおかた、呪限無の化け物である私が、聖女様が狙っている高異形度存在対策の結界発動阻止を狙って他プレイヤーの妨害に走るはずだから、見かけたらPKしてでも止めろと言う感じの考えが出てきたのかしらね」

「うなっ!?」

「うーん、考えの出所は本気度からしてゲーム内やリアルではなく掲示板。ただ、これが私に対する個人的な敵意による書き込みに端を発するなら、運営が動く気もするし、議論が白熱した結果としてそういう流れになってしまったと言う感じかしらね」

「……」

 私はそんな彼らの様子を見つつ、適当に彼らが私を襲う理由になりそうな流れを話す。

 うん、彼らの反応からして、そう遠くはなさそうだ。


「どれぐらい当たってたかしら? ぶっちゃけ、ほぼ無根拠の予想なんだけど」

「無根拠!? ドンピシャなのに!?」

「怖っ!? トッププレイヤー怖っ!?」

「ひ、ひえっ……」

 どうやら当たったらしい。

 よろしい、ならば言うべき事は言っておこう。


「安心しなさい。私はサクリベスの聖女様が張る高異形度存在対策の結界を邪魔するなんて真似はしないわ。だって……」

「「「だって?」」」

「そんな珍しい物の発動なら、私はむしろ見たい! と言うか見させて!! 街全体を覆い尽くすであろう結界なんて現実では有り得ない未知なる代物が見られなくなるぐらいなら、私は他の高異形度連中を狩り尽くすわ!!」

「「「うわぁ……」」」

 何故かドン引きされた。

 おかしい、私はそんなに変な事を言った覚えはないのだが。

 イベントを見たいと望むのはゲーマーならば当然の話だと思うのだが。


『色々と情報が足りていないでチュよ。見ても今後に支障を来たさない理由とか、根拠とか』

「ん? ああ、なるほど。確かにその辺の情報は必要ね」

「え、誰と喋って……」

 私はザリチュの言葉で理解したので、こちらにとって都合がいいような補足情報を言っておく。


「まあ、実際問題として、結界とやらが完成しても私には問題がないのよ」

「と言うと?」

「私は自分の周囲の呪詛濃度を変化させるアイテムを持っているけど、サクリベスの呪詛濃度だとそれでも呪詛濃度不足に陥って死に戻りする可能性が高いわ。つまり、結界があろうがなかろうが、元からサクリベスには入れないのよ」

「あぁ……なるほど……」

 まず一つ。

 私はサクリベスに入ってみたいとは思っているが、別に入れなくても問題は起きないのだ。


「おまけに今回の結界は正確には対高異形度ではなく対『カース』。異形度20以上の呪いそのものと言っても過言ではない連中が対象で、私はギリギリ対象外なのよ。つまり、完成しても効果の範囲外である可能性が高いの。聖女様は気づいてないかもしれないけど」

「そう言えば邪眼妖精は異形度19って話だったか……」

「ああ、僅かに外れてるのか」

 二つ目。

 そもそも結界の対象外である確率が高いのだ。


「最後に、アバターの消滅に繋がるような事態なら、幾ら『CNP』でも事前通告や警告の類は流れてくるはずよ。けれどそう言った物は私の下には来ていない。若干希望的観測なのは否めないけど、そこまでの影響が出ないのは予想できるわ」

「あー、言われてみれば……」

「リアル過ぎて忘れがちだけどゲームだもんな……」

「なんと言うか、きちんと論理を説明されれば、納得いくな」

 三つ目。

 現実の法律とかの問題で、結界成立によって若干不利になることはあっても、致命的不利になる可能性は限りなくゼロである。

 最近はその辺をしっかりしておかないと怖いので、これはそんなに間違った考えではないだろう。


「と言う訳で、私はむしろ協力する可能性すらあるわね」

『ドヤァッ……チュ』

「こ……」

「これが……」

「トップの一角……」

 とりあえず言うべき事は言ったので、これで大丈夫だろう。

 後でザリチュは抓るが。


「で、貴方たちはどうする感じ?」

「どうするって……」

「邪魔をされないんだったら……」

「まあ、別にな……」

 三人は近寄って、相談をする。


「「「迷惑をかけてすみませんでした!」」」

「あら礼儀正しい」

『分かっていると思うでチュけど、流石にこれを背後から攻撃するのは無しでチュよ?』

 そして詫びの言葉と少しのアイテムを置いて立ち去って行った。

 なんと言うか、極めて礼儀正しい三人組である。

 まあ、アイテムは残念ながら私にとっては大したものではなかったが。


「これでよし」

 なおその後、草原のセーフティーエリアに着くまでの話だが……。


「強すぎる……」

「うごごごご……」

「無理ゲーだ……」

『雑魚ばっかりでチュねぇ』

「まったくね」

≪タルのレベルが13に上がった≫

 私は20人ほどのPKを返り討ちにし、ほぼ皆無と言われているはずのPKによる経験値でレベルが上がってしまった。

 ここ数日のアイテム製作で経験値が貯まっていたと言うのもあるだろうが、驚きである。



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル13

HP:1,120/1,120

満腹度:100/100

干渉力:112

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・1』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒使い』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『七つの大呪を知る者』、『呪限無を垣間見た者』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)


所持アイテム:

毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、真鍮の輪、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置

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06/04誤字訂正

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