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意外な事実がてんこ盛り

 翌朝目覚めたら、すでに日は高く昇っていて。

 騎士様たちはすでに帰還の用意をしていた。

 イーサンだけは、疲れ果てて休んでいるようだ。

 前にマリナが魔力切れをおこしたときも、熱を出して寝込んだもんね。


「起きたか。体調はどうだ」

「大丈夫です。ポーション持ってきてましたから」


 そう。昨晩はマリナと自作ポーションがぶ飲みして寝た。

 ちょっとは効いた気がする。

 下山するとき、辺境伯様からは怒られた。

 命令を聞かなかったからだ。

 結果的には勝てたけど、無茶をするんじゃないと。


 採取したルナリア草を一部出してみたけど、枯れている様子はない。

 このまま持って帰れば、特効薬、作れるかな。

 ミルフィーナ様、元気になるといいな。


「辺境伯様、昨晩ルナリア草の生えていたあたりの土壌は、かなりの魔力を含んでいました。カイウス領の鉱山地帯と同じです」

「オルセットの鉱山か?」

「そうです。オルセット男爵令嬢がクラスメイトで、一度行ったことがあって」

「それで?」

「もしルナリア草の根っこと土を分けてもらえるのなら、栽培できるかどうか試してみたいんですが……」

「そうか。そんなことができるなら、もちろんやってみてほしい。さすがロゼッタ殿の娘だな。あの成長促進は母君に習ったのか?」

「はい。子どもの頃から、畑の作物を巨大化させてました。あの……辺境伯様は、お母さんを知っているのですか?」

「直接の知り合いではないが……これは一部の貴族の間では有名な話でな。ロゼッタ殿は元貴族だ。それも、上級魔術院の優秀な魔術師だった」

「へっ、お母さんが……?」

「そのへんの話は、俺の口から言うよりも、ご両親から直接聞いた方がいいだろう。俺が知っているのは噂話でしかない」


 そうか。前からなんか変だと思ってたんだよね。

 なぜ、お母さんが成長促進を使えるのか。

 平民が普通に使える魔法じゃないって、今ならわかる。

 それに、カイルが魔力を持っているのだって、普通じゃない。

 お母さんが元貴族だというなら、納得がいく。


「俺は、お前の父親から、娘を守ってほしいと頼まれたんだ。ロゼッタ殿の娘だとわかっていたので、引き受けた」

「そうだったんですね……ありがとうございました。私、何も知らなくて」

「いや、いいんだ。俺の方こそずいぶん助けてもらったからな。それより、アリス嬢は上級魔術院へ行くつもりはないのか? カーマインが推薦すると言っていたぞ。カイウス領から奨学金を出してもいい」

「それは……一度両親と相談してみます。実は、カイウス領へ移住してきたのには、理由があって」


 村に住んでいたときに、神官様から王都の学園を勧められたこと。

 でも、王都に行ってしまえば、家族が離れ離れになってしまうこと。

 それよりも、家族全員で辺境伯領で働けば、国に干渉されずにすむと考えたことなどを、説明した。


「なるほどなあ。ロゼッタ殿は王都に帰りたくなかったんだろうな。だけど、上級魔術院はロゼッタ殿の母校だ。それに、カイウス領から奨学金を出せば、卒業後は必ずカイウス領に帰ってきてもらうことになる。お前を王宮には渡さんよ。ゆっくり考えてみるといい」


 そうか。カイウス領から奨学金を出す、というのはそういうことなんだ。

 将来カイウス領で働くという前提の先行投資みたいなもんだよね。

 それなら、考えてみてもいいかも。


「そういえば、マンガス……あ、いや、セドック卿が、お前を助手にするとか言ってたけど、本当なのか?」

「セドック先生はそれでもいいって言ってました。働くところがなかったら、の話ですけど。辺境伯様はセドック先生と親しいんですか?」

「……アイツは俺の異母弟だ。アイツは認めたくないみたいだがな」

「えっ! セドック先生と兄弟なんですか!?」

「腹違いのな。アイツはカイウスを名乗らずに、母方の姓を名乗っている。まあ、これも知ってる人は知ってる話だ。アイツは自分からカイウス家と距離を置いているが、子どもの頃は仲がよかったんだ」


 ええー。セドック先生と辺境伯は全然似てない。

 言われないと他人にしか見えないよ。

 それにしても、意外な新事実が多くて、頭がついていかない……

 貴族ってややこしい。



 帰りの旅は気楽で楽しかった。

 道すがら、めずらしい植物を採取したり、ブレイズボアの肉を焼いて食べたり。

 野営では収納からありったけのお料理を出して、みんなで食べた。

 アイスクリームやかき氷は、辺境伯様や騎士様たちにもウケた。

 魚や野菜と一緒に、辺境伯家の屋敷にも配達するようにと、予約までもらったぐらいだ。

 たぶん、私とマリナがこの先仕事に困ることはないよね。


 帰還してすぐに、辺境伯家には優秀な薬師が呼ばれ、ルナリア草のポーションは完成した。

 そして、なんと、ミルフィーナ様はどんどん体調が良くなっているそうだ。

 カーマイン様、喜んでいるだろうなあ。


 たぶん、ルナリア草は、魔力を吸収するような成分があるんだと思う。

 ミルフィーナ様も、生命力を維持する最低限の魔力は、身体に貯められるようになってきたらしい。

 私は、ローレンに相談して、オルセット領の鉱山付近で人が立ち入らない場所を確保してもらった。

 分けてもらったルナリア草は、成長促進魔法で順調に増えている。

 扱いは難しいけれど、これからは魔力枯渇症の人のために役立てることができそうだ。

 私が鉱山に行けないときには、お母さんがルナリア草の面倒を見てくれることになった。


 ちなみに、お母さんは若気の至りで、当時護衛だったお父さんと『駆け落ち』をしたそうだ。

 今は幸せだから、後悔はしていないと言っていた。

 お母さんの実家はローストック伯爵家という由緒ある家柄らしいけど、今はもうお兄さんが継いでいて、連絡をとるつもりもないようだ。


 その後、私とマリナとイーサンは、辺境伯様からたんまり報奨金をもらったのです。

 うふふ。

 当分、贅沢できる。

 マリナとふたりで、洋服やらお菓子やら、買いまくった!

 ダンスパーティー用のドレスも作った。

 いつか実家に大きなクローゼットや収納を作るのも、夢じゃないかも。


 すごく忙しくて、飛ぶように過ぎた1年だったけど、私は無事首席のまま2年に進級できた。

 もちろん、次席はマリナだ。

 相変わらず、週末はマリナと一緒に、どちらかの実家へ帰っている。

 そして、その帰り道には辺境伯家に、野菜と魚を届けるアルバイトをするようになった。

 


 神様、世界一の収納をありがとう。

 転生後の私は、楽しくやってます!



長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。

まだ回収できていないエピソードがいくつかあるのですが、キリがいいので、ここでいったん完結とさせていただきます。

カイルの入学や、魔石の付与など、続きを書きたい気持ちはあるのですが、今できている原稿はここまでです。

もし、気に入っていただけたら、応援よろしくお願いします!


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