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中二と喧嘩歴

「おっ、光太。また新しい彼女できたのか?お前もオレに似て成長したな」

「お前彼女いた試しねーじゃん。てか、彼女?何言ってんの?」

誤解を招くので皆様に説明いたします。俺には17年間彼女などいない。もちろん体だけとか非道徳的な相手もいない。がんばっても女友達くらいならいるけど。

もう一回言いますけど、本当に彼女がいることがない。

話を戻すけど、最近睦月は俺の肩あたりを指さしては「今日も彼女いるな」と言う。

認めるわけないけど・・・前回の話引きずってね!?

「光太はいつも『色白・黒髪ロング・目が大きい』娘が好きだよな」

それ、傍から聞いたらめちゃくちゃ良い感じの娘なんだけどな・・・。

チラッと俺の肩を見て苦笑するな!クソーッ!コイツに気ぃ遣われた!!

「か、かわいいじゃないか。『いつもあなたと一緒』って感じで」

「だから、彼女なんていないってば!?」

「彼女の前でそんなこと言うなんて・・・!あんたその娘のことなんだと思ってたの!?ただの遊びだったって言うの!?」

腰に手をあてて女声出すなよ!!

頭痛くなるこの感覚。前にもあったな。

「あの娘の気持ちに気づいてあげられないとか、マジ最低~」

「うっせぇよ、小中のリーダー気取りの女子かっ!」

眼鏡クイクイって、持ち上げんな!はぁ~・・・。

15年も一緒にいればこんな感じで喧嘩することなんてしょっちゅうだ。原因もくだらないことばっかり。

思えば幼稚園(4歳児)の初め頃、これが思い出せる喧嘩の初めてだったと思う。




俺はいつものお気に入りの1冊を本棚から取ろうと手を伸ばした。すると、本の表紙には二つの小さい手が二つ。顔を上げると、睦月だった。

「むーちゃん、これ今から僕が読むんだけど・・・。」

「うるせぇー!お前の物はオレの物なんだよ!」

「よくわからないよ!」

今思えば、早すぎだろ。ジャイアニズム。

「いいから寄越せ!」

「嫌だよ!むーちゃん、昨日も同じこと言って僕の読みたいの取ったじゃん!!」

そこからは本の引っ張り合い。騒ぎを聞きつけた先生が「じゃあ、一緒に読めばいいのよ」っていうけど、当時の俺は拒否した。

「僕ずっと我慢したんだもん。昨日も、その前も!!」

「光太、大人になれよ。先生の言うことだ。」

「ヤダったらヤダ!!むーちゃんなんて嫌い!!?」

「なんだとコイツ」

なぜか涙目の睦月は俺にげんこつをした。当然泣いた俺は、反撃に出た。

睦月を本で殴ったのだ。当然睦月も泣き、俺は涙が引っ込んだ。『ざまーみろ』みたいな気持ちと罪悪感があった。

そしてここで騒ぎを聞きつけた先生が再び来て俺達を仲直りさせた。その日はもう話も、顔も見たくないとお互いそっぽを向いたが、次の日には「ごめんなさい」と謝って、頭を下げた瞬間ぶつけ合うというなんともベタなことをした。本以外でも、しょっちゅう喧嘩したがやっぱり最後は「ごめんなさい」だ。頭ぶつけての。

あの日から変わったのは、睦月は俺の読もうとする本にあまり手を出さなくなったことと俺は睦月をどうにか止めたい時は殴ればいいと知ったことだ。

あまり良い子とは言えないな・・・。





そして思えば小三のある日。


当時おやつに命をかけていた俺達。いかに多くのお菓子を手に入れるかで頭を使っていた。

「今日のおやつはショートケーキだ!!むっく、むっく!ショートケーキだよー。」

睦月の両親は仕事が忙しく、よく俺の家で預かっていた。当然、おやつも一緒に食べる。

「むっく、食べよう!・・・どしたの?」

「光太、待て!そのケーキを食べちゃダメだ!毒が入っている!!」

「・・・何言ってんの?むっく」

「刑事であるオレの勘がそう言っている!光太、お前は自分の立場を理解すべきだ・・・。」

どんな設定が睦月の中にあったんだろう?

「むっく・・・本当は?」

もうこの時には睦月の扱いに慣れていた俺。何というか・・・さすが自分?

「・・・光ちゃんのケーキの方が大きい」

「えー、どっちも同じじゃん」テーブルに置かれたイチゴショートはテイクアウトの物でお店の人が切り分けた物。だから大きさは至って均等。

「同じだよ?」

「光ちゃんの方が大きい!」

「同じ」

「オレの方が小さい!」

「同じだってば!」

「じゃあ交換しようよ!?ギブアンドテイクしようよ!!」

「同じだから意味ないよ、早く食べようよ」

「お前の指図など受けーん!!」

俺の前にあるケーキに睦月が手を伸ばした瞬間俺は睦月のほほをビンタした。

「いい加減にしなよ。おやつ食べるよ」

「・・・うん・・・。」

同じ大きさのケーキを並んで食べる。俺はイチゴは最後に取っておくタイプだから、皿の端にイチゴを置く。

「同じ大きさでしょ?」

「そんな分けない・・・同じ大きさなら・・・なんでオレのケーキはもうこれっぽっちしか残ってないんだ!?」

お前が喰うの早すぎるからだ。

睦月はケーキの生クリーム付きフィルムを舐め始めた。今の俺だったら怒るんだけど。俺はゆっくりと味わってケーキを食べる。

「隙有り!!」

ギンッという音。睦月と俺のイチゴの間には俺が握っているフォークが立ちはだかる。

「むっく・・・意地汚いよ。人の食べ物取るって・・・・。昨日テレビで見たんだ。」

睨む俺に睦月は硬直して涙目。

「ほら、僕の透明の奴あげるから。」

俺は生クリーム付きフィルムを睦月に投げるようにあげた。

つーか、それもそれでひどいな自分。

きっとこの頃から睦月の教育をしっかりやり始めたんだと思う。



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