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125:ペイアリワード-2

本日二話目です

明日からはまた一話更新に戻りますので、予めご了承ください。

「満足は……したようだな」

「ええ、とっても」

 なるほど、聖女は二人居た。

 これは確かにとびっきりの情報だ。

 ただそれ以上に気になったのは二人の聖女の名前。


「やっぱり一度くらいは夢ではなく現実で直接会いたいわね」

「お、おう……」

 ハルワとアムル、ハルワタートとアムルタート、水と食物。

 私の昔のあだ名であるタルウィ周りの情報として調べた事があるので知っているが、その名前はゾロアスター教の善神、タルウィ()とザリチュの二柱の悪神と対を為す存在の名前だ。

 偶然か、故意か、いずれにせよイベントでの出会いも含めて、色々と感じずにはいられない。


「あ、あー、そうだ。折角だからな。サクリベスのだいたいの地理も教えておく」

「あらいいの?」

「目的外の場所に顔を出す方が問題がありそうだからな」

「それはまあ……」

「だろうなぁ……」

 カーキファングの言葉にストラスさんとマントデアは遠い目をしている。

 まあ、確かに私がサクリベスに何かしらの方法で侵入した後、無関係のNPCに遭遇するのは良くないか。

 場合によっては私の姿を見ただけでも発狂させてしまうようだし、プレイヤーと違って死んだり壊れたりしたらお終いのNPCがそう言う状況に陥るのは、私の主義にも反する。


「とまあ、こんな感じだ。俺からの報酬はここまでだな」

「ありがとう。参考になったわ」

 と言う訳で、私はカーキファングからサクリベスの内部構造について一通り教わった。

 とりあえず神殿の奥、隔離空間のようになっている場所へと直接跳べるような方法を探すのが良さそうだ。


「さて、最後に俺からの報酬だな」

「あの量の毛皮で足りたの?」

「おう、ばっちりだ。明日には初期装備からオサラバ出来る予定だな」

 さて、最後はマントデアの報酬だ。

 私はマントデアの報酬は、マントデアの背中にある電撃触手から得られる呪詛生成物だと踏んでいる。

 回収方法含めて、楽しみだ。


「で、肝心の報酬だが、折角だし色々と説明しておくぞ。これの回収までに色々と面白いことが分かったからな」

「面白い事?」

 マントデアは背中の触手の一本を少しだけ伸ばして、肩の上にまで持ってくる。

 うん、相変わらず放電現象によって、電光と共にバチバチと言う音を発している。


「まず、プレイヤーの体は基本的に素材として使えない。これは風化現象の影響もあるが、プレイヤーの証たる不老不死の呪いも関わっているようだ」

「あら、そうなの?」

「なにせHPの回復に伴って衣服まである程度は再生させる呪いだからな。詳しい原理は分からないが、プレイヤーの体そのものを素材にしようとすると、その瞬間に素材そのものが消える」

「へぇ。それは知りませんでした」

 まあ、不老不死の呪いが強力なのは当然だろう。

 なにせ、風化の呪いと同じく『七つの大呪』の一つなのだから。

 話したら何が来るか分かった物ではないので、その辺は話さないが。


「例外が呪詛生成物だな。これは不老不死の呪いとは別の呪いによって生み出されているから、素材として使う事が出来る」

「私の『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』によって生じる毒液とかがそうね」

「だな」

 呪詛生成物は素材として使える。

 これは散々利用しているので、よく知っている。

 そもそも『毒の邪眼・1』の元になった毒も呪詛生成物だし。


「この辺からが本題だな。ストラスの覚えた『琥珀の風』のように、呪詛生成物の中には実体……と言うよりは固体や液体を持たない物も多い」

「マントデアの電撃も?」

「呪詛生成物だ。だが、電気だからな。毒や石のように掴んだり持ったりは出来ない。無理やり持ち運ぶなら、電池のような物でも用意する必要があるだろう」

「でしょうね。でも、私は電池なんて持っていないわ」

「俺も持っていない」

 つまり、マントデアの電撃はそう簡単には回収できない呪詛生成物と言う事だ。

 だが、マントデアはそれを渡すと言った。

 と言う事は……。


「だが、少量でいいなら、電池に拘る必要なんて……いや、そもそも深く考える必要もないのさ」

 そう言うと、マントデアは肩の上に持ってきていた触手の先端を握り、摘み取る。

 そして、開かれたマントデアの手には、電光を発する石が乗っていた。


「何をしたの?」

「そう難しい話じゃない。その辺に転がっている適当な石に、次に触れた呪詛生成物の元になった呪いを真似するようにと呪いをかけたのさ。そして、呪った石を電撃触手の中に埋め込んで、出来上がり。電撃の質はだいぶ落ちるが、呪いの持続性は悪くない。数日は余裕で持つぞ」

 マントデアの手から私の手へと石が移る。

 持った瞬間に感じたのは全身が痺れるような感覚であり、微量なダメージも伴っている。

 まあ、ここはセーフティーエリアなので、問題はないだろう。


「なるほどね。そんな方法があったとは……」

「驚きましたね……」

「まあ、マントデア以外が生かすとなったら、少し考える必要がありそうだがな」

「ふっふっふ、発見者俺。ゲームで一度は言ってみたかった奴だな」

 もしかしたら『七つの大呪』転写の呪いに関わる技術だろうか。

 いや、違うか?

 うーん、判断材料が無いから分からないな。


「と言う訳で、これが俺からの報酬だ。問題なさそうか?」

「んー、ちょっと待って。一応鑑定してみるわ」

 とりあえず鑑定をしてみよう。

 と言う訳で、私は『鑑定のルーペ』をマントデアの石に向ける。



△△△△△

電撃の石ころ

レベル:1

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:2


プレイヤー:マントデアの持つ電撃触手の呪いが転写された石ころ。

耐久度が無くなるまで、微弱な電撃を放ち続ける。

▽▽▽▽▽


△△△△△

電撃

レベル:1

耐久度:12/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:1


電撃触手の呪いによって生成された呪詛生成物。

触れたものに電撃属性のダメージを与え、低確率で気絶の状態異常を発生させる。

▽▽▽▽▽



「うん、問題なさそう。十分な報酬よ」

「そうか、ならよかった」

 これなら確かに使い物になりそうだ。

 なお、電撃の鑑定結果については、割とスクショ技術と反射神経による力業で得たものである。

 見れるのかよと言うツッコミが入りそうだが、見れてしまったものは仕方が無い。


「さて、それじゃあ情報交換はこれで終わりかな」

「あ、どの情報までなら掲示板に出していいか、確認してもらっていいですか?」

「そうだな。そこは確認しておこう」

「そうね。まだ出すには早い情報もあるでしょうし、確認しておきましょう」

 その後、マントデア、ストラスさん、カーキファング、私の四人で、何処までの情報を掲示板に出すのかを決め、ストラスさんに掲示板へ書き込んでもらった。

 そして私はログイン制限にかかりそうと言う事で、ログアウトした。

05/28誤字訂正

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