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中二と竹取

むか~しむかしのことじゃった。

あるところに新婚早々離婚してしまったバツイチのおじいさんが家賃を払うため、野山に入って竹を刈っていたもんじゃった。

「え?俺?俺おじいさん?つかバツイチって。嫁さんの思い出とか皆無でいきなりバツイチのおじいさん!?」

おじいさんは一人虚しく家賃を払うため、毎日竹藪に入っては竹を取っていました。

「ちょ、なんだよ~。いきなりバツイチって。ひどくね?俺まだ17だよ?」

ぶつくさ言いながら今日も竹を刈りに来たおじいさんの前に一本、金色に光る大きな竹が生えていました。もうそれは、大の大人一人入るんじゃないかというほどのたけでありました。

「・・・あのさ。これ何となく『かぐや姫』ってわかってんだけどさ・・・。縦に切っていい?」

光太じいさん、死人がでます。

とはいえ、光太じいさんは自分の視線よりやや上の方を横に竹を切りました。

そこにはこの世の者とは思えないほど、美しい少年がイヤフォンでワンセグを寝転がって見ながら、ポテチをむさぼっていました。

「はははっ・・・?我の眠りを妨げたのは貴様か?」

イヤフォンとケータイにあんまりダメージを与えないように下投げし、ポテチ袋を後ろに隠す美少年。

「フッ・・・愚かな人間め。我を起こした代償は大きいぞ」

「好きで起こしたんじゃないんで。とりあえずこれだけ貰ってっていいっすか?今月ちょっとピンチだから」

光太じいさんは切った金色の竹を背負って足早にそこを去ろうとしました。

「ちょ、こんな山奥に可憐な美少年を置き去りにするなんて酷くない!?呼び出したのそっちなのに!都合のいい女レベルの扱いするなよ!光ちゃん」

「あんな。とりあえず俺たち初対面設定って認識しろよ」

「我の呼び覚ました代償として、住居を提供せよ!?」

「養えってか!?」

嫌々ながら光太じいさんは脚にしがみついて離れない美少年を一人暮らしの家に連れて帰ることにしました。


美少年には「睦月」という名前がありましたが、今回のこともありますので「かぐや」と命名されました。



かぐやの噂はご近所の奥様方の間で飛び交いました。

「聞きました?あのかぐやっていう美少年。」

「ええ、大林さんのところに住んでるって」

「大林さんといえば、ほら・・・最近奥さんがホストと駆け落ち」

「俺の話入ってんじゃねーか!?」



ご近所の噂はやがて帝の耳にも入りました。

「ほう・・・この世の者ではないという美しき娘がいると・・・。」

噂とは時に大きな間違えを運んでしまうものです。

“律”帝は早速我が妃にと光太じいさんの家に行きました。



「ほう・・・確かに美しい。この世の者とは思えん。特に目の回りの飾りは実に見事じゃ。しかし・・・ちとでかくないか?」

「は、はい。こ、おじいさまがわたくしをとてもかわいがってくれた証ですわ」

律帝は自分のコンプレックスを常日頃感じそうなかぐやを妃にと申し出ました。

話に沿ってのことなのでそこいらへんはつっこんでしまったら終わりなのです。

「アイツ、お前のこと男って見てわかんねーのかな?」

結婚うんぬんの話はとりあえず保留にしていただき、その日は帝に帰っていただきました。


「つか、キャラが二、三人しかいないのにやるなよこんなパロ」


それから帝はかぐやに振り向いて貰おうと、かぐやが言った物を貢ぎにきました。

「ほれ、おぬしが欲しいと申した『七つ集めれば願いが叶う玉』じゃ」

「フッ・・・こんな偽物で我の目をだませると申すか」

何しろかぐやが欲しいと言う物はこの世には無いものばかり。

「闇の帝王の魂を入れた箱」だの「かわいい義理の妹との同棲生活」だの「世界の悪を封じる鍵」だのを要求しました。

そんなものあるわけないので帝は何とかだまそうといつも偽物を寄越すのでした。

「では次は毒蛇の皮・ドラゴンの心臓の金線・狼男の牙を持ってこい」

「睦月、これ以上がらくた増やすな。つか、それで何する気?魔法薬でも作るの?」

かぐやの手元にはハ●ー●ッターが数冊。

「仕方ない・・・・。逃走用のヘリを用意しろ!」

「だからやめろって!つか、時代を考えろ!?」


「つかさ、いい加減男だって言えよ。あっちが気づいてねーのが驚きなんだけど」

「光太、オレは結婚の申し出を受けいるわけにはいかん。例えあんなにかわいらしい帝の娘でもな」

「え~?お前もかよ~。帝、男だぜ?」

「光太・・・オレ・・・『月から来たって』って言ったら・・・笑う?」

「引くわ。時かけのファンに謝れ。千昭ファンに謝れ!」

金曜ロードショウの「時をかける少●」を見ながら言われても、光太じいさんは信用しません。

「実は十五夜満月の時、月から使者が来て、オレは帰らねばならんのだ」

「ふ~ん・・・俺にどうしろと?」

「いや、それ阻止しようと動いてよ!?」




ぐだぐだやっている間に今日は十五夜になってしまいました。

かぐやと光太じいさんの話を盗み聞きした帝は『月の使者撃退対策』をすでに用意しておりました。

帝の屋敷でかぐや、光太じいさんは匿われ、外は護衛達が見回っていました。

「オレは帰る気はさらさらない。この美しい地球を奴等に渡してなるものか!」

「お前のお仲間だろ」

「光太はオレがいなくなったら寂しくないの?」

「う~ん・・・どうだろう?」

「寂しいバツイチのくせに」

「月帰る前にしばいたろうか?」

その時です。月から数人の人が舞い降りてきました。護衛達が矢を放っても、全く効果はありません。

「睦月!テロ組織『赤い月』の重要参考人でお前を逮捕する!?」

「クッ・・・とうとう来やがったか!?」

「ちょっ!?何、テロ!?お前お尋ね者かよ!?」

その時、どこからか帝の高笑いが鳴り響きました。

「我妻になるものを月などに連れて行かせるものか!?」

現れたのは紫の汎用人型戦兵器 。そう、あのエ●ンゲ●オンなのです。

「やーめーろー!!?時代を考えろ!?」

「色合いは高貴な藤の色じゃ」

「逃げちゃだめだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ・・・。」

「それやっても乗れねーからな!いい加減お前はお縄になれよ!?」


ガタン・・・。

光太は教室の机の上に顔を伏せていた。現国の先生の説明が聞こえる。

前の席に睦月の背中がある。

夢オチ・・・。だよな~。こんな物敷いて寝てりゃあ。

光太は「竹取物語」を開いた教科書を閉じた。

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