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124:ペイアリワード-1

本日一話目です

「さて、色々とあったみたいだな」

「そうね。色々とあったわ……」

「まあ、色々とありましたね……」

「そうか。まあ、何があったのかを知るためのこの場でもあるし、情報交換をしよう」

 リアル時間20時。

 マントデア、私、ストラスさん、カーキファングの四人は森のセーフティーエリアの外れに集まっていた。

 周囲に私たち以外の人影はなく、呪いによって異常強化された聴覚の所有者でも居なければ、私たちの会話が盗み聞きされることはないだろう。


「じゃあ、まずは私からね。共有しておいた方がいい情報だと思うから、話しておくわ」

 まず最初に私から。

 『蜂蜜滴る琥珀の森』の第三階層がどうなっていたかに始まり、『蜂蜜滴る琥珀の森』の琥珀蜜の危険性に、琥珀の湖に居た蜂……『カース』の存在についても告げる。


「鑑定はしなかったんだな」

「出来るわけありませんよ。したらきっと、それだけで琥珀の像にされていたと思います」

「ストラスさんに同意ね。良くてあの蜂が直接動いて、最悪はイベントの海月のようにカウンターのオートで琥珀行き。『カース』の中には死んでも治らない状態異常をかけてくるのもいるはずだから……と、これは表にはまだ出していない情報だったわね」

『やらかしたでチュねー』

 で、うっかり仮称アジ・ダハーカの時の話をしてしまった。

 私の言葉にストラスさんは大きく目を見開き、マントデアとカーキファングも私の方へ勢いよく顔を向けている。


「そう言えばタル様、あの蜂と会話をしていましたけど……」

「あははは……まあ、この異形度だからこそ、色々と特別な縁があるのよ。とりあえず『カース』とやり合うのなら、不老不死だから大丈夫なんて甘えた考えは抱かない方がいいわ。と言うか、今はまだ手を出さない方がいいわ」

「気を付けておくとしよう。色々と洒落にならなさそうだ」

「そうだな。場合によってはキャラロストの危険性まで考えないといけない話だ」

 まあ、私から出せる情報はこれ以上ない。

 もしかしたら、あの森の何処かに呪限無に繋がる道があるかもしれないとか、名前が分からないと敵扱いすらしてもらえないとか、持っている情報は色々とあるが、そこら辺を出す気はない。

 出さなくても、あの森を抜けて蜂の下に辿り着けるプレイヤーは、現状では極一部であろうし。

 と言う訳で、次はストラスさんの番だ。


「で、ストラスさんはあの蜂から何を授かったのかしら?」

「えーと、実は呪術を授かりました……」

「「呪術!?」」

「へぇ……」

 どうやらストラスさんが授かったのは呪術であったらしい。

 検証は既に一通り済んでいるようで、概要を教えてくれた。

 で、簡単にまとめてしまえば……


「追い風を発生させる呪術と言う事でいいのかしら」

「そうなります。使いこなせれば、あの琥珀の湖の上のように、足を着ける先がない場所でもある程度は動き回れるようになると思います」

「ほー、空中浮遊持ちでなくとも便利そうだ」

 名称は『琥珀の風』。

 ストラスさんを巻き込む形で、任意の方向から微弱の石化効果を伴う琥珀色の強烈な突風を起こす事が出来る呪術である。

 CTについては重要な個人情報なので黙っておいてもらったが、コストについては『琥珀の風』自体の効果とは別に石化(1)が発生すると言う危険な物なので、ストラスさん自身が明かした。

 なお、授かった呪術であるためか、発動キーのカスタマイズや追加は出来ないようだった。

 うん、基本的には使い勝手が良い呪術であると思う。


「問題は習得方法が厳しすぎる点だな。その蜂に出会うだけでなく、気に入られる必要があるし、色々とリスクが大きいだろう」

「加えて習得時に強烈な目眩にも襲われました。アレは一瞬で習得したからだと思いますが、場合によってはもっと危険な何かが潜んでいる可能性は否定できません」

「私としてもオススメしないわね。あの蜂、間違っても人間やプレイヤーの味方じゃないわよ。たぶんだけど、ストラスさんに呪術を授けたのも、その話を聞いた他のプレイヤーが集まってコレクションの仲間入りをする事を狙ってでしょうし」

 後追いは期待するべきではないだろう。

 『呪限無の落とし児』である私が言うのもなんだが、アレを味方にするのは、人への敵対行為と同じになるだろう。


「マントデアは最後でいいか。なら次は俺だな」

「分かったわ」

 さて次はカーキファングの情報。

 つまりは私に対しての報酬だ。


「まず、『黄金の蜜珠』を持って行った結果だが……」

 で、カーキファングがサクリベスで一通りあった事を話してくれた訳だが……。


「タル様……。でもその、分かる気がします……」

「まあ、警戒はされるよな……」

『警戒はされて当然だと思うでチュ』

「悪いが、警戒については妥当と言う他ないと思うぞ」

「……」

 うん、今回の件、ある意味私が元凶だった。

 まあ、低異形度NPCとの好感度は最悪なのだし、当然と言えば当然の流れなのだろう、たぶん。

 『黄金の蜜珠』を利用した対策とやらについても、あると分かっているのなら、何とかはなるだろう。


「あーまあ、それでだ。此処までは情報交換の為の話だ。で、此処からが報酬である聖女についての情報だな」

「そうね。お願いするわ」

 それよりも重要なのは聖女についてだ。


「聖女だが、普段は神殿の奥、外部からの呪いが一切やって来ない隔離空間のような場所に居るらしい。異形度1の相手ですら長時間は居させたくないそうで、俺が付き合いのある女性だと、入口に近づく事も許されないそうだ」

「……」

「容姿についてはイベントで見てもらった通り。中々に特徴的な容姿をしている」

「ふむふむ」

「能力については、どういう原理かは分からないが、呪いを退ける力や夢見の力、豊穣や浄化の力があるなんて話もあるな。早い話が、聖女が居なければサクリベスの中枢部は半分くらい止まりかねないようだ」

「へー……」

 カーキファングから色々な情報が出てくる。

 ただこれだけだと、微妙に情報の内容が物足りない。

 私がそう思った時だった。


「聖女の名前はハルワとアムル」

「二人?」

「ああそうだ。他のプレイヤーたちは気づいていないようだが、聖女は二人居る。双子なんだ。そして、これは周囲に隠しているようだが……二人はお互いに見聞きした物を共有する力を持っているらしい」

 とびっきりの情報がカーキファングからもたらされた。

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