108:レッドマジックストーン-1
唐突ですが、本日より暫くの間、一日二話更新態勢で行きたいと思います。
12時、18時更新でいきますので、よろしくお願いします。
本日一話目です。
「ログインっと」
『たるうぃ、おはようでチュ』
さて、無事にログインである。
場所は『ダマーヴァンド』のマイルームで、周囲には『藁と豆が燻ぶる穴』で回収してきたアイテムが置かれている。
その中には『藁と豆が燻ぶる穴』の核であった、人体のパーツ入り藁束も置かれているし、すっかりしぼみ切って硬くなった燻ぶるネバネバの黒玉も置かれている。
「さて、とっとと処理をしてしまいましょうか」
私は藁束を手に取ると、マイルームを出て『ダマーヴァンド』の核がある噴水の前へと持って行く。
そして、適当な入れ物に藁束を入れてだ。
「『
『灼熱の邪眼・1』を藁束に向けて放つ。
付随する火炎属性ダメージによってきちんと燃え上がるまで、一発、二発、三発と重ねていく。
そうして10回ほど重ねたところで、火が点き始め、20回も重ねる頃にはしっかりと燃え上がって藁束を焼き始める。
『また、たるうぃが変な事をしているでチュ……』
「失礼ね。今回は変な事じゃないわよ。これは元々ダンジョンの核だったもの。つまり大量の呪いを蓄えていた物なの。それが破壊されれば、大量の呪詛が放出されるわ。で、呪詛管理ツールがあるこの場で呪いが放出されたなら……」
藁束から赤と黒と紫が入り混じった呪詛の霧とも黒煙とも取れる煙が沸き上がっていく。
だが沸き上がった煙が拡散することは無く、呪詛管理ツールが収められているオブジェへと吸い込まれていく。
吸い上げられた呪詛は『ダマーヴァンド』が保有する呪詛として変換され、蓄えられていく。
「よしよし、いい感じに吸い上げているわね」
『臨時収入って事でチュか』
「そう言う事。藁束はそのままだと扱いづらい素材だしね」
私は呪詛管理ツールを立ち上げて、数字を確認する。
△△△△△
呪詛管理ツール-『ダマーヴァンド』
レベル:10
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:12
『ダマーヴァンド』とその周辺に存在する呪詛を管理するためのツール。
手をかざす事で使用できる。
呪詛貯蓄量:10,372/1,000,000
注意:呪詛を貯め込み過ぎると暴走します。
▽▽▽▽▽
「おおよそ一万ってところかしらね」
私は思わず笑みを浮かべる。
日々の収支は微妙な量だし、頻用している転移での消費も僅かにだがあって、貯蓄は微々たる物だった。
だが、ダンジョンの核一つを『ダマーヴァンド』内で破壊しただけで一万。
相応の苦労は伴うが、素晴らしい収穫と言えるだろう。
そして、得られる物はまだある。
「そして、灰のおまけつきと」
『あ、使うんでチュね』
「そりゃあ勿論」
藁束が燃え尽きた後には灰が残っている。
元ダンジョンの核であっただけの事はあり、この状態でもまだまだ有用な素材として使えるだろう。
「おっと、ただ焼いただけだと、不純物もあった感じかしらね」
『美味しそうな匂いはしないでチュねぇ』
と、気が付けば呪詛管理ツールのオブジェに小さな、血のような色合いの花が咲いている。
形は垂れ肉華シダの花によく似ているが、ザリチュの言う通り匂いはしない。
一応、鑑定しておくか。
△△△△△
『ダマーヴァンド』の呪い花
レベル:10
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:10
『ダマーヴァンド』が大量の呪いを一度に吸収した際に生じる蘇芳色の花。
呪いの塊と言ってもよく、存在するには周囲に一定値以上の呪詛濃度を必要とする。
注意:異形度9以下のプレイヤーが触れると消滅します。
▽▽▽▽▽
「ふうん……混ぜるか」
私は鑑定を終えると、藁束の灰が入っている器に投入。
手持ちのアイテムで適当に花を磨り潰す。
で、きちんと粉微塵かつ混ざり合ったところで、毒液で器を満たすと、マイルームに持ち帰って燻ぶるネバネバの黒玉を投入する。
『絶対変な物になるでチュ……』
「そりゃあそうでしょ。変な物を作るつもりでやっているんだから、変な物になってくれないと困るわ」
漬けておく時間は……填める先が出来上がるまででいいか。
「さて、作るものは作っておかないと」
私は右腕に着けていた真鍮の輪を外すと、緑透輝石の足環を作った時と同じような加工を施していく。
ただ、填める物の加工どころか、どういう形になるかも分かっていないので、調整はしっかりと利かせられるように注意を払いつつだ。
「そろそろいいかしらね」
『ああ、見るからにヤバいでチュね……』
毒液から引っ張り上げた黒玉は呪われたクロムダイオプサイトと同じように黒いオーラを纏っている。
どうやら無事に呪われたようだ。
ただそれ以上に気になるのは、黒い部分がふやけた皮のように弛んでいて、持った感触として内側に何か硬い物がある感覚がすると言う事だ。
おまけにその内側にある何かは、低温火傷をする程度だが、十分な量の熱量を放っているように感じる。
うん、取り出してみるべきだろう。
「まるでルビーね。ちょっと色が違うけど」
『元は豆でチュよ』
「じゃあ小豆で。色も近いし」
『大豆が小豆になるとか奇怪でチュねぇ』
私はふやけた皮ごと床に置き、丁寧に切り開く。
すると中から出てきたのは、黒いオーラを纏っている赤……と言うには紫色が多い、小豆色と言った方が適切な色の宝石だった。
大きさは填めようとしている輪にちょうど合うくらいで、硬さは元が食べ物だとは認識できない程度には堅く、これならば色々とちょうど良さそうだ。
ただまあ、一応鑑定はしておこう。
△△△△△
呪われた赤魔宝石
レベル:10
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:10
燻ぶるネバネバと言うモンスターの核が特殊な過程を経て宝石化した物体。
本来は周囲から力を呼び寄せた上で定着させることで繁栄をもたらす力を持っているようだが、強い呪いを帯びた事で、呼び寄せた力を所有者を傷つける事にしか使えない呪われた石となっている。
注意:この石を鑑定したものにダメージを与える。
注意:この石に接触しているものに一定時間ごとに灼熱(1)を与える。
▽▽▽▽▽
「む……かなり喰らったわね。火炎属性混じりだったのかしら」
『これで死んでたら笑えないでチュよ』
受けたダメージは最大HPの30%以上。
どうやら火炎耐性の低下が思った以上に効いているらしい。
「ま、とりあえず作業を進めましょう」
私は毒液が滴った黒い皮を真鍮の輪と呪われた赤豆石の間に挟み込むようにしつつ、赤豆石をセット。
多少の調整をしてから、固定する。
「一度毒液に漬けてっと」
『お気に入りなんでチュか?』
「割と」
で、アイテム全体を馴染ませるために一時間ほど毒液に漬ける事にした。
08/10誤字訂正