Extend1 虫食い状の心
PCの寝起きが著しくよろしくない為、1時間遅れてしまいました。
申し訳ございません。
今回は加賀屋紀絵の視点です。
「……紀絵さん、あの人達とどういう関係なんですか?」
私が、彼女――スー先生に背負われた紗綾ちゃんをぼうっと見ている時、不意に横から声が掛かった。
るきなちゃんは、ずっとあの子を見守ってきたのかな。
ありがとう……。
まずは、質問に応えたいところ。
なのだけど、問題が沢山ある。
「えーっとね。話せば長くなるんだけど……」
それを言えば、間違いなく彼女は一人になる。
私は嫌われてしまう。
本当は、私だって全てぶちまけたい。
でも、嘘に嘘を重ねたものを……今更ひっくり返せる?
考えろ、考えるんだ加賀屋紀絵。
そんな私の奮闘は、時間切れで虚しく終わる。
「じゃあ、質問を変えます。私や紗綾の何を知ってるんですか?」
これも悩ましい。
だって「まず、るきなちゃんからね! 誕生日は3月24日、血液型はAB型でスリーサイズは上から73・54・71、好きなものはアカツキ堂の芋どら焼き!」なんて答えた日にゃあ「え、引くわ……」なんて言われること請け合い。
そんなストーカーじみた返答は、たとえそれが公式設定だったとしても気持ち悪いに決まってる。
……だから、私はこう答えるのだ。
「君が魔物と戦って世界を救った事も。紗綾との戦いを通して、あの子を救ってくれた事も」
胸が、ズキリと痛む。
前半は、本当のこと。
後半は、私が紗綾ちゃんの運命から逃れたいために、先生やロナちゃんを巻き込んでついた嘘。
私が直接ついた嘘じゃない。
けれど、私は確かにあの嘘に救われたし、本当にそうであって欲しいとも願った。
どっちにしたって、私がるきなちゃんを騙した事には変わりはない。
……でも、今更本当の事なんて、私の口からは言えないよ。
あの時に先生は面白おかしく話していたけど、ああ見えて真面目に考えたに違いない。
「どこで、それを知ったんですか? 私の世界と、この世界は別物だってすぐ気付いた。
年号も違うし、首相も違う。電気屋さんで流れていたテレビにも、臥龍寺財閥がスポンサーに付いてなかった」
「今言えるのは、私が君の世界を見た事があるとだけ……それは間違いないって言えるから」
「……そう、ですか」
「他人って気がしないんだ。女の子は、みんな戦っている。男の人が知らないような戦場で。
私にも、覚えが――あった筈なんだけど、なんでだろう、思い出せない……」
ああ、ごめんよ……。
私も戦っていた気がするというのに。
だけどこれだけは言える。
「るきなちゃんが、あの人達を信用できないっていうのは、解ってるつもり。でも、私の事は信じて欲しい。
私も頑張って、るきなちゃんと紗綾ちゃんを元の世界に返す方法を考えるから。たくさん、手伝うから」
いや、これしか言えないというのが正解。
自分自身に言い聞かせるようにして、私はるきなを見つめた。
るきなは、そんな私を見返して苦笑する。
「そんな重たい言い方しなくたって……その、お気持ちは嬉しいですけど。
そうですね、じゃ、今からお友達になりませんか? 紀絵さんは、あの二人と違って信用できそうだし」
「いいね。なろう、友達。私は、一回り近くも歳が離れてるけどね」
でも、もう私は年を取らない。
だってもう、死んでしまっているから。
……死、死、死。
私は何か、大切な事を忘れていた気がする。
ズキリと、今度は頭が痛む。
この痛みは何?
「紀絵さん? どうかしたんですか?」
「ううん、なんでもない」
「顔色、良くないですよ」
「ホテルでちょっと休めば回復するよ。激務には慣れっこだから」
徹夜とかザラだったからね。
けれど、それと私の死は、本当に関係があったのかな。
思い出せない。
紗綾……。
あの時、君は何を言おうとしていたの?
ここだけの話……秘密の法則:
一人称が別のキャラに切り替わる=ヒロイン獲得フラグ