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中二と列

「マジなんだったんだ、さっきの?」

「言ったろう。人類のミステリーロマンスK・A・P・P・A・・・“KAPPA”・・・だ!」

「なわけねーだろ。きっとどっかのロケの偽河童だよ。または野生化したホームレスかな。それは置いといて、ここはどこだ・・・?」

結構無我夢中で走ったせいで俺達は来た道からも、これから行く道からも外れているらしい。

はっきり言って道は道だけど本当に見覚えのない道だ。人工だか自然的だかわからない道。

「おいおい、なんでたかが墓参りに行くのにこんなことになるんだよ。」

ケータイはもちろんごとく圏外。山の上の方に来たから。

途方に暮れるよ、まったく・・・。

暮れたのは途方だけでなく、日も同じだ。夏で日が長いというのに太陽はもう沈み始めている。

「ヤバイな・・・。」

「あぁ、バーちゃんに殺される」

「そうでなく、なんの装備もなくアイテムもない俺達。今、妖怪(モンスター)に遭遇すれば、命は危うい・・・。次回睦月達の運命や如何に・・・!?」

「如何に・・・!?じゃねーよ。てか真に受けたのかよ、あの話。だいたいこんな科学時代に幽霊だの」

チリーン・・・チリーン・・・

不意に聞こえた鈴の音は俺達の背後から。さっきまで俺達二人だけだったのに振り向いたら喪服の列がすぐそこまで来ていた。俺達はすぐ端によって恐る恐るその様子を観察する。絶対おかしい。だって、この列はまるで。

昔の葬式の列だ。みんな古い形の髪型・喪服は着物で不気味に俯いて列に続いている。

「な、なんだよ。これ・・・。」

「光太、なんだったっけ?夢の国の何ティカルパレードだっけ?」

「エレクトリカルパレードじゃねーよ!葬式だよ」

声を押し殺してよく見ようと前出ようとする睦月を引っ張る。喪服の人達は俺達に気づいていない。その方が好都合だけど。

どこまでも長く続く葬式列を俺達は不謹慎だけど、見入ってしまう。一体どこまで続くんだろう?でも、おかしい。だって、棺桶が見あたらないから。

「光太、行っちゃっていいかな?」

「い、いいんじゃね。とりあえず、どっちに」

「そこのお方」

急に声をかけられた。葬式列の一人が俺達にお辞儀をしている。すっと顔を上げるが、その人の表情が見えない。夕日の逆光で顔は深い穴みたいに見える。

「どうか、これから来る死者にお慈悲を・・・。」

「僕たち、何にももっていないんです・・・。」

今更だけど葬式用の花やお供え物は河原に忘れてきてしまっている。

「何をおっしゃいますか・・・。そこのお方は持っていらっしゃいますよ」

「それって、俺の魔剣“灼炎鬼神(ひゃくえんきじん)”ですか?」

「まだへこんだバナナ持ってたんかい!?」

「いいえ、それではありません。その」

その人の声は列の後ろから聞こえる泣き叫ぶ声にかき消された。視界に入って来たのは荷車に乗せられた棺桶。大きく揺れるその棺桶からその声がしていたんだ。

だった、棺桶は轟々と燃える赤黒い炎の中にあるから。

睦月も俺もすっかり怖じ気づいて、その棺桶から目がはなせなくなった。

「に、人間の叫び声ほど心地よいものはないな」

「強がんな!ちょ、あれ!まだ中の人生きてるんじゃ!?・・・なんなんだよ・・・。」

いくら撮影だからって・・・。こんなにも生々しい声って演技でだせるのかな・・・?

睦月が俺の肩を掴んで力任せに引っ張ったからむかついているのかと思ったけど、実際はそうじゃなかった。

睦月の睨んだ先は俺ではじゃなく、その足元。道がない。絶壁になっていたんだ。俺は無意識に棺桶に付いて歩いてたんだ。

「あぶっ!?」

それでも葬式列はまっすぐ進む。絶壁のその先もまっすぐ。燃える棺桶を容赦なく連れて。

俺達は山肌にぴったり張り付きそれをずっと見ている。ずっと続く空中の列の遠くから雷雲が広がってきた。

「ついに神の降臨か・・・。」

睦月の言うことが当たったのかもしれない。雷雲からぬっと何かが顔を出している。巨大な骸骨だ。カーッと口を大きく開けて威嚇する。そしてどこか人間と違う骸骨。骸骨は一つだけじゃない。雲からまた一つまた一つ骸骨は現れた。

「あれって・・・」

「あれはおそらく“火車”だ。」

「かしゃ?」

「あぁ、あの骸骨は図鑑で見たことがある。猫の骸骨だ。・・・説明しよう!火車とは死んだ人間を地獄に運ぶ猫型の妖怪だ!」

後ろでパチパチと微かな拍手が聞こえた。しかし、振り返っても何も見えない。もう日はすっかり落ちてしまったから。

しかし、睦月に言われて見るとそう見えてくる。

なんとも不思議で気味の悪い光景だ。骸骨達は空中を自由に飛び回り、棺桶の叫び声は響くばかり、そしてそのうちの一つが棺桶を丸呑みした。

断末魔が俺の耳に残る。きっと睦月もだ。

棺桶がなくなったのにも関わらず、列はまだずっと進んでいる。

夢みたいだ。しかも悪夢だ。

「光太、オレ達はどうやらあやかしの世界に迷い込んだようだな・・・。」

「なに冷静に寝ぼけたこと言ってんだよ。こんなの夢、夢!」

「そうか、夢か。では、これではどうじゃ?」

高い子供の声と俺の頭は一発はたかれる。

「あんま痛くない・・・って、誰だ?」

あたりを見渡すと、一匹の仔狐がそこにいる。赤い前掛けを首にかけた狐だ。

「光太、『赤いきつね』だ!」

「いや、違うから。てか、あの狐今しゃべんなかった?」

「あ、逃げた!追うぞ、光太」

「え?なんで」

「ここで追うのがお約束だ!」

「つまり、追わないと話が進まないからか!」

「そうゆうことだ!」

どうゆうことだ!?

危険気回りないのに、ここで一緒に狐を追っちゃう俺もどうなんだか。

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