星の王子さま(もうひとつの昔話 46)
星の王子さまの館には、一輪のきれいなバラの花が咲いています。
一人で住む王子さまにとって、このバラはとても大事なもので大切にしていました。
ある日。
王子さまは気まぐれでわがままなこのバラにいや気がさし、ついにはけんかをしてまいます。そしてそのことがきっかけで、ほかの星に旅に出ました。
バラは悲しそうに見送ってくれました。
一つ目の星。
そこには王様が一人で住んでいました。王子さまは歓迎されますが、自分の権威を守ることしか考えない王様でした。
王子さまは旅を続けました。
二つ目の星。
そこには自信家が一人で住んでいました。自信家は自分以外の者は、みんな自分を称賛するべきだと考える男でした。
王子さまは旅を続けました。
三つ目の星。
そこには酒飲みが一人で住んでいました。酒飲みは自分のすることすべてを恥じ、それを忘れるために酒をあおる男でした。
王子さまは旅を続けました。
四つ目の星。
そこには実業家が一人で住んでいました。実業家は自分を有能だと妄信していて、星を持つことだけを考える男でした。
王子さまは旅を続けました。
五つ目の星。
そこにはガス灯の点灯人が一人で住んでおり、他人のためにガス灯を守る人でした。
王子さまは旅を続けました。
六つ目の星。
そこには地理学者がで住んでいて、地球という星があることを教えてくれました。
王子さまはその星に行くことにしました。
王子さまは地球に降り立ちました。
そしてそこで数千本の美しいバラに出あいました。
――自分の星のバラは、なんとありふれたつまらないものだったんだ。
王子さまが悲嘆に暮れていますと、そんなところに一匹のキツネがやってきました。
「ぼくと遊ばないかい?」
王子さまは声をかけました。
今の悲しみを少しでも紛らわせたかったのです。
「仲良くならないと遊ぶことはできません。大切なものは目に見えないものです」
キツネはそう答えました。
このとき王子さまは、星に残してきたバラに思いをはせました。
地球に来て一年。
王子さまは自分の星に帰ることしました。
王子さまが星に帰ると、バラはこころよく出迎えてくれました。
王子さまはすぐにバラと仲直りします。
「ぼくと結婚しよう」
バラは王子様の申し出を受け入れてくれました。
ひと月が過ぎました。
地球のキツネが話していた「目に見えないもの」というものを、王子さまはあらためて悟りました。
きれいに咲いたバラの花。
その葉のかげには、鋭いトゲがあることに気がついたのです。
王子さまはふたたび旅に出る決心をしました。