魔法使いに恋した少年
「悠斗は、もし魔法が使えたらどーしたい?」
小学生生活最後の夏休み。
突然有紗が俺の顔を覗き込んできた。
俺は赤くなった顔を見られたくなくて天を仰いだ。
「魔法?来年は中学生なのに魔法ってなんだよ」
「いいのぉ、で、どーしたい?」
「そーだなぁ、夏に雪を降らせてみたいな」
「なんで?」
「ん~なんとなく?」
有紗は去年俺のクラスに転校してきた。
不思議な女の子だった。
金色の髪に青色の瞳。
俺が昔読んだことのある外国の魔法使いのお話に出てくる魔法使いにそっくりだった。
だから俺は有紗をとても親しく感じた。
そして今日はなぜか有紗と出かけることになった。
なんでだっけ...?
あぁ、思い出した。
有紗が遊園地に行きたいって言い出したからだ。
「ねぇ、悠斗、今度一緒に遊園地行こう?」
「はぁ?夏に遊園地?暑いじゃん!」
「良いじゃんっ!行こうよっ!」
有紗に上目遣いでお願いと拝まれてしまったら俺は折れるしない。
「わかったよ。行くよ」
「やったぁーっ!!」
有紗は嬉しそうに笑って悠斗を見た。
そうだ、それで俺はこんな暑い中遊園地へ向かっているのか。
はぁ、まぁいいや、好きな人と遊園地に来れるなら。
俺は有紗に惚れている。
いつからはわからないけど、俺は有紗に惚れた。
気がついたら俺はいつも有紗を目で追っていたのだ。
「なんとなくってなんなのよ?」
「わかんねぇよ。でも、夏に降ってる雪って見てみたいじゃん?」
「確かにそうだね」
「だろ?あ~なんかこんなこと言ってたらマジで見たくなってきたわぁ」
「じゃあ、見せてあげるよ」
「は?」
有紗はふわっっと笑うと悠斗の手を取り、遊園地に向かい始めた。
なんだ、さっきの意味深な言葉は。
遊園地は結構混んでいた。
「うわぁ、すげぇ人の数だなぁ。しかも超暑し」
「ホントだねぇ」
「あ~ぁ、雪降ってほしいなぁ」
俺は冗談で言った。
そしたら...
「見せてあげるよ」
有紗はそう言い、片手を空に向かって突き出した。
すると、雪がひらり、ひらりと空から落ちてきた。
それは、悠斗の手のひらに乗り、冷たいと思った時にはもう水になっていた。
「えっ、雪?」
雪はひらり、ひらりとたくさん落ちてきた。
「ママっ!雪だよ!雪が降ってきたっ!」
「夏なのに雪?おかしなこともあるもんねぇ」
雪は落ちてすぐに水となって消えていく。
「うん、だって悠斗見たかったんでしょ?」
「そうだけど...これって」
「魔法。あたしね、魔法使いなの」
「へ?」
自分でもびっくりするぐらい間抜けな声が出た。
「あたし、魔法使いなの。言わないでごめん。言ったら嫌われちゃうかと思って
言えなかったの。だってあたし、悠斗のことが好きで...」
「ばーか」
俺はにっっと笑って有紗の髪をぐちゃぐちゃっとした。
「嫌いになるわけないだろ?彼女が魔法使いって最高じゃん」
「え?」
「俺も、有紗のことが好きだよ」
「本当に?」
「おう、本当だ」
「ありがとっ」
有紗は俺が今まで見てきた中で最高の笑顔を俺に向けてくれた。
そして季節外れの雪の中で俺と有紗は軽い口付けを交わした。
俺は今、魔法使いに恋してる。
あたしは昔魔法使いになりたかったのでちょっと書いてみました。