第24話 12歳のイングリス12
「イングリスちゃん――ちょこっと見てたが、君は強い。こんな可愛らしい女の子が、信じ難いくらいにな……だから大人気ないが全力で当たらせてもらうぜ。はああぁぁっ!」
レオンは力を込めて、上級
聖騎士が
普段はこの、鉄手甲の
上級の
その現象、
――その数、その強さは扱う者の能力次第。
特級印を持つ聖騎士たるレオンが全力で使えば――!
打ち鳴らされた
それが一斉にイングリスを取り囲んでくる。
なかなか目に眩しく、賑やかな光景だ。
「二体だけ俺について来い! 残りはイングリスちゃんにかかれ!」
レオンは言って、エリスの方へと突進する。
その後を二体の雷の獣が追従していく。
エリスは双剣を構え、それを迎え撃つ姿勢を取っていた。
エリスとレオンが本来互角だとしても、数の上、それに現時点の状態でもエリスが不利だ。一度大きなダメージを負っている。
レオンにエリスを殺すつもりはない――というよりも、
が、少なくとも攻撃を加えて無力化し、連れ去る事は出来るのだろう。
今レオンが行おうとしているのはそういう事だ。
――止めさせて貰う!
そう考えるイングリスには残りの雷の獣が全て、向かって来ている。
グルウゥゥ! ガアアアァッ! グオオォォォッ!
まず第一に、これを突破する事が必要だ。
――中々面白い! 流石は聖騎士の放つ
「はあっ!」
イングリスは手近な一体に自ら突っ込み、拳打を見舞おうとする。
雷の獣はイングリスの踏み込みに反応し切れず、イングリスの拳が直撃する――
はずだった。
が、その前に不意に虚空から現れた剣が、雷の獣を切り裂いた。
この剣は――エリスの構えていた二刀のうちの片方だ。
「ギャオォッ!?」
切り裂かれた獣は悲鳴のようなものと共に、眩しく輝いて弾け飛んだ!
先程エリスが喰らっていたのと同じものだろうか。
こちらが攻撃する手前だったので、間一髪飛び退く事が出来た。
雷の爆発は少し浴びたが、体が少々痺れる程度で済んだ。
まともに浴びていれば、もっとダメージを受けたはずだ。
「気を付けて! あれは、こっちから強い攻撃を加えても爆発するわ! 迂闊に攻撃しちゃダメなのよ!」
遠くのエリスが、イングリスに呼びかけた。
知っている事を教えて、警告してくれたのだ。
「はい! 分かりました!」
しかしあの距離から雷の獣を斬るとは、あれは何だ?
人の姿の
「今度、その技を使って手合わせをお願いします!」
「嫌よ! 私はあなたと違って好戦的じゃないの!」
あっさり拒否をされてしまった。
ともかく、エリスが対処の方針を示してくれた。
あれを近接攻撃で撃破してしまうと、反撃の自爆を避けらず大きなダメージを受ける、という事だ。
つまり、爆発に巻き込まれないような距離を取って撃破せよ、と言うのだ。
「――とにかく。エリスさん、情報をありがとうございます。参考にさせて頂きます!」
「フフッ。あれはそう何度も打てねえはずが、イングリスちゃんに教えてやるためだけに使うとは、やっぱ何だかんだ言いながら面倒見がいいね、お前は。ツンデレってやつだ」
「うるさい!」
「そうだったんですね。待っていて、すぐに助けます!」
イングリスは両の拳を握り締め、意識を集中して気合を入れた。
「はああぁぁぁっ!」
イングリスの身体を青白い光が覆う。
しかしそれに何の意味があるのかは、エリスやレオンには分からない。
だから特に驚きの声は上がらない。
しかしすぐに分かるはずだ――
光を纏ったイングリスは、手近な雷の獣に真っ向踏み込む。
その速度は、先程と比較にならない程早かった。
そしてその勢いを乗せ、足を鞭のようにしならせ、回し蹴りを放つ。
「ギャオォォォッ!」
雷の獣の悲鳴が上がる。相当な衝撃があった証拠だ。
「な――馬鹿ッ! せっかく人が……!」
エリスの言葉の最後をかき消す爆発音。
イングリスは雷の獣の自爆にモロに巻き込まれていた――
が、傷一つつかない。揺るがない。たじろがない。
全く何事も無かったかのように、立っている。
「ええっ……!? な、何が――!?」
「ありゃどういうことだ……!?」
エリスもレオンも、思わず戦いの手を止めていた。
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